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トルコに落語のルーツ?

 トルコと言えば今、暴動が起きていてそれどころじゃないのですが、私には行きたい理由があるのです。

 かつて、アジアとヨーロッパをつなぐイスタンブールを訪れた時のこと。とある劇場で、いろんな国から集まった人たちを、それぞれの母国語を駆使して笑わせた、あっぱれな話芸の達人を見たからなのです。

 それとは別に、このコラムで紹介したこともあるムズラック・ハリト君はトルコから大阪へ来て日本語の勉強をするうち「落語」に出会い、自ら日本語で落語をするようにもなり、ひょんなことで私と知り合い、私の落語会のゲストに出てもらったこともありました。

 その後、彼は大学院を卒業。トルコに帰り、先日こんなメールが届きました。

 「以前、志の輔さんの落語会にゲストで呼んでもらったことは、とてもうれしかった。その時のお礼と言ってはなんですが、トルコのメッダリクを聞きに来ませんか?」

 なんでも、手にハンカチと杖を持ち、極彩色のマントに山高帽という風体で一人語りをする人をメッダと呼び、その話芸をメッダリクと呼ぶそうです。

 演劇も禁止されている厳しいイスラム社会で、伝説や英雄の叙事詩のような古典は言うに及ばず、恋愛や時事ネタや流行を取り入れた新作、そこに風刺や毒も盛り込んで笑わせる伝統芸能なんだそうです。現在、これを演じる人は少なくなり、無形文化遺産に登録されているとか。

 ハリト君は、このメッダリクがシルクロードを経て中国、朝鮮から日本へ伝わったのが落語になったんじゃないかと研究し続けているのです。かつて、イスタンブールで見た男に、その伝統が引き継がれていたのかもしれません。

 メッダリクの一例をあげると……。

 同じ屋根の下に住む酒飲みのハサンとフセインがおりました。船で荷物や人を運ぶキツイ仕事の毎日。ある日、自殺を試み間違って船に落ちた娘を助けたハサンは恋に落ち、二人は幸せに暮らすようになりました。これを妬んだフセインが娘に嫌がらせをしているところを見つけたハサンはフセインを殺し、翌日、ここへ現れたスルタンが……。

 なんか落語の人情噺のようでしょう?

 連綿と継承されている落語と違ってメッダリクが減少した理由は、亭号もなく流派も師弟関係もなかったからじゃないか、とハリト君は言いました。

 だとするなら、落語界のシステム、よくできてるってことですね。

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by woody-goody | 2013-06-21 16:04 | 芸能

日本人初のトニー賞!

 携帯電話の音に画面を見れば「番号非通知」の文字。この場合、たいがいは海外からであることが多いのですが、はたしてやはり、米国と日本を行ったり来たりの川名康浩プロデューサーからの電話でした。

 低い沈んだ声に最初は悪い知らせかと一瞬心配で緊張しましたが、聞いてみればなんとなんと驚きのグッドニュースだったのです。

 喜びがあまりにも大きくなると、人って静かになるものだと、このとき実感いたしました。

 「私自身プロデューサーとして念願だったトニー賞を受賞することができました。いろいろサポートしてくれてありがとう」

 「え、今なんて言ったの!?」と、心の中で聞き返す私がいました。

 トニー賞! あのサウンド・オブ・ミュージックや屋根の上のヴァイオリン弾きやキャバレーやコーラスライン、レ・ミゼラブル、オペラ座の怪人、レント、ライオンキング、プロデューサーズ……、も受賞したトニー賞? 映画界で言えばアカデミー賞に匹敵する、あの?

 川名さんは、そのあと無言でした。この無言がすべてを語っていました。

 制作した「Kinky boots(キンキーブーツ)」が「第67回ミュージカル部門作品賞」を受賞したのです。

 その後の電話で知ったのですが、9日の授賞式の結果がネットで知らされるやいなや、全世界から観劇予約が殺到したそうです。

 授賞式では、楽曲賞を受賞したシンディ・ローパーさんが隣に座っていて、作品タイトルの「キ」の発音があったとたん、2人で跳び上がってハイタッチ。

 レッド・カーペットを歩いた際に世界のマイク・タイソンに足を踏まれ「これはきっといいことあるぞ」と、不思議な予感があったそうです。

 以前このコラムでもご紹介しましたが、実は川名さん、日本のミュージカル劇団で俳優を目指してはいたものの、どうも向いていない気がして一念発起、1993年にいきなり渡米、プロデューサーの道を歩き始めて20年。ついに快挙。8年前にブロードウェーを一緒に歩きながら、「いつかここで落語やろうよ」といってくれた人がトニー賞をとったとは夢のようです。

 来年には還暦を迎える私が、まだ一つ、いや二つぐらい夢を見てもいいのかもしれないな、と思わせてくれたニュースでした。川名さん、本当におめでとう!

 トニー賞授賞式の模様は6月25日、BSプレミアムで放送されるそうです。

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by woody-goody | 2013-06-14 16:58 | 芸能

「にほんごであそぼ」に

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 うれしいことがありました。NHKのEテレ「にほんごであそぼ」に出ることになったのです。

 柳家花緑さんの「子供のための寿限無」で落語のフレーズが子供たちの間で大人気になったり、野村萬斎さんが狂言の型を体で面白おかしく表現したり、神田山陽さんが勢いとわかりやすさで講談を広めたり、国本武春さんが、うなりやベベンという名前で浪曲の迫力を知らしめたり。日本の和の芸能をとても大切にしていて、その演出のレベルの高さにうなっていた番組なので、そこに出られるなんて。

 この番組のレギュラー出演者で、古い友人でもあるおおたか静流さんから声をかけてもらったのです。

 いやはや、その収録の楽しかったことと言ったら。

 おおたかさんが「落語の楽しさを子供に伝えたい」と、落語をテーマに自ら作詞作曲した「つもりのうた」や「出囃子」をつくってくれたのです。

 本当は好きな饅頭を、怖いから嫌いとうそをついて、意地悪な友達からまんまと饅頭をせしめる「饅頭こわい」。

 貧乏なので家具を買えない男が、絵が得意な知り合いに、がらんとした部屋の壁へ家具の絵を描いてもらったところ、そこに目の悪い泥棒が盗みに入り、途中でどれも絵だったことに気付き遊び心を発揮、「盗んだつもり」とパントマイムを始める「だくだく」。

 テレビで見ていたのと違い、実際に作られていく現場は、それはすごいものでした。

 緻密な台本、稽古、衣装、ヘアデザイン、メーク、セット。大人が真剣勝負でつくる子供番組の裏に、ただただ感動。

 振り付けのラッキィ池田さんと彩木エリさんのやさしさ、そして何よりも子供たちの天才ぶり!

 小学4年生のてるみ君、3年生のかいと君、2年生のまりちゃんの演技力、記憶力、礼儀正しさ、我慢強さ。

 私が何度もNGを連発、子供たちの足を引っ張って「本当にごめんなさい」。

 で、実は今だから告白するけど、みんなとほんの少し一緒に踊っただけなのに少し腰を痛めて治療に通っているのです。情けなや。

 でもそんなことより、君たちの笑顔の中で撮影できた、あの現場は私の宝です。これをきっかけに落語を好きになってくれたら、もっとうれしいけどね。

 ちなみに「饅頭こわい」の放送は28日、「だくだく」は9月20日。朝8時40分からですが、再放送もあるからね、大人のみなさん。

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by woody-goody | 2013-06-07 12:48 | 芸能


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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