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ジブリ「かぐや姫」

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 なんと「かぐや姫」に私が出ています、もちろんこの声で。

 師匠談志が「俺とお前の声とどっちが悪いかねえ」と言ったほどのさわやかな美声(笑)がお役に立つときがくるなんて。しかもそれがジブリの作品だなんて。

 実は私、落語家になる前は広告の世界にいたものですから、二つ目時代はCMのナレーションの仕事で、ずいぶん助けられました。

 映画での声の出演は初めてです。それも斎部秋田(いんべあきた)という役名まで言われて依頼があった時は、本当にうれしかったですね。

 ところが収録現場って、映し出された映像を見ながらセリフを読むものだとばかり思っていたのですが、スタジオに入ってみると私がたった一人。

 しかも、スクリーンを背に、私の前にあるのは私が演じるキャラクターの絵が載った譜面台。

 そこへ、あの高畑監督がいらして、斎部秋田のキャラクターのイメージを説明してくださいます。

 「耳が遠くすっとんきょうな大声で話す秋田で」とリクエストされたセリフは「ああー、かぐや姫のことでございますなー」

 この出だしの「ああー」がうまく出せない。

 監督のイメージ通りにするために何テーク録ったことでしょう。迷惑をおかけしました。

 落語家の場合、すべてのキャラクターを演じるのは自分。その出来にOKを出すのも、NGを出すのも自分。じゃあ今度はこういうふうにやってみようか、と演出するのも自分ですから、誰かにOKを出してもらうために何度も繰り返すというのは、歯がゆいながらもなかなか新鮮で得がたい体験でした。

 「サングラスをしていない黒澤明さん」とでも呼びたいような高畑監督の話し方はとてもソフトなのですが、奥底からOKするまで絶対に帰さないからね、というオーラ、作品に対する並々ならぬ情熱が伝わってきました。

 私の声に合わせて作画の方が絵をつけていくわけですから、監督も安易にOKは出せないのでしょう。

 それにしても近ごろは落語を聴いてくださるお客様が、ずいぶん増えました。

 それは、古典落語には、日本人が失いつつある「けなげで温かい情」が描かれていて、そこに共感したり癒やされたりするからでしょう。

 「かぐや姫」にも随所に共通した情を感じました。ただいまロードショーの真っただ中。

 ぜひ、映画館へ足をお運びくださいませ。

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by woody-goody | 2013-11-29 11:21 | 芸能

談志、勘三郎丈、追悼

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 21日が、家元立川談志の命日、三回忌でした。

 そして、今日は弟子やゆかりのある方々が総出の追悼公演「談志まつり」2日目です。

 先週14日は、家元談志と親子のように親しかった中村勘三郎丈の一周忌公演に参加したばかり。

 場所は、長野県のまつもと市民芸術館。

 なぜこの場所なのか、当日の公演パンフレットにプロデューサーでもあり親交の深かった弟弟子談春くんが書いています。あまりの名文、本番前にこれを楽屋で読み、胸がいっぱいになったくらい。

 なのでここにほぼ全文を掲載させていただきます。

 「……眩(まばゆ)いほどの輝きを放った人でした。談志亡き後、芸の上で困ったときは中村屋に教えてもらえばいいと、それで己を安心させられるほど芸の幅と深さを持った人でした。

 私と中村屋の縁はご当地松本が取り持ってくれました。拙著『赤めだか』を中村屋が涙を流して読んでくれたのがこの松本の楽屋。それから私を可愛がってくれました。だからこの会はどうしても東京ではなく松本でやりたかった。亡くなる前年の暮れに奇跡的にスケジュールが合って実現した、さだ、勘三郎、志の輔、談春のゴルフ。それぞれの世界の金看板に刺激という名のご褒美を神様がくれるために引き合わせてくれたと、今となっては思います。さだまさしも立川志の輔も、あなたのためならと駆けつけて来てくれますよ。我々ではフォローしきれないかもしれない歌舞伎役者中村勘三郎の凄さは串田和美さんに教えていただきます。<中略>

 あらかじめお断りしますが、今日は長い会になります。そのための17時開演です。中村屋の思い出を語るだけでなく出演者が、それぞれの表現で中村屋を送ります。だから終演時間が未定です。覚悟してね。

 哲(のり)さん。あえてそう呼ばせてください。今日は出演者だけでなく、この会に関わる人たちとお客様も含めて全ての人であなたにエールを送ります。あなたが、次の世界でも、あなたらしく生きられるために。そしてこの会を好江夫人に捧げます」

 この日は談春と私の高座や飛び入りの鶴瓶師匠の爆笑落語、さだまさしさんの心温まるミニコンサート、さらにこのホールの芸術監督でコクーン歌舞伎の演出家・串田和美さんによる勘三郎秘話の数々、本当に素晴らしい追悼になりました。これを成し得たプロデューサー談春に限りない拍手を送ります。

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by woody-goody | 2013-11-22 11:29 | 芸能

「ふるさと」歌えない

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 日本列島、各地で落語公演をしていると、これは笑えるか笑えないか? あれはどうか? それは? と地域によって、時期によって、言い方によって、いかに差があるかを毎日肌で感じています。

 同じ人であったにしても、昨日笑えたことが今日は笑えないということだってあります。

 去年に引き続き、今年も民謡歌手の伊藤多喜雄さんと一緒に、岩手県の野田村と、NHK「あまちゃん」の久慈市の2カ所で開かれた「落語会とコンサート」に行ってきました。

 その日は今年一番の冷え込みという日で、早朝の東北新幹線で東京駅から2時間半で二戸駅に到着。そこから1時間半、迎えの車で野田村へ。

 車中から見える穏やかな海、津波に襲われたことがうそのよう。

 がれきもほとんどみかけることなく、きれいな畑が続いていました。

 運転してくれた案内人は津波に襲われた時の状況を話してくれました。

 左に見える三陸鉄道の線路が今走っている車道を越え、右側のはるか向こうまで流され飛ばされたこと。

 久慈市が「あまちゃん」でいかに盛り上がったかも聞きました。

 放送開始の春は1日100人だった観光客が、夏には1000人になり地元の対応がおいつかず「もしあの時期に来ていただいていたら、とても落語会どころじゃなく、移動もままならなかったでしょう」。

 夜は久慈市へ。

 どちらも仮設住宅にお住まいの方々や地元の方々。

 高齢の方々も多くいらっしゃいましたが、膝に毛布をかけ、寒い中を最後まで楽しんでくださいました。

 打ち上げの席では村長さんがおっしゃいました。「やるしかないので復興に向けてがむしゃらです。当初に比べれば村民も明るくなってコンサートでも落語でも芝居でも楽しむ余裕ができてきましたが、まだ『ふるさと』を歌えるまでにはなっていませんね」

 一瞬、話の意味がつかめずよく聞いてみると、素晴らしいコンサートの最後に、歌手が思いを込めて「みんなで『ふるさと』を合唱しましょう。うさぎ追いし彼の山、小鮒釣りし彼の川……、みなさんもご一緒に」と言われてもお客さんは涙が止まらなくなり、歌が声にならないんだそうです。

 少しずつでも確実に復興されてはいるけれど、まだ「ふるさと」を歌うまでには至っていない、この表現がここ被災地の現状を一番的確にとらえているような気がしました。

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by woody-goody | 2013-11-15 13:02 | 列島各地

希望的メニュー

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 一昔前の落語家の、代表的な最初の言葉は、「えーー毎度馬鹿馬鹿(ばかばか)しいお笑いを一席」というものでした。

 思うに、以前の世間には真面目な空気が流れ、「息の詰まるような思いの毎日」が続くがゆえに、たまには寄席にでも行って馬鹿馬鹿しい話を聞く。これがストレス発散になっていたのです。

 ところがどうでしょう。言うまでもなく、いや書くまでもなく、日を追うごとに「偽装の告白」や「誤表示の報告」が増え、一つ一つの言い訳がこんなに馬鹿馬鹿しいと、面白すぎて私ら落語家の立場はあがったりです。

 どうしてくれよう。

 こうなると、最初に偽装が見つかり、苦しまぎれに「誤表示」という新語を考え出し、火に油を注ぎ、ついに責任をとって辞職したホテルチェーンの社長などは、「なんだよー。みんなやってるんだったら、あんなに早々に辞めることはなかったなあ」と思ったとしても不思議じゃないぐらいの連鎖反応。

 最初は怒っていた人たちも偽装の経緯を知るにつけ、もう笑うしかない段階にきています。

 発言を要約すると「当初は『手しぼり』していたのですが、あまりに手がかかるので100%ジュースに切り替えました」とか、「初めはちゃんと稲庭うどんを使っていましたが、ゆでるのに時間がかかりすぎると思っている矢先に、『稲庭風うどん』に出会いました」などと、コントみたいな言い訳。また、それを紹介するワイドショーも大上段に振りかぶり過ぎて「芝エビではなくバナメイエビだった。いったい、エビに何が起こっているのでしょうか?」なんて。違いますよ。エビには何も起きてはいませんよ。事件は人間に起きているんですよ。

 そりゃね、ありますよ。タイトルに「爆笑」とついているお笑い番組でも、爆笑できない番組だってありますし、私らの業界でも、「〓○名人会」とついてはいても「出演者全員が名人か」と問われれば、答えに窮しますよ。でも、これは勢いをつけるために「こうあれかし」「こうだったらいいな」という希望的なタイトルだから許されるんですよね。

 だって、芸や笑いは見る人によって感じ方が違いますしね。

 そうか。「希望的メニュー」だったら許せるんですよね。

 でも、メニューが長くなるなあ。

 「お客様、『芝エビだったらいいのに』はいかがですか?」。

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by woody-goody | 2013-11-08 10:03 | 社会

タダの威力

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 私ら世代は「タダほど高いものはない」と教わったものですが、今の若い人には通用しないようです。

 「志の輔さん、ラインやってないんだ」

 「何、そのラインって?線のこと?」

 「やだ、信じられない。タダですよタダ。国内どころか海外だってタダで会話ができるんですよ」

 「どうすればそれが使えるようになるの?」

 「え? どうすればって設定するだけですよ。やってあげましょうか? お弟子さんは若いからきっと知ってますよ、使ってますよ。やってもらえばいいじゃないですか」

 「簡単に設定できるんならやってもいいけど、ところでどこの会社がもうけてるの?」

 「何ですか?」

 「いや、だから、使う側はタダでも、どこかの会社がもうけてるんだろ?」

 「いえ、そういうのはないですよ」

 「ないって……。じゃあ誰が運営してるの?」

 「運営ってなんですか?そんなのないんですよ。設定だけですから」

 「携帯の会社はどこでもいいの?」

 「どこでもいいんですよ。え?! ひょっとして志の輔さんはスカイプもやってないんですか?」

 「何それ?」

 「え? 信じられない。パソコンで設定すれば顔を見て『フェーストゥーフェース』で話ができるんですよ、タダで」

 「え、それもタダなの?どこがやってるの?」

 「またあ〜。どこがってスカイプがやってるんじゃないんですか?」

 よくは知らないらしい。

 「そのスカイプって会社は、どうやって経営してるの?」

 「そんなこと知りませんけど、とにかくタダなんですから。やらない手はないですよ」

 タダの威力を前にして会話がかみ合うわけがない。

 この数日後、スマホの会社を乗り換えようと調べると、何とスマホ本体の料金は2年がかりで支払うことになっていて、今解約すると解約料金が高額になるという。タダとこのギャップはどうなってるんだ、いったい。

 スマホからメールすら打てず、写真機能を使って保存してあるのは長崎の落語会に来てくださった福山雅治さんのお母さんと撮ったツーショットだけという不思議な私のスマホ。これも確か弟子が撮ってくれたもの。なに、送ってほしい?そーんなこと私に求めないでくださいな。電話以外はできないんだってば。

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by woody-goody | 2013-11-01 12:04 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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