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ツマヨウジ一丁!

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 2010年の初コラム、まずはおめでとうございます、なのでしょうが、私は恒例パルコ一カ月公演まっただ中、とても正月気分を味わうどころじゃありません。

 でも、日々、まるでジェットコースターのように変化する客席のおかげで、新鮮な気分で高座にあがっています。

 実を言うと、年末にちょっとした手術をしたものですから、体調的にも精神的にも絶好調じゃなかったにもかかわらず、かえって気合いの入った舞台になっている気がするから不思議です。

 チケットをお持ちの方、御期待ください。

 それにしても、東京の快晴ぷりはなんとしたことでしよう。

 雨男の私にしては快挙です。

 それにひきかえ、私の故郷富山を含む日本海側の豪雪のすごさ。

 パルコ公演直前、故郷の正月公演のため、1月2日に着いた富山空港は久しぷりに見るものすごい雪景色でした。

 欠航続きの空港は大混雑。特に4日の帰りの便にはキャンセル待ちの長い列が。

 でもそんなイライラを吹っ飛ばすシーンがあったのです。

 搭乗前に必ず寄る大好きなうどんやさんでのこと。

 5,6歳の男の子がてんやわんやの店内に一人で入って来て、店のお姉さんに「あのー、ツマヨウジー本ください」と言いました。

 たぷん、空港ロビーにいる親に頼まれたのでしょう。

 急がしげに働くお姉さんたちは気にはなるものの、両手に丼が乗ったお盆やらビールを持って右往左往。

 昆布じめと富山独特のイカの刺し身でビールを飲んでいた私が、テーブル立てにあったツマヨウジを1本渡そうかと思ったその瞬間、カウンター内でうどんをゆでていたオヤジさんが子供に向かって大きな声で「はい、なんでしょう?」。

 男の子は再び小さな声で「ツマヨウジを1本ください」。

 おやじさんは間髪入れず叫びました。

 「はい、ツマヨウジ一丁!」

 それを聞いてハッとしたお姉さん、ヅマヨウジを1本手にしゃがみこんで渡しました。

 「ありがとう」と小さな声でお礼を言って店から出て行った子供。

 大忙しの店内の様子を、厨房から司令塔のように見渡し、的確な指示を愛情とユーモアにまぷして出せるすてきなおやじさん、忙しさの中で小さな声に対応できなかったことに気付いてすぐさま、子供の背丈に合わせてしゃがんだお姉さん。

 正月早々、いいものを見せてもらいました。

 今年も世間からたくさん学ぱせてもらおうと思っています。

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# by woody-goody | 2010-01-15 21:28 | 社会

そろそろ地球を介護

そろそろ地球を介護_d0051179_22411794.gif

 はやいもので、これが今年最後のコラムになりました。

 私は、来年1月のパルコ一カ月公演に向けて、今年1年を振り返りながら、楽しみながら苦しんでいるところです。

 私個人もまとまらないのですが、世界がまとまらない問題がなんと言ってもCOP15。

 コペンハーゲンではついに議長が交代するという騒ぎに。

 実は、2008年のパルコ公演での新作落語が「異議なし」。

 インドネシアで行われた温暖化会議のまとまらない様子をマクラに、物語はあるマンションの自治会の場面になります。

 自治会と言っても参加しているのはたったの4人だけ。

 議題は、最近多発しているマンション荒らしをどう防ぐかというもの。

 エレベーターに防犯カメラを取り付けようと業者に見積もりを出してもらったところ、かなりの高額。

 そんなにかかるんじゃあ、と二の足を踏む4人。

 議題は、お金をかけないでいかにして犯人がエレベーターに乗りにくい状況をつくるかという方向に流れます。

 「エレベーター内部の四方を鏡張りにしようよ」

 「いや、中に家内安全のお札を張っておこうよ」

 「その下に花束おけぱ気味悪いからね」

 「いやいや、エレベーターを2階からしか動かせないようにすれぱ、犯人は1人で待ちぽうけになるんじゃないか」

 などなどわけのわからない意見が出て会議は迷走。

 そこへ、ペットショプの猿が逃げ出したと警察から連絡が入る。

 マンション内に入ってきたら大変だ、もしエレベータに乗っていたらどうしよう、とピントのはずれた意見で収拾がつかない。そうこうするうち、無事に猿も捕獲され一同ほっ。

 では、会議は解散!

 あっけにとられるカメラ業者。

 つくづく人間ってまとまらない生き物。

 市町村がまとまらないのに国がまとまるのか、国がまとまらないのに地球がまとまるのか。夫婦ですらまとまらないときがあるというのに。

 自分の国さえよけれぱそれでいいが大前提な会議なんだもの。

 私もー年歳をとりましたが、地球も1年老いました。そろそろ地球介護の時代に入ってる。来年こそ、やさしく扱ってあげないとね。地球にも言ってあげましょうか、良いお年を、って。

◇◇

次回は新年1月15日掲載予定です。

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# by woody-goody | 2009-12-19 05:50 | 社会

師走の春ボケ


 あまりにも時間が速い。いえ、言い直します。これほど一年が、速いと感じる年はなかったような気がしてるのです。

 子供の頃、授業時間より休み時間の方が絶対に速く過ぎる、不公平だ、と思っていました。

 それでいくと、1年を速く感じるってことは、1年がとても充実していたって理屈になるんでしょうが、残念ながらそれほど充実していたという満足感もなく。

 変な言い方ですが、「今日の気がしない」のです。街のイルミネーションを見ても、まったくと言っていいほど、年の瀬という感じがしない。逆に「またずいぷん早くからクリスマス気分なんだなあ」と思っていて、ふと気づけぱクリスマスはもうそこに。

 あらら、と驚く自分に再度驚いてる。

 事務所に「お歳暮は何を送りますか?」と聞かれて、「まだ早いんじゃない?」と答え、カレンダーを見てまたびっくり。

 業界的に言うなら、落語会のチラシに誰かが「芝浜」を高座にかけるというのを目にし、「へえーずいぷん気の早い演目だな」と思った自分に気づいて、あらら。

 テレビでは「年賀状の作り方」が流れ、忘年会どころか新年会の知らせが届き、カレンダーと自分との大きなずれに気がつくのです。

 必ずや原因はあるはずだ。そうか、地球温暖化だ。

 だって私は、まだコートも着てないし、マフラーだって巻いてない。

 カレンダーと気温が一致してないことからくるボケ症状なんだ。

 温暖化で物理的に地球が日本が危ない、というのは知っていた。でも私の精神にも大きな影響を与えているのでは、という疑いが生じたのです。

 まずいぞ、これは。

 そのせいで、来年1月の垣例パルコ1カ月公演の準備も、例年なら、新作創りに苛立ち、頭が混乱して、セツトプランで慌ただしいのに、なんだかまだまだ先の話のような気がしている。

 このコラムも年内あと2回と聞いてまた、え、そんな時期!?こりゃあ気候のせいだけじゃないのかな。

 どう考えても、年内、あとひと月あるような気がしてならないのです。そうか、この暖かさで、私は今、春ポケなのかも。

 こんな頭で原稿を書いてると、有名な与太郎小噺が浮かんできた。

 「おとっつあん、一年は13ヵ月だよね。1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月お正月。ほら、13ヵ月だ」

 「馬鹿、お盆が抜けてる」
# by woody-goody | 2009-12-12 08:54 | 社会

不況にアイデア商品

不況にアイデア商品_d0051179_5313727.jpg

 アイデアは背水の陣から生まれる、とはよく言われることですが、不況になると生活の智恵が生まれます。

 プラネタリウムで「きれいな空気の絶景ポイントで星を眺めたつもり」、日帰りで出かけた道の駅の温泉施設で「豪華温泉に入ったつもり」、デパ地下の試食で「グルメツアーしたつもり」、あらたまった式には、高級ブランドバッグや衣装をレンタルして「いっときセレブになったつもり」。

 市営の動物園、植物園の入場者も増え、昼は外食より弁当に、夜は外で飲まずに家で飲み、家計に優しい生活。

 おかげで、「家族だんらん」という懐かしい言葉が復活しているとか。

 もともとそなわっていた「気で気を養う遺伝子」が、日本人の間に復活の兆し。

 だって、でなきゃ「芝居やスペクタクル映画やドラマを見たつもり」にさせてくれる地味な落語がこんなに愛されるわけがないですもんね。

 今年の春、富山限定商品の一つとして、私の故郷富山の放送局が「富山弁かるた」を発売したところ、予想外の売れ行きを示してるそうな。県外でも!

 この商品には、私が「読み人」として参加、富山弁を読んでます。

 キャツチコピーは「富山弁であそぱんまいけ」

 「うしなけたあ?買うたぱっかの傘ながに」

 他にも「けなるい」(羨ましい)、「いくそった」(驚いた)、「だいてやる」(出してやる)など勉強になりますよ。

 正月は、家で親子かるた大会というのはいかが?

 そもそも、今の子、かるたという遊びを知らないかもね。だから新鮮に映るのかも。

 今年の流行語大賞の候補に「歴女」なる言葉が入っていました。

 そう言えぱ、ファンの方から「男の生きざまシリーズ戦国武将入浴剤」をもらいました。

 織田信長、明智光秀、直江兼続、豊臣秀吉、徳川家康、伊達政宗、上杉謙信。

 大河ドラマ「天地人」の舞台となった新潟の会社が考案したものだそうで、直江兼続の湯には「湯は熱く愛のように、上杉家の湯は生き返る」と。信長の袋の裏には「本能寺は熱すぎた――だが湯は熱い方がいい」なんて書かれています。湯質は「食塩湯」、ほかに信長の略歴も載っていて、まさに、面白くて為になるアイデアです。

 事業仕分けで無駄排除が奨励され、なにが無駄か無駄でないかについて真剣に考えるようになった政治家、企業家、家計を守るお母さん。

 ここはひとつ、いざアイデア合戦とまいろうぞ。

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# by woody-goody | 2009-12-04 05:31 | 列島各地

迷信に生きる祖母

 迷いながら信じる、迷信ってなんでしょうね。

 私は家庭の事情で、親代わりでもあった爺ちゃん婆ちゃんに大事に育てられました。

 婆ちゃんはことあるごとに、子供にとっては意味不明のことを言いました。

 居間の真ん中にあった火鉢の炭を火箸でいじるたびに「火遊びをするとおねしょをするぞ」。

 ほかにも「夜に口笛を吹くとお化けが出るぞ」「買って来た靴を家の中で履いたまま表に出ると背が伸びなくなるぞ」「夜、爪を切ると親の死に目に会えないぞ」「食べてすぐ横になると牛になるぞ」「北まくらで寝ると死ぬ」「茶柱が立つといいことがある」「3人の真ん中に立って写真を撮ると死ぬ」「下の歯が抜けたら上に、上の歯が抜けたら下にほうらなけれぱいけない」。

 それぞれ調べてみると、なんらかの科学的根拠のあるものもあり、生活の知恵が迷信という形で伝えられたのでしょうか。

 夜になるとほのかな灯りしかなかったころ、薄暗がりで爪を切ると深爪になる恐れがあるといういましめの言葉だったのでしよう。

 真新しい靴を履いてそのまま外へ出かけるのは、その昔、身内が死ぬと出棺の際、棺桶をかついだ人たちが家の中から草履を履いたまま外へ出ることを連想させたからだそうです。

 少しでも背が伸びて、お兄ちゃんやお姉ちゃんを追い越したいと思っていた子供の思いにくっつけていましめの言葉にした智恵。

 ここで、迷信を思い出しながらハッと気づいたことがあります。

 迷信を思い出すたび、言った婆さん、言われた自分、そのころの情景を思い出していたことに。

 人が死ぬと、今度は人の思い出の中に生きる、とはこういうことなのか。

 考えてみれば、実際に生きている人より、すでにあの世へ逝った人の方が私の中では生きているということもありうるのです。

 爺さん婆さんの口癖を思い出すたび、私の中に生き返るひととき。

 幼い頃は、わけのわからない迷信を聞かされるたび「うるさいなあ、そんなことあるわけないだろ、年寄りは科学的じゃないからしょうがないなあ」と反抗していたものでしたが、この年になってもみごとによみがえるということは、これは先祖を思い出させるメカニズムの一つなのかもしれません。

 迷信、偉大なり。

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# by woody-goody | 2009-11-27 05:35 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


by woody-goody

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