日本列島、二つのお盆

 この時期になると、落語「青菜」を思い出します。

 中でも、人間国宝だった故・五代目柳家小さん師匠のマクラが大好きです。

 「蜀山人の狂歌に、涼しさと言うと『庭に水、新し畳、伊予すだれ、数寄屋ちぢみに、色白のたぼ』というのがありますな」

 「数寄屋ちぢみ」というのは、我々落語家も身につけている「ステテコ」のことです。

 「たぼ」は、女の人が長い髪を後ろでぐるっと巻いてかんざしでとめてある様子、ここから「いい女」のことを「たぼ」と言うようになったそうです。

 言葉だけで涼をとるイマジネーションの世界です。

 では逆に、暑苦しいのはどういうのかというと。

 「西日さす、九尺二間に、太っちょの、背なで子が泣く、まま(飯)が焦げ付く」

 あまりの暑苦しさに笑うしかありません。イメージで遊ぶ、日本人の豊かさに感服です。

 さて、来週はお盆。

 お盆とは、先祖の精霊を迎え、追善の供養をする期間のこと。

 ところが、日本にはこれが二つあります。

 旧盆と新暦の盆。

 私の故郷の富山県でも、県庁所在地の富山市は8月の旧盆、生まれた旧新湊(現射水市)は7月の新暦の盆。

 東京など都市部では7月13〜16日の新暦の盆。地方では8月13〜16日の旧盆。

 どちらにしろ15日をはさんだ4日間。

 一説によると、1873(明治6)年に新暦(太陽暦)が採用された際に、国民の8割を占める農家の人たちにとっては、新暦の盆が最も忙しい時期にあたります。なので、旧盆のままになったそうです。

 もっとも、このおかげで帰省ラッシュが緩和されているメリットもあるのでしょう。

 年中行事の中で、親戚知人が一堂に集まる最も大切なのがお盆と正月でした。

 めでたいことの例えに「盆と正月が一緒に来たようだ」とよく言ったものですが、さて、若い人たちに通じるかどうか。

 「クリスマスとバレンタインデーが一緒に来たような」と言えば、分かりが早いか。

 旧盆と新暦の盆がなんなく共存する日本。米国なら、旧クリスマスと新クリスマスがあるようなものじゃないでしょうか?

 あえて一つに統一しないで、知恵を使って豊かに過ごして来た日本。

 こんな日本をわかってもらわないで、はたして諸外国との交渉なんてうまくいくのでしょうか。

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# by woody-goody | 2013-08-09 11:27 | 社会

デジタルカメラあれこれ

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 ハワイの標高4200メートルのマウナケア山頂にある日本のすばる望遠鏡に、去年の夏に設置された高性能巨大デジタルカメラ(HSC)が、アンドロメダ星雲の撮影に成功したそうです。

 すばるに搭載されたのは全長3メートル、重さ約3トン、満月9個分の広さを一度に撮影できるHSC。よくやった! 日本の技術に誇らしい気分になります。

 巨大なカメラもそうですが、身近な話では、今はほとんどの人が持ち歩いている携帯電話に搭載(笑)されているデジタルカメラの性能にも驚きます。

 落語会を終えた楽屋や打ち上げ終わりで、撮影を頼まれることがたびたびありますが、スムースに事が進んだ試しがありません。

 私と一緒に並んでる人の友達は、携帯電話をかざして「ハイ、チーズ!」と声をかけた後、必ず言うのです。

 「あれ? これ? どこを押すの?」

 私の隣の人が「にわかカメラマン」に叫びます。「ほら、早くしてよ。師匠はお疲れなんだから」「だって、わかんないわよ。私の携帯と違うんだもの」

 そりゃそうなのです。彼女が持っているのは、私の隣の人から渡された携帯なのですから、機種が同じじゃない限り、仕組みが違うのですから。

 携帯電話メーカーに申し上げたーい。お願いだから、撮影ボタンの位置や色や大きさや反応度をJIS規格かなんかで統一してもらいたーい。それに使う側も、シャッターチャンス一発に命をかけなくてもいいんじゃないの?

 画像記憶メディアであるメモリースティックやSDカードには、1000枚近くだって保存できるのがあるのですから、1枚や2枚失敗したっていいのです。シャッターチャンスを考えずに、どんどん押しちゃえ押しちゃえ。

 で、後からじっくり気に入ったのを選べばいい。

 「もったいない」のはフィルムじゃなく撮影時間。メカはデジタルになっているのに使う側の人間はアナログという取り合わせの妙。

 カメラに笑顔を向けながら、今回はいったい何分で、何回で撮影が終了するのか予想するのもまた楽し、と思うようにしています。

 いらつきながら、すみませんねという空気を私に漂わせながら、携帯片手に焦る友達のそばへ駆け寄って言う持ち主のセリフ。

 「ほら、だ、か、ら、これを押せばいいのよ、ねえ、わかった? もうー」

 頼まれて叱られてりゃ世話はない。友情に、ひびが入らないことを祈るばかりです。

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# by woody-goody | 2013-08-02 11:23 | 社会

わかりにくい政治

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 「恒例・牡丹灯籠2013」にお越しいただいた皆様、この場を借りて厚くお礼申し上げます。

 大長編をダイジェストにして、登場人物の関係性が把握できて、かつ面白くてためになる舞台にと、苦労して作り上げた作品です。

 3年ぶり6回目の再演。初演から数えれば私もお客様も七つ年を重ねているわけで、体力的にも精神的にも多少の衰えがあるはずなのに、公演時間は変わらずの3時間。我ながらあきれております。

 この公演はもちろんのこと、この春から他の独演会でもマクラで言い続けてきたのは、「投票に行くと選挙速報が面白くなるよ」でした。開票速報を見ながら、候補者や党が獲得した票数の最後の数字の1票、あ、あれは俺が入れたんだと思うと、何だか誇らしい気持ちになるのです。

 千秋楽を終えて乾杯もそこそこに、自宅のテレビで選挙速報に見入りました。各局それぞれに工夫をこらしていましたが、ザッピングしながら池上彰さんの番組に落ち着き、最後まで。

 視聴率もトップだったとか。

 いやはや面白かった。よくわかった。こちらが聞いてほしいと思うことを聞いてくれ、スカッとした場面がいくつも。ジャーナリスト出身の強みが、番組を生き生きさせていました。

 「わかりやすさ」って大事です。

 わかりやすさということで言えば、私は、地方から「こども新聞」を送ってもらっています。小学校高学年程度のレベルに設定してある記事の数々。テーマは「憲法」「経済」「生活科学」「方言」「言い伝え」など実に幅広くわかりやすい書き方です。

 「ネット選挙運動」についての記事は特に勉強になり、ガッテンしました。専門家の方々が子供たちに丁寧に伝えようとする姿勢が伝わってくるのです。

 そう言えば毎日新聞「月刊なるほドリ」もわかりやすいですね。

 しかし日本の現状は、私の理解度もあるのでしょうが、特に政治のこととなると「わざとわかりにくくしてるんじゃない?」と思うほどです。

 「わかってもらいたい」という熱意が伝わってこないんです。

 国民がわからない方がやりやすいんでしょうかね。また、そのことに慣れてしまっている私たち。

 今ごろ、こんなことに気がついている場合じゃないんですが、賛成にしろ、反対にしろ、わかった上でしてもらった方がきっとうれしいはずなんですがね。

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# by woody-goody | 2013-07-26 11:30 | 政治

千秋楽は投票日

 こんなに続くとは思ってもいなかったのです。

 恒例の下北沢本多劇場公演、三遊亭円朝作「牡丹灯籠」のことです。

 今年は16日から6公演になりました。

 思い起こせば7年前。たまたま「円朝全集」のページをめくっていた時のこと。

 あの「牡丹灯籠」でしょ? と思いつつ、「いくら読み進んでも知ってる場面が出て来ないぞ」と。

 知ってる場面とは、皆さんもよくご存じの幽霊がカランコロンと下駄を鳴らしながら、愛する人の家を訪れるというシーンです。

 「お露と新三郎」「お札はがし」、さらにせいぜい「お峰殺し」や「関口屋のゆすり」。私が知ってる「牡丹灯籠」は全体の三分の一に過ぎなかったと気付きがくぜん。「案外、私みたいな人がたくさんいるんじゃないかな」「そうだ、これを一気にやってみたい」という気持ちが、むくむく沸き起こってきたのです。

 明治17年、円朝師が15日間連続30時間ほどもかかっただろうこの噺を、私は2時間ほどでやってしまおうと決意したのです。

 ところが現在、落語にもなっているところは、残っているだけあって面白いところばかり。全体の「いいとこどり」が作品となって語り伝えられてきたのです。でも、全体が見えないので、聴き終わった後には頭の上にクエスチョンマークがいくつも浮かぶということにもなるのです。

 そこで一晩で全体像もつかめ、それが故に印象的な場面に深みを与えられるような「志の輔版・牡丹灯籠」をこしらえるのに心血を注ぎました。とにかく、お帰りになる時にお客様の頭にクエスチョンマークが浮かばぬように、すっきりした頭で帰っていただけることだけはお約束できる構成に致しました。

 5年目の再再再再公演です。

 つくっていてつくづく思ったのは、幽霊という概念を等しく持つ日本人のありがたさ。西洋のモンスターやゴーストと違って、円山応挙が描いた絵がお手本の、両手を前へだらりと垂らし、足がない幽霊キャラクターが、お客様の頭に描かれるというありがたさ。

 一応、怪談「牡丹灯籠」と銘打ってはありますが、聴き終わった後、「これって怪談噺じゃないよね」と思っていただけるかも。

 そう、それが狙いです。

 去年からスケジュールを決めていたとは言え、選挙ウイークに重なるとはね。最終日が投票日。「こいつぁー、夏から縁起がいいわい?」

 お待ちしています。

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# by woody-goody | 2013-07-12 16:36 | 芸能

イグノーベル賞受賞?

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 知る人ぞ知るイグノーベル賞は「ユニークな研究に与えられる」賞です。どう考えても無駄な研究と思えるものであっても、そこにユーモアが感じられたり科学に興味を持つきっかけになれば、という願いが込められています。

 例えば、日本人が受賞した例で言うと、「火災などの事故で眠ってしまった人を起こすのに、ワサビを嗅がせたら有効だった」という事実を聴覚障害者用の火災報知機開発研究に役立てたり、山岳地帯や山間部に鉄道を新設する際に粘菌の特性を利用して最短距離の路線を見つけたり、台所の生ゴミを減らすのにジャイアントパンダの排せつ物から採取したバクテリアを研究したり……。

 こんな身近なところから発想された研究が、案外大発見につながることもあるのではないでしょうか。

 さて、今週の「ためしてガッテン」を、ご覧いただけたでしょうか?

 私が司会をしている番組なので「手前みそ」になりすぎるか、とコラムでは紹介を控えていたのですが、今週の実験と成果はイグノーベル賞ものだなあ、と自信を持っているので、ここにご紹介する次第です。

 炭酸飲料を落としたり、車で運んだ後にフタを開けると、いきなり泡が噴き出て中身が3分の1くらいに減ってしまったという経験は、みなさん一度や二度はおありでしょう。ガッテンスタッフは、これを何とかすべく、いろんな実験を試みました。

 瓶や缶を転がしてみたり、握ったり、指ではじいてみたり。思いつくことはすべてやってみました。

 で、ついに発見!

 30秒で解決したのです。

 落としてしまった瓶でも缶でも喉に当てて30秒間、「あー」でも「うー」でも。何なら歌ってもいいのです。

 要は、細かい震動を与えること。で、開けてごらんなさい、あーら不思議、泡は出なくなるのです。

 メカニズムはこうです。

 激しく振られた炭酸飲料の容器の中は、小さな泡でいっぱいになります。フタを開けると、この小さな泡が周囲の液体をも巻き込んで一気に上昇、噴き出すというわけです。

 つまり、噴き出させないためには、小さな泡をなくせばいい。要するに「泡の噴出の原因となる小さな泡のもとを声の震動で消してしまおう」というわけです。

 スタッフはイグノーベル賞応募方法を調べ始めました。何かいい方法をご存じの方、ご一報を。私はいま、受賞ステージで着用するタキシードを注文しようかと考え始めています(笑)。

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# by woody-goody | 2013-07-05 12:30 | 芸能

トルコに落語のルーツ?

 トルコと言えば今、暴動が起きていてそれどころじゃないのですが、私には行きたい理由があるのです。

 かつて、アジアとヨーロッパをつなぐイスタンブールを訪れた時のこと。とある劇場で、いろんな国から集まった人たちを、それぞれの母国語を駆使して笑わせた、あっぱれな話芸の達人を見たからなのです。

 それとは別に、このコラムで紹介したこともあるムズラック・ハリト君はトルコから大阪へ来て日本語の勉強をするうち「落語」に出会い、自ら日本語で落語をするようにもなり、ひょんなことで私と知り合い、私の落語会のゲストに出てもらったこともありました。

 その後、彼は大学院を卒業。トルコに帰り、先日こんなメールが届きました。

 「以前、志の輔さんの落語会にゲストで呼んでもらったことは、とてもうれしかった。その時のお礼と言ってはなんですが、トルコのメッダリクを聞きに来ませんか?」

 なんでも、手にハンカチと杖を持ち、極彩色のマントに山高帽という風体で一人語りをする人をメッダと呼び、その話芸をメッダリクと呼ぶそうです。

 演劇も禁止されている厳しいイスラム社会で、伝説や英雄の叙事詩のような古典は言うに及ばず、恋愛や時事ネタや流行を取り入れた新作、そこに風刺や毒も盛り込んで笑わせる伝統芸能なんだそうです。現在、これを演じる人は少なくなり、無形文化遺産に登録されているとか。

 ハリト君は、このメッダリクがシルクロードを経て中国、朝鮮から日本へ伝わったのが落語になったんじゃないかと研究し続けているのです。かつて、イスタンブールで見た男に、その伝統が引き継がれていたのかもしれません。

 メッダリクの一例をあげると……。

 同じ屋根の下に住む酒飲みのハサンとフセインがおりました。船で荷物や人を運ぶキツイ仕事の毎日。ある日、自殺を試み間違って船に落ちた娘を助けたハサンは恋に落ち、二人は幸せに暮らすようになりました。これを妬んだフセインが娘に嫌がらせをしているところを見つけたハサンはフセインを殺し、翌日、ここへ現れたスルタンが……。

 なんか落語の人情噺のようでしょう?

 連綿と継承されている落語と違ってメッダリクが減少した理由は、亭号もなく流派も師弟関係もなかったからじゃないか、とハリト君は言いました。

 だとするなら、落語界のシステム、よくできてるってことですね。

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# by woody-goody | 2013-06-21 16:04 | 芸能

日本人初のトニー賞!

 携帯電話の音に画面を見れば「番号非通知」の文字。この場合、たいがいは海外からであることが多いのですが、はたしてやはり、米国と日本を行ったり来たりの川名康浩プロデューサーからの電話でした。

 低い沈んだ声に最初は悪い知らせかと一瞬心配で緊張しましたが、聞いてみればなんとなんと驚きのグッドニュースだったのです。

 喜びがあまりにも大きくなると、人って静かになるものだと、このとき実感いたしました。

 「私自身プロデューサーとして念願だったトニー賞を受賞することができました。いろいろサポートしてくれてありがとう」

 「え、今なんて言ったの!?」と、心の中で聞き返す私がいました。

 トニー賞! あのサウンド・オブ・ミュージックや屋根の上のヴァイオリン弾きやキャバレーやコーラスライン、レ・ミゼラブル、オペラ座の怪人、レント、ライオンキング、プロデューサーズ……、も受賞したトニー賞? 映画界で言えばアカデミー賞に匹敵する、あの?

 川名さんは、そのあと無言でした。この無言がすべてを語っていました。

 制作した「Kinky boots(キンキーブーツ)」が「第67回ミュージカル部門作品賞」を受賞したのです。

 その後の電話で知ったのですが、9日の授賞式の結果がネットで知らされるやいなや、全世界から観劇予約が殺到したそうです。

 授賞式では、楽曲賞を受賞したシンディ・ローパーさんが隣に座っていて、作品タイトルの「キ」の発音があったとたん、2人で跳び上がってハイタッチ。

 レッド・カーペットを歩いた際に世界のマイク・タイソンに足を踏まれ「これはきっといいことあるぞ」と、不思議な予感があったそうです。

 以前このコラムでもご紹介しましたが、実は川名さん、日本のミュージカル劇団で俳優を目指してはいたものの、どうも向いていない気がして一念発起、1993年にいきなり渡米、プロデューサーの道を歩き始めて20年。ついに快挙。8年前にブロードウェーを一緒に歩きながら、「いつかここで落語やろうよ」といってくれた人がトニー賞をとったとは夢のようです。

 来年には還暦を迎える私が、まだ一つ、いや二つぐらい夢を見てもいいのかもしれないな、と思わせてくれたニュースでした。川名さん、本当におめでとう!

 トニー賞授賞式の模様は6月25日、BSプレミアムで放送されるそうです。

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# by woody-goody | 2013-06-14 16:58 | 芸能

「にほんごであそぼ」に

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 うれしいことがありました。NHKのEテレ「にほんごであそぼ」に出ることになったのです。

 柳家花緑さんの「子供のための寿限無」で落語のフレーズが子供たちの間で大人気になったり、野村萬斎さんが狂言の型を体で面白おかしく表現したり、神田山陽さんが勢いとわかりやすさで講談を広めたり、国本武春さんが、うなりやベベンという名前で浪曲の迫力を知らしめたり。日本の和の芸能をとても大切にしていて、その演出のレベルの高さにうなっていた番組なので、そこに出られるなんて。

 この番組のレギュラー出演者で、古い友人でもあるおおたか静流さんから声をかけてもらったのです。

 いやはや、その収録の楽しかったことと言ったら。

 おおたかさんが「落語の楽しさを子供に伝えたい」と、落語をテーマに自ら作詞作曲した「つもりのうた」や「出囃子」をつくってくれたのです。

 本当は好きな饅頭を、怖いから嫌いとうそをついて、意地悪な友達からまんまと饅頭をせしめる「饅頭こわい」。

 貧乏なので家具を買えない男が、絵が得意な知り合いに、がらんとした部屋の壁へ家具の絵を描いてもらったところ、そこに目の悪い泥棒が盗みに入り、途中でどれも絵だったことに気付き遊び心を発揮、「盗んだつもり」とパントマイムを始める「だくだく」。

 テレビで見ていたのと違い、実際に作られていく現場は、それはすごいものでした。

 緻密な台本、稽古、衣装、ヘアデザイン、メーク、セット。大人が真剣勝負でつくる子供番組の裏に、ただただ感動。

 振り付けのラッキィ池田さんと彩木エリさんのやさしさ、そして何よりも子供たちの天才ぶり!

 小学4年生のてるみ君、3年生のかいと君、2年生のまりちゃんの演技力、記憶力、礼儀正しさ、我慢強さ。

 私が何度もNGを連発、子供たちの足を引っ張って「本当にごめんなさい」。

 で、実は今だから告白するけど、みんなとほんの少し一緒に踊っただけなのに少し腰を痛めて治療に通っているのです。情けなや。

 でもそんなことより、君たちの笑顔の中で撮影できた、あの現場は私の宝です。これをきっかけに落語を好きになってくれたら、もっとうれしいけどね。

 ちなみに「饅頭こわい」の放送は28日、「だくだく」は9月20日。朝8時40分からですが、再放送もあるからね、大人のみなさん。

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# by woody-goody | 2013-06-07 12:48 | 芸能

少女の自由研究

 まだ梅雨入りしたばかりですが、必ず夏はやって来ます。

 そして子供の夏休みも必ずやって来ます。当然、夏休みの宿題も必ずやって来るでしょう。

 8月31日になって慌てる子供と親の姿が今から思い浮かぶのは、いくらなんでも早過ぎますが、ふと思い出したことがありました。

 15年ほど前の夏のことです。私は仕事であちこちへ出かけ、家にいることも少なくて、気にはなりつつ、8月も末になってようやく話す時間ができたので、軽い気持ちで「夏休みの宿題、もう全部終わったのか?」と聞いてみました。

 「パパ、自由研究だけが残っているんだ」との答え。

 だけ、って。

 「自由研究が一番大変なんじゃないのか? 時間がかかるだろうし、今から何をするか考えたって、間に合わないだろう」

 さあ、大変です。

 今だから白状いたしますが、息子と一緒にうーんと考えました。今から間に合う自由研究、本人がやれる簡単で早い研究……。

 周りで目についたのが、机の上に転がっていたゲーム用のサイコロ。これを見て、以前耳にした確率の話を思い出しました。

 サイコロを転がして、偶数と奇数の出る確率は、やればやるほど半々に近づいていくという理論。

 途端にサイコロを振り始めた息子。目が出るたびに偶数か奇数かを記録し表にしていきました。

 たしか、500回まで振っていました。

 結局、半々になったんだったかそうでなかったかは覚えていないのですが。

 梅雨入りに何でこういう思い出が頭によみがえったかと言うと、ラジオで紹介されていた少女の自由研究が、とても意表を突くものだったからです。

 やはり、夏の終わりに自由研究にとりかかれずにいた娘さんは、母親から毎日のように朝から晩まで「まだ自由研究できていないの? 早くしなさいよ」と言われ続けていたそうです。

 とうとう少女は自由研究のテーマを思いつきました。「一日のうちで、お母さんが『早くしなさいよ』と言うのは何時ごろが一番多いか。その次は……」と調べ上げ、円グラフにまとめたのです。

 すると学校で賞をもらい、新聞にまで掲載され、それを見たお母さんから叱られた言葉が「早く言いなさいよ」だった……とは、私のつけた落ちですが。

 久しぶりに素晴らしい感性の少女の、かわいい笑い話に、心の底から笑った私です。

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# by woody-goody | 2013-05-31 11:27 | 社会

茂山千作先生、安らかに

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 大往生で、狂言の茂山千作先生がお亡くなりになりました。

 落語と狂言。一見、交流がなさそうに見えるでしょうが、そこは同じ笑いを表現する古典芸能として、狂言をとても尊敬しておりました。

 初めて京都御所の近くにある茂山家へ伺ったのは、2004年9月9日のことでした。

 というのも、この年の1月から「満月の会」と称して、青山にある能舞台で茂山家の皆さんと落語と狂言のコラボレーションの会を始めたからなのです。

 毎月、満月の日に開かれる会で、12月には念願かなっていよいよ千作先生をお迎えすることになったのです。

 「ガッテンいうのを、いつも見ていますよ」と、穏やかな語り口でおっしゃりながら、それはおいしそうにたばこをくゆらし、すてきな笑顔から楽しい話がたくさん飛び出しました。

 このときは「満月の笑い」という本の出版準備も兼ねていたので、京都御所の中庭で撮影させてもらった何枚かの記念写真は、一生の宝物になりました。

 千作先生は終戦直後、このままでは狂言は滅びてしまうと道具一切を軽トラックに積み込み、自らの運転で全国の学校を回り、子供たちに狂言の楽しさを見せ続けたそうです。

 息子や孫も含めて多くの弟子、後継者を育て、他のジャンルと積極的に交流、共演、狂言の「おかしみ」を伝え続けた方でした。

 千作先生が舞台に登場した瞬間から、客席と舞台全体が緩むのです。

 至芸とはこのこと。

 「幸せ」を運んでくる人。

 こんなエピソードも。

 出番が近くなった能楽堂の楽屋。千作先生演じる山伏役の衣装の一部が見当たらない。額につける「ときん」がないと、話が前へ進まない。さあ、大変、一同真っ青。

 すると、千作先生、インスタントコーヒー瓶の黒いフタに目をつけた。「誰か、これにひもつけてえな」

 なんと、ひもをつけたネスカフェのフタを額にくくりつけ、なにくわぬ顔で静々と登場。

 まさか、そんなものを額にくくりつけているとは思いもしないお客様。

 何事もなく狂言は、笑いのうちに終わりました。

 このとっさの機転、おおらかさ、しゃれっ気、ゆとり、何よりもサービス精神。まさに人間国宝。狂言の神様から選ばれた方。23日、93歳で旅立たれましたが、あの世でまたいたずらっぽい笑顔でこの世を見てらっしゃることでしょう。

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# by woody-goody | 2013-05-24 12:17 | 芸能


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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