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天野さんの隠居大学

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 落語のよき理解者であった天野祐吉さんが、この20日に旅立たれました。

 落語の、技術論でもなく作品論でもなく、演者論でもなく、みんなにひらったい言葉で落語の世界の豊かさを紹介する役を担われ、ついにはご自身がずっと憧れていた「御隠居さん」になられました。

 隠居になるための作法を学ぶ隠居大学まで始められたんですから。

 時代の先取りをすることにかけては最前線の広告を扱う「広告批評」という雑誌をつくり、その後は正岡子規記念館館長、名誉館長になり、そうそうたるメンバーで「子規亭 新・道後寄席」も始められ、中身は講演、落語会、対談と魅力的な空間をプロデュースされていました。

 10年間毎年独演会を開催してくださり、その度に対談もしていただきました。

 師匠談志が落語協会を出たこともあり、さまざまな試みをしてきた私の落語を温かく見守ってくださった方でもありました。

 そうそう、あれは1997年の11月に毎日新聞東京本社の地下ホールで天野さんとの対談付きの落語会をしたことがきっかけで、共著「話の後始末」という本も出してくださいました。

 そのあとがきが素晴らしかった。

 私の落語のマクラを「いつもいまを呼吸している」とほめてくださり、「芸人は、この世で最も生きのいいジャーナリストでなければいけない」と激励してくださいました。なぜなら、「主に江戸が舞台である落語は世にもおかしな宙づりの世界。この世界に入っていくためにはマクラという助走路が必要なのだ」と。

 で、「この本は志の輔さんとの世間話である」と。

 ここで天野さんは、「いま、世の中から世間話がなくなってしまっている」と嘆き、「いっとき、テレビのワイドショーが世間話の場になっていたように見えている時期もあったけれども、いまはワイドショーからは世間話が見えなくなった」と。

 「人と人は世間話でつながっているんじゃないかと思っているぼくにとってこれはユユしき事態である。やっぱり世間話は、サイコーのヒマつぶしであり、究極のレジャーであって、それがない世の中はひどくギスギスしたものになってしまうと思うのだ」と書き、最後をこう締めくくられています。

 「またどこかで会って、世間話をしましょう」

 今年三回忌を迎える師匠談志とも、今ごろ世間話をされていることでしょう。

 ヨッ、最高の御隠居!

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by woody-goody | 2013-10-25 16:53 | 芸能

輝ける「かがやき」に

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 私も弟子に名前をつけるのに苦労していますが、ネーミングってほんと難しいですね。

 自身、師匠談志から「志の輔」という名前をもらったとき、えっ、と思うくらい違和感がありました。

 これで一生いくのか?と、喜びより不安の方が大きかったのです。

 若いお客様がくださったアンケートの中には「『しのほ』ですか?」というのもあったくらい。「輔」は読めない。たまたま永六輔先生がいらしたので「永先生のスケです」と説明できたから助かりましたが。

 明石家さんまさんも、師匠から「お前は、さんま」と芸名を告げられたとき、芸人やめようかと思ったそうです。

 それが今では、ご存じの通り。

 つまり、名前は本人がつくるものです。

 2015年、私の故郷富山県の悲願「北陸新幹線」がいよいよ開通の運びとなりました。

 私も、さまざまなイベントに出演を依頼され、盛り上がりの一助を担う予定ですが、この車両のネーミングが「かがやき」に決まりました。

 これが思わぬ論議を呼んでいるそうです。

 というのも、公募した名前の1位が「はくさん」なのに採用されなかったから。

 「加賀行き」をもじったんじゃないの、とか08年の「長野かがやき国体」と関係があるのかとか臆測が飛び、またこれは初めて知ったことなのですが鉄道のネーミングには格があるのだそうで、鳥の名前や天文事象が上の格なんだそうです。

 はくちょう、はやぶさ、つばめ、あけぼの、カシオペア、北斗星が思い浮かびます。

 その次の格は山、川の名前と続くそうな。

 落語「寿限無」は、子供がいい生涯を送れるよう、和尚から教えてもらった縁起のいい言葉を全部つけて長くなりすぎて困った話。

 今や、全国的に小学生がすらすら早口言葉のように言えるくらいに有名になりました。

 また、銀行の合併により、どちらの会社も名前を残したいがために、「三菱東京UFJ」など、なが〜い名前になってしまって、今に「寿限無」のように、全ての銀行名がプラスされてさらにながーくなったら、いっそ「銀行」という名前にしたらどう?というのは冗談で落語のマクラでしゃべっているのですが。

 さて、「かがやき」が本当に輝くかどうか、列車の魅力をいかにアピールできるか。決まった上は、フレー、フレー!

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by woody-goody | 2013-10-18 11:53 | 列島各地

東北の温かさ、地道さ

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 好きなテレビ番組の一つに「秘密のケンミンSHOW」があります。全国の県民気質を面白く紹介する番組で、全国を落語会で動いている私にとってとても重宝な番組でもあるのです。

 先日のテーマは「この県ではノリツッコミができるか?」というもの。

 ノリツッコミとは、ありえないことを相手から言われた場合、普通なら「それはないでしょう」と答えますが、それでは面白くないので一度、相手の会話に乗ったと見せかけて、その後、「それはないだろう」と相手にツッコミを入れるという二段構えの笑いの作法。

 笑いが二度とれるので、お笑いの方たちの間では常識になっている手法です。

 あ〜、こういうふうに説明すると急につまらなくなりますね。

 でも、これを実際にいろんな県で、道行く人に投げかけてみた様子が放送されていたのです。どういう方法で県民のノリツッコミ度を測るのか、これが時代に合って秀逸でした。

 記憶に頼っているので忠実に再現されてないことを初めにおわびいたします。

 ディレクターがまず「あなたと話したいという人と電話がつながっているんですが、出てもらえますか」

 OKの返事をもらうと、すかさずディレクターが手渡したもの。それは大きなナスビです。この瞬間の反応が千差万別。

 笑いの街、大阪はさすがなのです。

 渡された10人が10人、喜んでナスビを受け取り、携帯電話に出るように耳に当てて「はいはい、もしもし、私やけど」と電話に語りかけノッてボケたあと、絶妙な一拍があって「……って、あほかいな!」とツッコミが入るのです。一人ノリツッコミ。高度な笑いの技を普通の人がこなせる大阪、恐るべし。大阪のパネリストが言いました。「大阪では、これができんと生きていかれへん」

 沖縄では、「これはナスでしょう」とニコニコ。おおらかだなあ。

 さて、東北の場合。

 真顔で「なんだって? これで何しろって? 話すの? ナスビじゃできないでしょう?」

 その通りでございます。この真面目さ、地道さ、温かさが東北を、東京を、日本を支えてきたのです。

 去年に引き続き、気仙沼で「気仙沼寄席」を終え、いまだ熱い余韻に浸っています。

 糸井重里さんの「おもいやり」企画に、気仙沼の「おもてなし」心。

 たくさんの皆さん。ご来場、本当にありがとうございました。

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by woody-goody | 2013-10-11 12:31 | 列島各地

ノンジャンルな人たち

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 いつもはミュージカル公演で有名な赤坂ACTシアターで、落語「中村仲蔵」公演を行いました。

 「忠臣蔵」を題材にしたこの落語を、より深く理解していただくために前半では映像も使って忠臣蔵の全段を紹介するという試みの再演でした。そもそもミュージカルを前提に設計された広い空間なのに、終わってみればたった一人しか舞台にいないにもかかわらず、ギュッと凝縮され集中できて広さを感じなかったという多数の感想が寄せられました。照明、音響さんらスタッフの力もお借りして新たな落語の見せ方が提案できたかと思うと感無量です。

 落語ファンだけじゃない方々にも落語を見てもらいたい。この空間でどんなことができるのだろうと考えた結果の演出でした。

 私が赤坂で舞台を務めている頃、当然のことながら見に行けなくて残念だったのが、新宿での松元ヒロさん「ひとり立ち」公演。古くは新大久保の小さな会場で行われていた頃、師匠談志も私も出かけて、その笑いを交えた熱いトークに感動したものでした。言いたいことがある人は強い。

 現実の問題に真っ向から斬り込み、ためらいを見せながら奥底には強い信念。今までなかったヒロジャンルを作り上げたのです。

 このようにノンジャンルで頑張っている人たちがたくさんいます。

 鉄道ネタから人情もの、鋭い視点で時事ネタも過激なダメじゃん小出さん。鉄道ネタもあるけれど、東京タワーにスカイツリーの歌を作るかと思えば古い邦画に詳しく、決して大向こうをうならせない軽さが持ち味のスタンダップコミック・寒空はだかさん。学生服が似合いそうな風体で演歌を歌い継ぐカンカラ三線弾き歌いの岡大介さん。居酒屋に老人ホーム、大道で民謡からシャンソンまでアコーディオンを弾き歌う遠峰あこさん。渾身の思いを込めて野球、競馬、映画、芸人を「山田かたり」に昇華させた山田雅人さん。そして驚くべきは、女3人で笑いを続けているコントだるま食堂さん。なんと今年で26.5周年(笑)だそうで、「凹凹大回転」と銘打った公演が、なんといつも私が夏に「牡丹灯籠」公演を行っている下北沢の本多劇場で11月4日にあるとのこと。くだらなさ、ばかばかしさを女性が続けるその苦労をみじんも感じさせず、相変わらず「馬鹿だなあ」と思わせてくれる3人。女性が笑いを味方にしたら怖いものなしでしょう。

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by woody-goody | 2013-10-04 17:47 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


by woody-goody

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