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動物がぶつぶつ

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 私の高座を20年間撮り続けてくれているカメラマンがいます。

 橘蓮二さん。

 師匠談志も撮られた自分を見て「これが、俺か!」という名言を吐きました。

 私も、自分のワンカットを見ただけで、どんな感情で何をしゃべっていたか、お客さんがどうだったか、フラッシュバックのようにその「とき」を思い出すんです。

 なので、橘蓮二さんは見事な高座写真を撮影する人と決めつけていました。

 ところが、事務所に届いた「どうぶつぶつ」(PARCO出版)という小型の本を見てびっくり。

 動物がぶつぶつつぶやいている写真集。

 いま、ツイッターで人間が毎日膨大な量をつぶやいてるとは知っていましたが、動物もこんなにつぶやいてるとはね。

 種明かしをすると、こちらをじっとみつめるさまざまな動物に吹き出しがついていて、そのセリフを、あのリリー・フランキーさんがつけているという写真集。

 これが、ぷっと噴き出す面白さ。

よくこんなこと思いついたなあ、と聞いてみれば、本の裏表紙に載ってるニホンツキノワグマと動物園で目があったのがきっかけだそうです。まるで人間のオッサンが酔っぱらって語りかけているかのようなクマ。ついたセリフが「あれ!? おい! あれ、江頭じゃね?」。

 一番困ったのはほとんど寝てて目線をこちらにくれないコアラ。ぼーとした姿で木にしがみつきながら「結局、会社に泊まっちゃったよー……」。

 真夏の神戸の動物園では、冷房のきいた部屋で悠々遊ぶレッサーパンダを撮影しながらシャッターチャンスを待って日射病になりかけたそうな。

 「ほーら。言わんこっちゃない」のセリフ、似合いすぎだろが。

 落語に救われたと言う橘蓮二さん、今度はひらがなのたちばなれんじとして動物写真集。

 対象物は違っても、被写体に対する愛情と敬意は失わないその姿勢が写真に写っています。

 写ってるのは落語家でもなく、動物でもなく、橘蓮二であり、たちばなれんじなんですね。

 なにかといらだつことの多い日々に、ページをめくれば、きっと動物たちに笑っていやされることでしょう。大切な方に、秋のプレゼントに最適な本です。

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by woody-goody | 2012-09-28 15:46 | 社会

食いしばらない秋

 先日、歯医者で言われました。

 「歯がすり減っています。よほど歯ぎしりがすごいんですね」

 マウスピースを作ってもらい、睡眠中の食いしばりを予防することにしました。

 しかし、小さい頃から、寝てる間はともかく、「歯を食いしばって頑張れ」と言われ続けてきたので、当然、食いしばった方が力が出るのだと思っていました。

 ところがです!

 歯を食いしばる行為を専門用語ではクレンチングと呼ぶそうですが、この行為は本来の力を制御する方向に働くのだそうです。

 うそ!

 信じられずにあれこれ調べてみました。

 人がスポーツや重い物を持ち上げる時、困難な状況から抜け出そうとするときに知らず知らず歯を食いしばっているのは、ストレスにさらされたときに起こる「攻撃や逃避反応」の一部であり、交感神経の過剰な働きによるものなのだそうです。

 食いしばりによるあごへの圧迫は、身体に必要以上の緊張やストレスを与え、驚くべきことに「注意力散漫や集中力の阻害」の原因にもなっているらしいのです。

 ええーっ!

 ここで思い当たったのはゴルフ。歯を食いしばり、ここ一打を決めるべく、集中力を高め、1mmたりともずれないスイングを狙い、その結果、ボールは無残なカーブを描き、最大級の落ち込みを体験し続けてきました。

 「そうか、歯を食いしばってはいけなかったのか」

 私の常識が180度変わりました。

 そして、先日のこと、これを頭にしっかり叩き込み、上下の歯をわざと合わせないようにして、スイングしてみました。

 と、うまく力が抜けて、いいスイングができたのです。気持ちがよかった。

 聞くところによると、この理論に基づいたマウスピースも発売されているとか。

 なんでもあるね。

 マウスピースだのみというのも、なんだかなあ、と言う気もしますが。

 近ごろ、さすがに秋の気配が漂ってきました。

 落語の季節です。

 かなり多くの高座が待ち受けています。

 歯を食いしばらず、適度に頑張ることにいたします。
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by woody-goody | 2012-09-21 11:58 | 社会

浦安、目黒、気仙沼

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 私の落語会で欠かせない出囃子(でばやし)の方たちとの付き合いは、もう10年にもなります。

 長唄三味線の方々です。

 その中の一人が千葉県浦安市美浜に住んでいる女性の名取さんです。

 浦安、と聞いただけで「液状化現象、大変だったでしょう」と気付く方も多いはず。

 彼女いわく、液状化現象で、自宅は26度も傾いて、水は出ないわ、当然のことながらトイレは使えず、仮設トイレもあふれんばかり。ならばと、トイレをホテルに借りに行く。すると宿泊客に限ります、と言われてあきれたり、一方、その近くの別のホテルでは、本当に丁寧な対応で貸してくれたそうです。しかも、作業着の男性がロビーのソファでぐったり寝ていても、そっとしておいてくれたそうで、非常事態での対応のあまりの違いに驚いた、と。

 困っているときに、あたたかく接してくれたこのホテルには、いくら感謝してもし足りない、と彼女は目をうるませて言いました。

 現在の浦安の道路は、いまもつぎはぎだらけ。

 もともと埋め立てて平らにつくった街なので、地面の下が空洞化して危険ということで閉鎖になった公園もあるそうです。

 通りすがりに見えるのはなんとか傾きを直した家、まだまだそこまでいかず傾いたままの家、くずれた門扉や外壁。

 そもそも液状化の専門家は日本には数えるほどしかいないそうで、いったいこの土地はこれからどうなるのか、不安を抱えくすみがちになる街の人たち。

 そこで、せめて笑顔をいっときでも、と言う彼女とともに、「浦安市民だけの落語会」を企画しました。

 すぐに実現に向けて市役所に相談をもちかけ、とんとん拍子にことが運んだのです。

 思いは届き、1000人以上のあふれんばかりの笑顔に喜ぶ彼女。

 話は変わりますが、今度の日曜日には「目黒のさんま祭」も行われます。

 今年3月に気仙沼で開催された、糸井重里ほぼ日新聞共催の「目黒のさんま寄席」には全国から1000人の観客が訪れ、その収益金が、今回のさんま祭開催の一助にもなったようです。

 気仙沼パワーを後押しする気持ちで、ぜひお出かけくださいませ。

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by woody-goody | 2012-09-14 13:00 | 列島各地

うれしい一言

 今年で落語家生活30年を迎え、全国の各地で続けている落語会も、軒並み10回を数えるまでになりました。

 楽屋でネタ帳を広げながら「この年にこの落語をやってたのか、そうか、この年はあの事件が起きていたからだな」と当時のマクラも思い出しながら、緊張の中にも、その日の演目を決める楽しい時間が流れます。

 先週行ったばかりの新潟県民ホールでの会は、地元の音楽プロモーターが落語も扱いたいと始めた会で、はや5年目に入りました。

 思い起こせば、最初の年のアナウンスはこうでした。

 「お客様にお願いがございます。会場内での飲食、ならびに許可のない撮影・録音は堅くお断りいたします」

 ここまではよくある普通のアナウンス。これに続いたのが「公演中に、椅子の上に立ち上がったり、ステージに駆け上がったりなどの行為がありますと、公演を中止することがございます」でした。

 楽屋で聞いていた私は、久しぶりに死ぬほど笑いました。ロックのコンサートじゃないんだからさ。

 音楽コンサートを中心にやってきたプロモーターが、初めて落語を開催したからこそ起こったアナウンスのハプニングでした。

 あれから5年。ここの公演のうれしいことのひとつは、楽屋のお弁当です。

 楽屋にはおかずしかありません。実は、楽屋の外のテーブルに、御飯とみそ汁がたっぷり入ったジャーと鍋があるのです。せめて暖かいものを、というありがたい配慮を毎回続けてくれているのです。

 それよりなにより今回、もっとうれしいことがありました。会場の照明さんの一言。

 「やっぱり落語の照明は一番むずかしいですね」

 全国のあらゆるホールを回ったと自負している私にとって、当初、落語の音響と照明にあまり注意が払われてこなかったことは本当にさみしいことでした。

 座布団に一人ぽつんと座ってする話芸。照明も音響も簡単だと思われてもしょうがない。今まで講演会の照明は何度もやってきてるし、その座るバージョンでしょ?と思われるのも無理からぬこと。

 が、何度も一緒に舞台を作り続けるうちに、実は落語の明かりと音が、一番やっかいでむずかしい、とわかってもらえたようなのです。

 これを知らせたくて全国を回っていたと言っても過言じゃない、そんな30年でもあったわけです。

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by woody-goody | 2012-09-07 17:10 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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