音が天から降ってきた

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 落語会がホールで行われるようになったのは、いつごろからなのでしょう。

 そもそも日本の芸能は寄席や芝居小屋でお客様を楽しませていました。昭和30年代初期の日本で、芸術性の高い演奏会を開催するのにふさわしいコンサートホールは、まだ存在していませんでした。そこで1958(昭和33)年、「国際的な音楽祭も開催できるホールを大阪に」ということで誕生したのがフェスティバルホールです。

 音響特性に優れ、舞台に出た人からは「残響の長さだけではなく音がまろやかで豊か」「天井から音が降り注ぐ」とたたえられ、クラシックはもとよりロック、ポピュラー、ジャズ、能・狂言などの純邦楽を含め、あらゆるジャンルのアーティストらから愛される存在となりました。その音のよさは世界のトップアーティスト、レッド・ツェッペリンやディープ・パープル、マイルス・デイビスらからも絶賛されるほど。

 しかし、開館50周年を迎え、老朽化したため一旦閉館。工事に入り、2013年4月、超高層ビルとして生まれ変わった「中之島フェスティバルタワー」の中に、二代目フェスティバルホールが開館したのです。

 この柿落としのプログラムの中に、なんと「志の輔・談春祝祭落語会」を組み込んでもらえたのです。幕が開くと信じられないような音が、まさに降り注ぎました。落語家生活31年、落語会のカーテンコールを終えた後、ずっといつまでも舞台に居続けたいと思ったのは初めてでした。

 幸せだったのです。

 これは舞台だけではなく観客席も一緒にそうだったらしく、上の方、つまり後ろの席のお客様から「またやってね!」という声がかかりました。「そうなったら、あんたも来るんだよ」と答えて笑いに包まれる会場。このやりとりが観客のすべてに聴こえ、巨大でありながらアットホームな空気も醸し出す空間。

 この奇跡が実現したのは、談春君が日ごろから親交のあるさだまさしさんと談春君のおかげです。「神様のつくったホール」と形容したさださんが、気持ちよさをぜひ談春君にも、と旧ホールの閉館間際に談春独演会が実現し、今回の柿落としに私にも声をかけてくれたというわけです。

 ホールの方々、さださん、談春君、企画を立ててくれた共同大阪の皆さんに感謝しても感謝しきれません、一生の思い出をありがとうございます。

 関東の皆さんもぜひフェスティバルホール体験をお勧めします。

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# by woody-goody | 2013-05-17 11:55 | 芸能

食材の神様に選ばれ

 久しぶりに、民放の特別番組の司会をしました。

 題して「生産者の顔が見える食材大賞」。

 ベテランである柴田理恵さんや山口良一さん、東MAX君らが、全国から選ばれた5人の生産者の、こだわりにこだわった食材作りの現場を訪問して、おいしさの秘密を伝えてくれる番組です。

 さらに、それらの食材を合わせて、イタリアンの巨匠・落合シェフに新しい料理を作ってもらおうという新企画。どんな番組でも全力投球の私ですが「今回も、やらせてもらってよかったな」の満足感いっぱいでした。

 特に印象的だった場面を一つご紹介しておきましょう。

 群馬の生産者Aさんは、前の職業で莫大な借金を背負い、自殺すら考えながら最期に一目お姉さんには会っておこうと出かけ、いろいろ話をするうちになぜか、本当になぜか突然何の脈絡もなく「豆腐」の2文字が頭に浮かび、豆腐店を始めてしまいました。

 大豆にこだわり、水にこだわり、にがりにこだわり、「何が何でもおいしい豆腐を」と地道につくり続けるうち、クチコミでそのおいしさが広まり、今や大人気商品に。

 そのほかの食材は「芯まで柔らかいキャベツ」「筋のないアスパラ」「脂身の甘い豚肉」などなど。すべてが本当においしかった。

 司会を終えて思いました。5人中4人が、転職して今の仕事を始めているのです。ここに、秘密の一端があるのでは。

 その世界での既成のルールに縛られず、自分なりの努力ができたから、そしてそれは楽しいことだったから、ではないでしょうか。

 では、なぜまるで違う世界にいきなり飛び込むことになったのか。きっと、この人たちは、それぞれの食材の神様に選ばれた人たちなんだ、と。

 つい先日、私の4番目の弟子「立川志のぽん」が「二ツ目昇進」いたしました。まだ、ただただ落語が好きで夢中でやっているだけという状態ですが、これから精進を重ね、「落語の神様に、お前だから選ばれたんだ」と、自他ともに思えるような日が来ることを秘かに願っています。

 志のぽん、落語家にしては変な名前です。

 何でそんな名前をつけたのかって?

 まあ、一度ご覧ください。ああ、と納得していただけることでしょう。

 おやおや、気がつけば二つも宣伝、春の陽気に免じてご容赦くださいませ。(「生産者の顔が見える食材大賞」の放送は19日午後2時からテレビ朝日で)

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# by woody-goody | 2013-05-10 18:04 | 社会

5月5日「百年目」

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 朝起きたら「何はなくともコーヒー」という生活をずっと続けてきた私も、ここ5,6年、濃い煎茶が飲みたいなあ、と思う機会が増えました。

 だんだんと、かつて見た爺さん婆さんのライフスタイルに近づいているということですかね。

 それとも、お茶の微妙な味の違いが分かるようになったと考えればいいのでしょうか。

 前々から気になっていたのですが、コーヒーや紅茶のカップには取っ手があるのに、日本の湯飲みにはありません。

 熱湯を注ぐコーヒーや紅茶と違って、せっかく100度に沸かしたお湯を、わざわざ60〜80度にさまして急須に注ぎ、茶葉をゆっくり開かせる日本のお茶。

 人にいれてもらったお茶。湯飲みから伝わるのはお茶の温かさ、ぬくもりだけではありません。

 ゆったりした時間の中に、人の気持ちが入っているのです。

 夏も近づく八十八夜、今年は5月2日だそうです。

 春から夏へ準備をする節目の日なのですが、今年はまだまだそんな気にはなれない、この寒さ。

 八十八夜は茶摘みのタイミングだけではなく、種まきの大事な目安にもなっていたようです。

 「八十八」の文字を組み合わせると「米」の字に。農業に従事する人にとって、いかに特別の日なのかがこれでわかります。

 落語の中にはお茶がたくさん出てきます。

 私の演目だけでも「茶の湯」や「江戸の夢」や「百年目」があります。

 嗜好品が少なかった時代に、お茶をいれて飲むというのは、生活の中での重要な一区切り、句読点のようなものだったのでしょう。

 今年のパルコ公演の演目の一つが「百年目」でした。この中に、店の大旦那がお茶をいれてやりながら、番頭さんにじっくり話をするシーンが出てきます。

 日ごろは忙しくてゆっくり相対したことのなかった2人が、あることを契機に気持ちを通い合わせる場面です。

 お茶があるからこそ、2人の間にゆったりした時間が流れ、来し方行く末を見据える大旦那の気持ち、それに呼応する番頭の気持ちが混ざり合います。

 実は八十八夜の3日後、5月5日午後6時半から、WOWOWで「志の輔らくご in PARCO 2013」と題して、もう一席「質屋暦」とともに放送になるので、どうぞお楽しみくださいませ。

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# by woody-goody | 2013-04-26 12:40 | 芸能

俳句で遊ぶ人たち

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 いま、俳句人口は相当なものと聞いております。

 与えられた季語を入れて、制限時間内に一句詠むなんて、私ならとてもじゃないけど、「もし浮かばなかったらどうしよう」という不安が先にたってしまいますが、こんなことを20年も続けている句会があります。

 その名も「駄句駄句会」。

 この句会のメンバーがすごい。山藤章二先生が宗匠をつとめ、放送作家の高田文夫先生がいるかと思えば、作家の吉川潮先生、落語家では兄弟子の立川左談次師匠や林家たい平さん。俳優でもありテレビでは鋭いコメントを発する松尾貴史さん、ジャズ歌手笈田敏夫の息子の島敏光さん、短歌人の藤原龍一郎さん、師匠談志とも友達だった野末陳平先生。なぜかいつもペンギンを抱え写真を撮る、実はガラス屋の主人高野ひろしさん、寄席文字書きの橘右橘さん、落語会をプロデュースする木村万里さんら。

 知り合いらが参加する句会のことは、ちらほら聞いてはいて、「実際はどんなことをやっているんだろう」と思っていたら「駄句だくさん」(講談社刊)という本が贈られて来ました。

 右ページには、山藤章二先生の手で色紙に書かれた一句。左ページにはその句を読んだ感想を、句会同人が「ああだ、こうだ」としゃべっているのですが、これがとてつもなく面白い。

 話芸の達人たちが、句にツッコミを入れるとこうなるのか。

 ページを開くと、最初に目に飛び込んで来るのは「落花生 老婆の口に 三時間」。

 兄弟子左談次師匠の、何ともユーモアにあふれた一句です。

 この句を「名駄句だ」と宗匠がほめれば、すかさず「メイダク防止条例」と、ダジャレを飛ばす高田先生。「この老婆は死後かも」「なら、歯じゃなく土手でかんでいたのでは」と、会話がはずんでいきます。

 全編この調子で、「ああ、なんて豊かな人たちなんだろう」と心底、羨ましくなりました。それぞれの分野で、ちゃんとした仕事をしている一流の人たちが時間をやりくりして集い、ばかを言い合う。まるで落語の熊さん八つぁんのように。

 そうか、「俳句と聞いて、風雅を詠まなきゃ」と肩肘を張ることはないんだなぁ。句を媒介にして、遊べばいいんだなぁ。一気に俳句の敷居が低くなりました。

 楽しきゃいいんだ。「老後」じゃなくても、こういうゆとりのある時間を持ちたいものです。

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# by woody-goody | 2013-04-19 13:23 | 社会

くまモン増殖中

 新作落語は別ですが、私たち落語家が演じる古典落語には著作権がありません。師匠や先輩からそこそこのお礼で教えてもらうことができて、それを無料で自分のネタの中に入れるというわけです。

 作者が誰だかわからないということもあるでしょうが、このおかげもあって落語が300年以上の歴史を保ってこれたのでしょう。

 先日、2年ぶりに熊本県を訪れました。

 空港では、あの有名なゆるキャラ「くまモン」が迎えてくれたまでは「そうか、熊本県はくまモンが有名なんだね」と思い出す程度だったのですが、行くところ行くところ、くまモンだらけでした。店の前には「いらっしゃいませ」くまモン、店内では名所ポスター案内くまモン、ビールを頼めば、コースターくまモン。

 空港、駅、土産物屋、タクシー、バス、ETCと町中くまモン。ふと、こんなにくまモンキャラクターを使ったら、払う方は著作権がばかにならないだろうな、大変だな、と他人事ながら心配をしていたら、なんと、このくまモンを使用しても著作権が発生しないんだそうな。

 びっくり。

 どれだけ見ていても飽きない愛らしさに立ち止まり、気がつけば、ストラップやクリアファイル、ゴルフのアイアンカバーなど、つい購入している自分がいました。

 こんなに人気が広まったのには、かわいらしさ以外にも原因がありました。

 なんと、熊本県の許可があれば、個人または企業でロゴとキャラクターを無料で使用すること(個人で楽しむ範囲であれば許可は不要)ができるんだそうです。

 「発表後しばらくはキャラクターを使用した商品開発などは不可だったが、著作権を熊本県が買い上げることにより、2010年12月24日以降は携帯ストラップやぬいぐるみなどの商品開発・グッズ販売においても県の許可を得た上で(当面の間は)無料で使用可能に。ただし、海外の企業や海外での販売には許可を与えておらず、許可を得た場合も必ず許可番号を示さなければいけない」とのこと。

 くまモンキャラのかわいらしさに加えて、このゆる規制こそが、くまモンを県の、いや日本中にファンを増やした原動力に違いありません。

 「著作権は縛るだけのもの」と思ってましたが、緩めると、こんな効果も出るんだと思えば、著作権は、さじ加減が肝心なんですね。
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# by woody-goody | 2013-04-12 14:54 | 社会

慣れは禁物、マイワシ化

 毎年恒例今年6年目のベトナム公演から無事に帰ってまいりました。

 さあ、いない間に日本でどんなニュースが流れていたのかと、たまった新聞やメールをチェックしていると、ありました。久しぶりに笑わせてもらいました。

 記事によると、名古屋水族館の高さ5m、幅14mの黒潮水槽の中を、エサを求めて群れで渦状になって泳ぎ回る、売りになっている「マイワシのトルネード」に異変が。

 黒潮が流れる海の沖合を再現するためにサメやマンボウも一緒に泳がせているのですが、岩陰もない沖合では、マイワシは大きな魚から身を守るべく群れになって泳ぎます。それを再現して見せるというこの水族館の目玉です。

 一瞬にして一つの大きな生き物のように一斉に泳ぐ方向を変える様は、それは見事です。

 圧巻の風景に、思わず、ほーっと時間を忘れます。ところが、最近、群れを離れて、1匹で泳ぐマイワシが現れ始めたそうなのです。そりゃ、1匹くらいそういうのだっているだろうさ、と私なんかは思うのですが、プロの水族館職員は考えました。なんで、はぐれるのが出るんだろう?

 どうせ食べられないしと安心しきっているのではないか、水族館とはいえ、自然と同じ環境を維持するために、天敵のマグロ15匹を投入。するとシャキッとしたらしいのです。

 かわいそうという声もありましょうが、なぜ、私が笑ったかというと、私もベトナムでシャキッとしたからなのでした。

 というのも、日本の各地で落語会を行うときは、ほぼ開演時間1時間前に楽屋入りします。

 前もって、会場スタッフが、喋りやすい音響、照明を作ってくれているのを、簡単にチェックするだけでいいのです。

 ところが、海外では、あたりまえですが、落語を見たことも聴いたこともないであろうスタッフ相手に、落語のための舞台空間を作る指示を出すことから始めなければなりません。現地の言葉に通訳されてはいてもこちらの注文が伝わっているのかどうかも不安で、その長時間のストレスたるや相当なものがあります。

 開演間際にようやく舞台を完成させた弟子たちはくたびれきって高座をつとめることになりました。

 いやはや、落語家である私も日本の良い環境に慣れきって、毎年この新鮮な変化のおかげで、「これじゃ俺もマイワシ同様だ」と大笑いしたのでした。
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# by woody-goody | 2013-04-05 14:52 | 社会

タイの飲酒は格別

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 今日から1週間、ベトナム公演に行ってまいります。ホーチミンで続けている落語会も6年目に入り、今年は、さらに一カ所、首都ハノイでも行うことになりました。

 毎年この時期になると、海外が続きます。先々週は、全日空機内寄席の収録も兼ねてタイはバンコクで落語会。こちらは4年連続、通算5回目。

 一昨年の洪水の傷痕も徐々に薄れ、工場を中心に着々と立ち直りつつある様子を、現地で働くすごい日本の企業戦士のみなさんが、恒例の夕食会で話してくれました。

 仕方のないことですが、タイで困るのは、内外の気温差。

 30度を超える屋外、一歩建物の中に入ると利きすぎる冷房。体調が確実に狂います。なによりのごちそうが冷房というお国柄。この国のどこにこんなにも電力があるんだろうと不思議な思い。

 会場はホテルの大広間で、やりやすく聴きやすく見やすい高座ができあがるまでに、現地のスタッフや弟子ともども5時間ぐらい必要で、会が始まる前からくたくたです。

 上着を羽織っていても、おなかも体も冷えて、トイレに通う回数の多いこと。落語の「茶の湯」を思いながら苦笑い。

 いつもは会場とホテルの往復なのですが、今年は、バンコク市内を抜けてアユタヤに出かけ、象の背中に乗りました。

 高所恐怖症の私も象の背中くらいなら大丈夫。

 笑ったのは、象使いがカメラのシャッターを押す前に被写体である私らに向けて放った一言。

 「チーズ」の代わりに、「カトちゃん、ペッ」。

 観光客の誰かが教えたのでしょう。みなが笑うのでうれしくなって、象使いもこれを繰り返しているのでしょう。

 これよりもっと驚いたのは、落語会の翌日がバンコク市長の選挙だったため、町のすべてのコンビニ、レストランでアルコール販売が一切禁止されたことでした。

 おかげで打ち上げは、日本料理店の奥座敷で、ひっそりと。タイ人の仲居さんたちが和服の袖の中に隠して運んできてくれたビールをいただき、「ここだけは治外法権だ」とばかりに盛り上がりました。なんでも、酔っぱらって選挙に来なかったり、党派争いがピストル騒ぎにまで発展したりするそうな。なので選挙の日と前日はアルコール禁止。おかげで久しぶりに、ビールを自由に飲めるありがたさをしみじみ味わったのでした。



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# by woody-goody | 2013-03-25 14:45 | 芸能

抜歯を再生医療に

 古典落語の中には、サゲ(落ち)が現代では通用しにくく、わかりにくいものが多々あります。

 「佃祭り」という落語もそうで、身投げをしようと橋にたたずむ女を助けた男が、後年、その女から命を助けられるという運命の出会いをしました。この話を耳にした与太郎さんが、じゃあ俺も身投げをしようとする人を助けよう、そうすれば後でいいことがあるはずと弁当ぶらさげ江戸の町をいきあたりばったりで歩き出します。すると、ちょうどそこに、橋の上で思いつめた様子でたたずむ女が。飛びついて助けたつもりが、なにをするの!と怒られてしまいます。だって、たもとには身投げ用の石ころがたくさんあるじゃないか、と叫んだところ、「これは歯痛をしずめるために納める梨でございます」という女のセリフで落語が終わります。

 この落ちには説明が必要でしょう。当時、戸隠様に梨断ちをして願をかけると歯痛がおさまるというならわしがあったからなのです。えっ!? 戸隠さまがわからない? 願をかける、がわからない?

 それはもうおいといて、昭和の時代には、子供のころ、歯が抜けると、下の歯は上へ、上の歯は下へ放り投げるといい、という言い伝えがあり、私も抜けた歯を屋根の上に放り投げた体験があります。きっと、抜けた歯がなんとなくもったいない気がして何かに役立てようとそんな願かけ伝説ができあがったのでは。

 ところが、現代では、言い伝えどころか、抜けた歯から幹細胞(歯髄細胞)を取り出し、細胞バンクに保存しておくと、のちになんらかの障害を受けたときに、心臓や血管や皮膚や角膜などの再生医療に役立たせる研究が進んでいるそうです。

 以前このコラムで、出産時の「へその緒」から採取した臍帯血(さいたいけつ)をバンクに預けておくと、のちのち役立つことをご紹介しましたが、出産時という限定された状況で保存を判断できるのは祖父母、両親と限られた家族になりますが、歯髄細胞なら、子供から大人まで、乳歯の生え変わり、親知らずを抜いたときなど、自分で保存も可能になります。

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# by woody-goody | 2013-03-15 12:53 | 社会

「子宮内膜症」の反響

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 あらら、もう3月。ほんとに!?

 正月から劇場に居っぱなしで時間感覚ゼロのような1カ月公演もあったので、正真正銘、矢のごとく過ぎ去った2カ月です。

 もっと驚くのは、私が司会の科学番組「ためしてガッテン」が、この4月で19年目に突入すること。ここまでの長寿番組を支えてきたのは、なんと言っても一番目に、考えぬき調べぬくスタッフ、二番目に小野アナウンサーのIQの高さと愛嬌でしょう。

 2月20日放送の「子宮内膜症」という女性特有の病気をテーマにした番組では、女性ディレクターのすさまじい執念を見ました。

 企画会議にこのテーマが提案されたとき、いくつかの問題点が指摘されました。放送時間帯が、多くの男性や子供も見るゴールデンタイムであること、内容が複雑でデリケートな問題をはらんでいること。

 が、会議の席上、大半の男性陣に女性ディレクターは強く訴えました。

 100人に1人が月に一度、猛烈な痛みで日常生活に不便を感じていること。患者は、病気とはつゆ知らず、この痛みは当たり前なんだろう、みんなそうなんだろう、と思い込み、ひたすら我慢で過ごしている人がたくさんいること。

 この現状をなんとかしたい、今も我慢し続けている人に教えてあげたい、の熱意が番組を成立させました。

 私は、男性司会者として微妙な立場でしたが、女性ディレクターのアドバイスを受けなんとか進行ができたような気がしています。

 番組43分の中に、謎が多いとされる子宮内膜症のメカニズムを人形模型を使ってわかりやすく解説、ずっと痛みに苦しんできた患者さんに登場してもらって生の声を聞き、専門家の医師からは「ひどい月経痛を放置しないこと」「かかりつけの産婦人科医をもとう」と提案しました。

 番組終了後の反響の多さにも驚きました。

 今回は、女性特有の病気ゆえ、番組をいつもより客観的に見られたおかげで気付いたことがありました。

 番組の最後にいつも色紙に書く今回の言葉は「テレビだから」。

 痛みに耐えながら誰にも相談できずにいる多くの患者さんに伝えられるのは「テレビだからこそ」なんですね。

 見逃した方は、ぜひ「ガッテン・ホームページ」で放送内容を確認してみてくださいませ。

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# by woody-goody | 2013-03-01 12:34 | 社会

瞬間映像カメラ

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 今年もあの季節がやってまいりました。

 毎年、3月の花曇りの日、何百何千のホタテ貝が海に浮かび、貝殻を開け陽を浴びながら、新たなえさ場を求めゆらゆら移動する様は圧巻。

 まさに、帆掛け船ならぬ帆立船軍団。

 これを一度志の輔さんに見せたいよ、と打ち上げで、函館の落語会主催者が、少々酔いながら言いました。

 「ほんと? 見たい!」

 「……あったら、俺も見たい」だと。

 この季節になると話す落語のマクラなのですが、皆さんの頭の中に浮かぶホタテ貝を想像して、私自身もしゃべりながらおかしくてしかたがありません。

 でもこれに似た現象が実際にあったのです。

 イカが群をなして空を飛んだ映像がとらえられました。

 速度も半端じゃなく、時速約36キロ、距離約30メートル。

 航海中にイカの着水までを連続撮影したのは北海道大学水産学部付属練習船おしょろ丸。

 三角の頭を海に突き出し、胴体いっぱいにためた水をジェット噴射のように一気に吐き出して飛ぶさま。海中の天敵から逃げるために空中へ飛んだらしいのですが、今度は海鳥に狙われ捕獲される悲運なイカもいるそうです。

 この決定的瞬間の撮影が可能になったのは船首に付けたカメラのおかげだそうですが、先日の宇宙から落ちてきた隕石の瞬間映像にも驚きました。

 車のフロントガラスの向こうに映る隕石、恐怖の声も入り、背筋が凍ります。

 これ、ワイドショーによると、ロシアでは、違反もしていないのに警官が運転手を逮捕、罰金をとることがよくあるそうで、その実態を記録として残しておきたいがために多くのマイカーにカメラが設置されていて、そのおかげで、今回の隕石落下の瞬間をとらえることができたそうです。

 でももはや、イカでなくても隕石でなくても、海の上じゃなくても、ロシアじゃなくても、私たちの普段の生活もほとんどの瞬間が防犯カメラで記録されてる時代になってますね。

 イカだって、隕石だって、まさか、撮られてるとは思わなかったことでしょうし。

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# by woody-goody | 2013-02-22 17:20 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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