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祝!六本木EXシアター

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 今年最後のコラムになりましたが、年末に向けてとてもうれしい気付きがありました。

 毎年、北海道から沖縄まで落語をしていますが、高座に座って明らかにやりやすいホール、やりにくいホールがあるのです。

 その原因はどこにあるんだろう、と考え続けた数十年でした。

 そんな折、先日テレビ朝日が六本木にこしらえた、「EXシアター」のこけら落とし公演に2日間出演。

 プログラムにはビーズ、奥田民生、グレイ、エルビス・コステロ、坂本龍一、細野晴臣、チャーなどなどすごいメンバーの中に『志の輔らくご』が2日間。うっかり見ると、印刷ミスかと思うほどの違和感。

 約1000人収容の完全音楽ホール。天井は筒のように高く抜けて、スタンディングにも対応可能な出入り自由な客席。舞台の間口や奥行きも広く、しゃれたデザイン、できたて独特の何とも言えぬ匂い、さあどんな落語空間ができあがるんだろうと、真新しい楽屋でわくわくしていました。

 ところが、初日は何だか客席との一体感が薄いのです。当然、間合いが狂います。やってて今ひとつ調子が出ない。

 私の体調? 芸の出来の悪さ?

 正直に製作陣にそのことを話し、2日目は客席側にマイクを立ててもらい、モニターからお客様の反応がダイレクトに伝わるようにしてもらいました。

 すると、初日とはまるで違う臨場感が高座の私にも伝わり、いつも以上の盛り上がりの高座に。

 この2日間の違いは何?

 何と打ち上げで、ホールの設計者がじかに私に教えてくれました。

 「私たちは、このホールは大音量のロックミュージックに対応できるように、という注文のもとに設計したため、舞台と客席との良い分離に、一番苦労したんですよ」

 「え?! 良い分離?」

 ようやくわかりました。 簡単に言えば、全国のホールには舞台と客席を一体化させるクラシック音楽タイプと、分断することを目的に設計されたロック音楽タイプがあり、客席の空気が舞台まで上がってこないのは、設計の狙いによる違いが原因だったのです。

 今年最後に落語の神様からもらったプレゼントは、「ホールの音の重要な知識」でした。

 ぜひ来年も「EXシアター」でやろうと思います。

 今回以上に工夫して、よりよき落語空間を目指します。ご期待ください。

 よいお年を!

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by woody-goody | 2013-12-20 11:44 | 体験

還暦を迎えて

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 師匠談志が逝って、はや三回忌。

 その師匠が還暦を迎えたとき、弟子たちに言った言葉を思い出します。

 「俺もあと5年だろう。寿命ということもあるが、自分の落語がやれる時間としてという意味でもな」

 それから毎年、一門が勢ぞろいする新年のあいさつでは、「俺もあと3年だろう」「あと2年だな」となっていきました。毎年そんなセリフを聞かされ、なんで毎回わざわざそんなことを言うのだろうと不思議に思っていました。

 そんな私が、あの頃の師匠の年、還暦を迎える事になりました。

 子供の頃、50代の人は爺さん婆さんでありました。

 自分自身が幼い頃、人生終盤だなと思っていた、まさにその年になりました。

 残り時間を確実に意識し始める年、還暦。

 漠然とした焦り、じりじりとしたいら立ちのような感情が湧き起こり、「そうか、師匠はこれと同じような気持ちで、毎年のあのあいさつをしていたのかも」。

 これから先、あと何回高座に上がれるのだろうと考えながら、でも、今晩何をやるのか決めるのが先決だろうよ、と笑ってしまう自分もいて。

 時間を見つけては、いろんな舞台を観て元気をもらったりしていますが、勇気をもらった映画が1本ありました。

 「キューティー&ボクサー」。切ないのに癒やされ、笑わされ、泣かされた映画でした。

 日本で初めてモヒカン刈りにした男、現代芸術家の篠原有司男81歳と、同じく芸術家である妻の乃り子。ニューヨーク在住40年の二人の愛と闘いの記録です。

 英語と日本語が入り交じったドキュメタリー。

 芸術家なのに、タイトルに「ボクサー」と入っているそのわけは、観てのお楽しみです。

 ニューヨークに意気揚々と来たときの映像がフラッシュバックで差し挟まれ、妻の絵とシンクロしていくそのセンスのよさ、カメラワーク、編集、音楽、全てにうなりました。

 途中からドキュメンタリーであることを忘れさせるほどで、映画祭で受賞したというのもうなずけます。

 何気なく二人が口にする言葉が哲学的に聞こえてきます。

 「アートっていうのは悪魔。悪魔にひきずられていくものがあるわけよ」と夫が言えば、妻は「ラブ・イズ・ウォー」と絵に描いていきます。

 観賞し終わった後、なぜか「よし!」とつぶやいている私がいました。

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by woody-goody | 2013-12-13 11:40 | 社会

人から人への落語会

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 組織より人のつながりが原動力なんだな、と感じ入った会がありました。

 それは、岩手県北上市にある「さくらホール」が今年10周年を迎えての独演会。

 北上には石を投げれば高橋に当たる、というくらい高橋姓が多いらしいのですが2000年当時、ここにいた高橋氏が何度も東京での私の落語会に訪れ、楽屋に来ては「なんとか私たちのホールで落語会を」と言っていただき、その年の暮れに実現したのでした。

 彼の熱のすごさは、「県庁所在地ではない都市で本気で落語会を広めたいと思うのなら、季節ごとに年4回やるぐらいの気概がないと……」と、つい言ってしまった私の提案通り、見事に春夏秋冬の落語会を成功させたことです。

 ホールは収容人数400人の中ホールだったのですが、あれから13年を経た11月30日は10周年を記念して大ホールで。

 地元北上はもちろん、気仙沼や久慈、陸前高田など被災地各所から何台ものバスを連ねて来てもらおうという企画も実現させ、結果1300人のお客様になりました。

 ロビーは、多くの食べ物やグッズの店でにぎわい、長唄三味線の社中の皆さんがライブ演奏。ハレの気分が満喫できる演出に、遠方から来た方々もさぞや驚かれたことでしょう。

 実は、この日のために1年前から企画制作の指揮を執っていたのは高橋氏の部下の小笠原氏。

 高橋氏は何年も前に市役所に戻り、3年後の「岩手国体」の準備の要になっているそうなのです。

 高橋氏から情熱のバトンを受け継いだ小笠原氏。

 舞台準備の途中、舞台ソデに人影が。

 見ればあの高橋氏が。

 なんとうれしかったことか。

 「今日の全ての原点は『北上に落語を定着させたい』と東京まで何度となく通って、私を12年前に呼んでくれたからだよね。あなたの意思を受け継いだ小笠原君もすごいけど、スピリッツを与えたあなたもすごいよね」と、何年ぶりかで握手を交わしたのでした。

 彼らは公務員です。

 正直、公務員の中にはあまり熱のない人も多く、そのせいか、そのせいでしょう、寒々しい落語会を何度も経験してきました。

 私の新作落語「歓喜の歌」の創作意欲の原点は、役人への糾弾でしたから。

 でもこの日、私ははっきりと再確認したのです。

 情熱は、スピリッツは人から人へ伝わるものだと。もちろんその人を支える多くの人がいることも。

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by woody-goody | 2013-12-06 13:22 | 芸能


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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