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安部公房とわたし

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 1カ月間、どこへも行かずにずっと東京にいる恒例の1月が過ぎようとしています。楽屋に居続けの渋谷パルコ劇場公演も、8年目。

 まだこんなにあるのか、からもうこんだけしかないのか、に気持ちが変化する1カ月。

 今回も、新作を一席含めた全3席というプログラムですが、私が新作をつくるようになったきっかけは、本紙21日の夕刊でも紹介されていた、没後20年の作家、安部公房さんの存在があるのです。

 大学入学のために富山から上京、初めて見た演劇が、仲代達矢さんと山口果林さん出演、安部公房作「友達」だったのです。

 場所は、西武劇場。そう、今のパルコ劇場なのです。

 大学を卒業後に入った劇団の養成所の卒業公演も安部公房作「友達」。戯曲の意味がよくわからないまま演じた父親役。

 そして、落語家になって5年目、青山で安部公房作品の落語化という、とんでもないことを思いついたのです。

 ある日、玄関に「私は宇宙人なんですが」と若者が訪ねて来る「人間そっくり」と、ある日の夕方、いつものように会社から帰る道すがら、自分の体が、まるで毛糸がほつれていくように足下からほどけていく「赤い繭」の2席。

 面白い作品、ぜひ、読んでみてください。

 今もちゃんと理解したとは思っていないのですが、当時はもっとあやふやにしか安部公房の世界がつかめていなくて、ましてや文学作品を落語化するなどという無謀な試みがうまくいくはずもなく、多くのスタッフに迷惑をかけました。でも、でも、「志の輔らくご」が通らなければならなかった道だった、と思うのです。だって、あの不条理感を落語エンターテインメントとしてつくりあげられたとしたらすてきだとは思いませんか?

 いつかこの独特な世界を落語に入れ込めたらなあ、と。

 今回、落語家生活30周年を記念して、新作落語を中心に「志の輔らくご新作DVDボックス」を作りました。よくぞこれだけいろんな作品を作って来たなあ、と感慨ひとしお。でも、この裏には何十倍の失敗作品があるのです。成功へ導いてくれたこれらの愛しい作品群は陰の功労者。そっか、今度、失敗作品を集めてDVD作っちゃおうかなあ。自分のために。

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by woody-goody | 2013-01-25 12:17 | 社会

スタッドレス装備を

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 いよいよ今日からパルコ1カ月公演、後半のスタートです。

 先日の成人の日は、あの大雪の中、はたしてお客様、お越しいただけるのだろうかという心配をよそに、ほとんどの方がそろってくださり、本当にありがとうございました。

 落語のマクラでよく言う事ですが、私ら、お客様がいなければ、ぶつぶつ言うただの変な人ですから。

 中には、交通機関の遅れで途中入場の方もいらしたのですが、その方々はロビーのテレビモニターで最初の一席をご覧いただいたようで。

 若干の来られなかった方々には、この日が休演日だったらよかったのに、と天候を恨めしく思ったことでした。

 終演後、スタッフが驚き感謝して言うには、公演に支障が出るようなクレームが一つも出なかったこと。

 ここに、主催者、演者とも厚くお礼申し上げます。

 現時点では、今回の公演内容をテレビ放送する予定は組まれておりませんが、この雪のトラブルもあったため、なるべく放送できるようにしたいと思っています。

 その際はこのコラムでお知らせいたしますので、よろしくお願いいたします。

 それにしても思うのは、都会の方々が雪道でよく転ぶこと。

 富山出身の私は、たとえ革靴で歩いていてツルンと滑ったとしても、空中でみごとに体勢を整え、着地ができます。えへん。

 「ああ、やっぱり俺には雪国富山の血が流れているんだな」と納得。

 富山の友達は電話で言います。

 「はっきり言って、あれぐらいの積雪で、あの道路マヒは異常だね。スタッドレスタイヤ、履いてないんじゃないの?」

 言われてみればそうです。12月になったら、雪が降ろうが降るまいが、都会はスタッドレスタイヤに履き替えると決めますかね。

 JAFにいつもの4倍の出動要請があったといいます。たった1台、ノーマルタイヤの車が横滑りしても道路は大渋滞になるのですから。

 痛い目にあったいま、この熱が冷めないうちに、自家用車をお持ちの方はぜひスタッドレスタイヤのご用意を! 私の車は12月になると必ずスタッドレスです。

 もちろん、人間用に雪道用の長靴も買いますとも、すぐに。

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by woody-goody | 2013-01-18 18:32 | 社会

暦の歴史残す印刷物

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 あけましておめでとうの年賀状から、寒中お見舞いはがきを受け取るこのごろ。パルコ1カ月正月公演も8年目に入り、連日、渋谷で落語をしゃべっております。

 毎年新作を作るにあたってなんともうれしいのは、毎回、新しい出会いがあることです。

 一昨年は、偶然出会った千葉県香取市佐原にある「伊能忠敬記念館」のご協力を得て、4年越しで「大河への道」ができ、今年は、墨田区横網にある「新藤ギャラリー」のお世話になりました。

 いま私たちが普通に使っているカレンダーが、明日から変わる、となったらいったいどうなることでしょう。

 いつもやってくる12月がなくなっちゃったら。

 そんな暴挙がかつて日本で断行されたのです。

 明治5年に政府が改暦を発表、当時のてんやわんやをなんとか落語にできないものだろうかと思ったのです。

 その際、もし、当時の「旧暦」と「新暦」の現物があれば、話に信ぴょう性が出て面白さが倍増するんじゃないかと。

 調べるとありました。

 80年以上、製版と印刷を仕事にしてきた株式会社新藤コーポレーションさん。常に時代に先駆け、先進技術に取り組んできたこの会社の「新藤ギャラリー」が、区がすすめる「小さな博物館運動」に参加、そこに現物があったのです。

 世界最古の印刷物として知られる「百万塔陀羅尼 木製三重小塔」とその経文をはじめ、印刷機・版画絵など“印刷”にまつわる貴重な品々約30点を展示しているこのギャラリー。

 改暦のタイミングに発行された福沢諭吉の「改暦弁」も所有されており、社長さんから話を伺うことができました。

 印刷の原点を追求するうち、印刷の歴史を後世に伝えるために、昔の暦もなくてはならないものだと、古書店や骨董市に足を運び、長い間かけて集めたのだそうです。

 このおかげで今回の新作落語ができました。この場を借りてあらためてお礼を申し上げます。

 パルコ公演にお越しになれなかった方も、ぜひ「新藤ギャラリー」に足を運んでみてください。

 みんなで同じ「とき」を共有できている暦のおかげで、いかに物事がスムーズに進んでいることか。

 民間にもすごい博物館があるんですね。

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by woody-goody | 2013-01-11 18:23 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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