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ビートルズ、我が青春

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 高校時代、私はミュージシャンになりたいと思っていました。

 夢見る時代でした。

 今から思うと理解不能でしょうが、ギターを持つと不良になると固く信じられていた時代。

 ギターを買ってもらうなんてとんでもないこと。

 しかたがないのでアルバイトをして自力で入手したギターは、それはそれは輝いて見えました。

 そうまでしたのは、なんと言ってもビートルズ、なにはなくともビートルズ。

 私にとって、ビートルズがない青春時代なんて考えられません。

 こんな若者が日本に、世界に星の数ほど存在していた時代でした。

 そんな私のような人たちが集まったのは、渋谷駅前に新しくできたヒカリエ11階にある東急シアターオーブという劇場。

 もう終わってしまった公演のことを新聞に書いていいものかどうか迷いながら、すでに書いてしまっているわけですが、私が感動した「レイン」はビートルズ完全コピーバンドの舞台で、ブロードウェーでロングラン上演の日本上陸版です。

 2000人の観客とともに、ビートルズの楽曲の素晴らしさに再感動、切れ切れに覚えている英語の歌詞を口ずさみながら幸せな時間を過ごすことができました。

 観客は一人一人、あの時代の自分を振り返り、あのころの時間に浸っていたことでしょう。

 あまりによかったので、23歳になるわが息子に別の日に行くようすすめ、見た後「どうだった?」と尋ねてみました。「よかったよ、う〜ん」と、手放しで感動したわけでもない微妙な様子。

 いつもなら、「なんで、ビートルズのよさがわからないんだ」とむっとするところなのですが、私は「そうか、時代が違うものな」と父親らしく落ち着いて答えたのでした。逆に、ビートルズは俺のもんだ、俺の中で不滅だ、という感慨を深くしたのです。

 息子は正直です。それでいいのだと思いました。

 親ばかを承知で言えば、かなり感性は豊かだと思っている息子だけれど、親と同じに感動するわけがない。

 違う時代に生まれ育ったのだから。

 その落差に、かえって安心した不思議な感覚を味わいました。不思議どころかかすかな喜びすらわきあがってきたのはなぜなんでしょう。

 時代の差を喜べる年になったのでしょうか。

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by woody-goody | 2012-11-30 12:38 | 芸能

師匠談志の一周忌

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 もう1年になるのですね、師匠談志がこの世を去ってから。

 21日から弟子総出演で「立川談志一周忌特別公演立川流追善落語会」が開かれています。

 世間は選挙で一色、と言いたいところですが、政党乱立で、いま一つ盛り上がっていないような。

 政治家にもなったぐらいに政治が大好きだった師匠なら「なんだいこりゃ、こんなにあったら選べないだろ。間に立川流も入れといてもわからねえだろうな。何票入るか楽しみだ」とでも言いそうです。

 思い出します30年前。入門3カ月した頃でした。

 師匠が親しくしている神奈川県の県会議員だったかの選挙応援について行ったことがあります。

 「志の輔、ついてこい」

 そう言った背広姿の師匠はさっそうとしていて素敵でした。裾の広がったベルボトムのズボンだったのには驚きましたが。

 選挙カーの後部座席に師匠と女性アナウンス係。そのまた後部座席に私。

 「東京から立川談志師匠も応援に駆けつけてくださいました」

 アナウンス係のしゃべりの間を縫いながら師匠は、窓から体を乗り出してマイク片手に「あ、談志でございます。神奈川の皆様、立川談志でございます。この候補はね、信用できます、1票入れていいです!」。

 そんなことをしばらく続けるうち、師匠はアナウンス係に「あんた疲れたろ、少し休みな。志の輔、お前、やれ!」。

 やりましたとも。

 師匠と私が交互にしゃべっているうち、師匠は言いました。

 「志の輔、いいか、俺の言葉と重ねるな。いいか、俺がしゃべり始めたら、途中でも、やめろ、いいな。言葉が重なると汚いんだ」

 話芸のコンビネーションのテクニックを伝授してくれる師匠。

 そのうちアドリブも入れるようになって来た私。「そちらのおじいちゃんおばあちゃんも、きたる投票日には……」とやってると「ばか野郎、志の輔、選挙期間中はどんなに年とってても、おとうさんおかあさんなんだ。選挙期間中だけは、じいさんばあさんはこの世にはいねえんだ」。

 これ、マイクのスイッチが入ってたもんだから運転手も通行人も大笑い。

 この1年、全国を独演会でまわりましたが、打ち上げで出てくるのは師匠談志の話ばかり。いったい誰の独演会だったの、と思うくらい。おかげさまで生前よりそばにいたような気がした追悼の1年でした。

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by woody-goody | 2012-11-26 11:44 | 芸能

森光子さんに感謝

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 今や、NHKの長寿番組になった「ためしてガッテン!」ですが、科学健康番組として始まった当初、司会としてどんな具合にすすめればいいのか、迷うことの多い日々でした。

 楽屋で着替えながら、初めて会う方々に司会者としてどう話をふればいいのか、かたすぎてもいけない、やわらかすぎてもいけない、その案配を決めかねる緊張の時間を過ごしていると、楽屋のドアをトントンとノックする音。

 たぶん弟子だろうと「あいよ」と返事をしながら開けると、なんとそこに森光子さんが立っていらしたのです。

 いやはや驚いたのなんの。どう考えたって、あちらはゲスト、しかも大女優さん。こちらからごあいさつにうかがうのが筋です。ひたすら恐縮してしまって頭を下げるしかありませんでした。

 初めて目にした森光子さんの第一印象は、ほんとにきれいな人!

 オーラという言葉が陳腐に思えるほど、体全体から日本の美と存在感がにじみ出ていました。

 そんな森さんに番組の初代レギュラーゲストとして2年間に100回近くお越しいただいたのです。

 毎週毎週、今度こそこちらから先にごあいさつを、と思いながら、ほとんどは森さんが先にという結果になってしまいました。

 気遣い、心配りの塊、心底からの思いやりが身についてらしたのです。

 2000回以上続いた「放浪記」を見せていただいたときも、マネジャーさんから休憩時間に楽屋へどうぞと誘っていただき、訪ねると、舞台のあのパワーがこの小さな体のどこに蓄えられているんだろうと思わせるほどのか細さ。かわいらしいピンクのガウンに包まれた大女優は疲れも見せず一人一人に丁寧にごあいさつされるのです。マネジャーに、どうして終演後じゃなく休憩中に?と尋ねると、すべての方とゆっくりお話がしたいので終演後だけだとごあいさつに訪れる方が多過ぎて間に合わないからとのことでした。

 森さんは喜劇役者としても素晴らしい方でしたが、ダジャレも大好きで「さて、森さん、今週のテーマは野菜なんですが」「あのね、わたし野菜大好きですよ、名前が森ですからね、モリモリ食べるのよ」。リアクションに困る私。大笑いのスタジオ。毎回森さんの緊張をほぐしてやろう、という気遣いに感謝がいっぱいです。

 もう一度お会いしてお礼が言いたかった。ありがとうございました。

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by woody-goody | 2012-11-16 11:39 | 芸能

心あたたか奄美時間

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 先日、生まれて初めて奄美大島に行って来ました。

 羽田から1日1便しか出ない直行便に乗って2時間半、人口6万人の島。気温が東京と違うのはあたりまえですが、風も違う、人も違う、厳密に言うなら沖縄とも違う、それはそれは穏やかな時間が流れていました。

 主催者の方が「ケイハンでも食べられますか?」。

 「は? ケイハン? ええ、喜んでいただきますよ」

 ケイハン、なんだろう、わからないながらも楽しみに店に入ると、5分もしないうちに出て来たのは、鶏飯。ニワトリから出ただしでつくったあつあつのスープを、シンプルな具をのせた御飯にかけて食べるのです。いわば、お茶漬けのようなもの。これがうまいのなんの。

 田中一村という孤高の画家の記念館では、館長になった元NHKキャスターの宮崎緑さんに解説してもらい、なんとぜいたくな時間。

 たった2日しかいませんでしたが、感想を一言で言うなら「人が親切」に尽きます。

 帰りの空港レストランでは、こんなことがありました。

 おじいさんが一人テーブルに座っていました。注文を聞いたウェートレスと違う女性がやってきて言うには「お客様、どこ行きの飛行機にお乗りですか?」「喜界島だよ」とおじいさん。「いまご注文されたのですと出発までに食べきれないと思いますよ。違うものにされますか? やめられますか?」。判断できないおじいさん。

 「少ししたらまた来ますね」とその女性は去り、またやって来ましたが、新たな注文は決まっていません。そこでまた別のお姉さんがいなくなったと思ったら航空会社のカウンターのお姉さんを連れて来ました。

 そしてそのお姉さんは言いました。

 「お客様、今から注文されても間に合わないと思いますよ。そろそろ行きましょう」とおじいさんの体を支えるように店を出て行きました。

 知り合いでも親類でもないのに、心の底から心配の風情。久しぶりに「人の会話」を聞いた気がしました。

 送りに来てくれた主催者が「昨日の落語会に来たお客様が、久しぶりに泣き笑いしたとおっしゃってましたよ」と言ってくれましたが、こちらはこちらで、そこかしこで心あたたまるシーンを見せてもらっていい思いをした奄美時間でした。

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by woody-goody | 2012-11-09 12:11 | 列島各地

五七五の川柳ごころ

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 十五夜の満月を見上げる余裕もないままに、秋から冬へ。

 ゆとりのない暮らしをしてるよなあ、とつくづく自戒の日々です。

 旅先のホテルでテレビをつけると、さだまさしさんが生放送ではがきを読みながら軽いおしゃべり。

 あいかわらず面白くて笑っていると、歌手の元シャネルズ鈴木雅之さんがスタジオに現れ、さださんからプレゼントされた「十三夜」を歌い始めました。

 この曲を作った経緯を、さださんが話しました。

 十五夜は満月、満ち満ちた状態なので、あとは欠けていくだけという切なさが残ります。

 でも十三夜はあと一息で満つるという期待感があり、それでこの曲をつくったということでした。

 沁みました。

 こういう話も思い出しました。

 松尾芭蕉が旅の途中、村の人たちが集まって句会を開いてるところに遭遇しました。

 ころは中秋の名月。

 空にはまあるいお月さま。

 芭蕉をそれと知らない村人が誘いました。

 「ああ、そこの旅のじいさん、あんたもよかったら一句ひねってみたらよかんべ」

 短冊を受け取った芭蕉は書き出しました。

 「三日月の」

 これを見た村人は大笑い。

 満月なのに三日月だってよ、俳句も知らないんだからしょうがないよなあ、とばかりに。

 その後に続いたのは「頃より待ちし 今宵かな」

 これを見た全員、ううむとうなり、座を正し、こんないい句をつくるあなたはいったい何者?と問い、最後に「芭蕉」と書かれたのを見て、さもありなん、とまたまたうなったというなんとも痛快な話。

 そんなことがあったからでしょう、本屋でふと手に取ったのは「シルバー川柳」というかわいい本でした。

 表紙を飾っているのは

 「誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ」

 もうこれで十分というくらい笑わせてもらいました。帯には

 「恋かなと 思っていたら 不整脈」

 「万歩計 半分以上 探しもの」

 「お迎えは どこから来るのと 孫が聞く」

 お金のかからない川柳、五七五の心を養いたいものです。

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by woody-goody | 2012-11-02 14:18 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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