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「サラリーマンNEO」に

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 以前から大ファンで、DVDも全て持ってるぐらいに好きなNHKの番組「サラリーマンNEO」に出演することになりました。

 間や画面のカット割りも十分に計算した上で練り上げられている、とても上質なコント番組で、ことあるごとに大好きな番組だ、とあちこちでしゃべっていたら、ついにプロデューサーさんから「出てみませんか?」と。

 好きではあるけれど、自分が出る側になっても何もできないことはわかりきってるので丁重にお断りしようと思っていたのですが、心の声がささやきました。

 「もし出演できたら、一生の自慢の種かもよ」

 演出家の方からは「大丈夫ですよ、心配しないで」とあたたかく励まされ、こうなったら、生瀬さんをはじめとした大好きな役者さんたちの胸を借りてやるしかないかと覚悟を決め、台本を広げたものの、なんということでしょう、台詞が覚えられないのです。台詞の数じゃないのです。長さでもないのです。演じるのは、会議室で論争する5人のうちの、一番年上の役。ものの3,4分のコントなのに、短い台詞なのに。

 日ごろ、落語会を終えると、いろんなお客様が楽屋にやって来ます。「いやあ、よかったよ!」と豪快に笑い飛ばす人あり、言葉を探しあぐね、もじもじしてる可愛い顔あり、差し入れの酒やお菓子がいかにうまいか、入手が困難かをしゃべり続けるセールスマンのような人あり、その多彩さは見てて飽きません。

 自分が舞台を見に行ったときも、どう感想を言えばいいものか悩むのでお互い様といったところです。

 そんな中、よくあるのが「あんなに長い落語をよく覚えられましたねえ」という質問のような感想です。

 はっきり言って、私は短期の記憶には自信があります。落語の場合は、たとえ1時間半にわたる落語でも、短期の記憶を、繰り返し繰り返ししているうち長期の記憶として脳の中に保存されていくのです。

 ところが、コントとか芝居とかいうものは、相手があるからなのか、作家さんが作った台詞だからなのか、とにかく覚えられないのです。

 こんなにも不安で、夜も眠れずハラハラドキドキの仕事は久しぶり。

 いよいよ今日これから収録に行ってまいります。どうなりますことやら。ご期待ください。

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by woody-goody | 2012-04-27 12:09 | 社会

70%は「かなり」

 テレビを見ながら22歳の息子がぼそっと言いました。

 「ねえ、地震が起きる確率が70%ってどういうこと?」

 酒を飲みながら一緒に画面を眺めていた私は「なんだって?」と一瞬酔いが冷めました。

 ニュースは続けて「首都東京にマグニチュード7.3の地震が起きると、従来の想定を3000人以上、上回る9600人の死者が出るとの報告書をまとめた」と重々しく伝えています。

 おそらく近い将来、間違いなく来るであろう大地震。それに備えるための情報には違いないのですが、あまりの息子の素朴な質問にとっさに「来る確率は高いから、気をつけろよ、ってことだ」と父親としてなんの威厳もない答え。

 翌朝、落語会にもよく来てくださる、テレビでもおなじみの数学者、秋山仁先生に電話をかけました。

 まだ起きたばかりでぼんやり気味の先生は、やはり私と同じく「なんだって?」と一瞬、聞き返されました。

 また馬鹿な落語家が変なことを聞いてきたな、と思っているらしい気配が電話のこちらに伝わってきます。

 以前にも、微分積分ってなんの役にも立たない、なんで高校であんなに時間を使って習わなきゃいけないのか、という質問に対して、たとえば車が行き交う道路を走って渡る場合に微積分を使ってるんです、と一例をあげ、実生活で役に立ってることを懇切丁寧に証明してもらったことがあったものですから。

 しばらくあって先生は「うーん、つまりね、70%だから、かなりの確率で来るぞ、ってことですわ」。わー、私が息子に答えたのとおんなじだー。

 このあと、Σをはじめとする数学の専門用語を使っていろんなことを説明してくださいましたが、私の頭はそれらを右から左に聞き流し、残ったのは「70%って、かなりってことなんだ」だけでした。

 専門家がたとえどんなに貴重なデータを出したとしても、それを読み解く力がなければどうしようもない。人は信じたいことしか信じないと言われるとおり、思うのは、できれば30%の方であってほしい、せめて風呂とトイレに入ってるとき以外であってほしい、などなど。

 70%用の備えと90%用の備えに違いはなく、当事者としては来るか来ないか、常に50%の確率です。

 データをそれぞれがどう使うか、あなたの備えは、何%ですか?

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by woody-goody | 2012-04-20 12:36 | 社会

驚きニュースの頭山

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 昨日の新聞には、驚きっぱなしで、もうもう、何をどう考えればいいのか頭の中がぐちゃぐちゃになりました。

 スポーツ紙に、私を含めて演芸人があまりにもお世話になっている高田文夫先生が緊急入院のニュース。嘘!という言葉がまず口から出ました。たしかに、ここのところ超忙しいスケジュールであったことは確かですが、いまのところ、詳しい事情がよくわからず呆然、というのが正直なところです。一日も早い復帰を願うばかりです。

 そんな身近でショックなニュースの一方で、スマトラ沖地震、2004年にあったばかりの、100年に一度、1000年に一度の大地震がこんな頻繁にあっていいのか。よくないと言っても起こっている事実は消えません。

 その記事のそばには、「震災悪質商法3万件」の見出しが。弱みに付け込んでなんでも考える人がいるものです。「被災された方への特別支援キャンペーンです」とか「被災者支援の広告を出してもらいたい」という電話が突然かかってきて、被災地の高齢者を中心に詐欺商法が行われているのだとか。

 あいた口がふさがらず、あんぐりあいたまま。

 あけたまま思うのは、北朝鮮のミサイル打ち上げ。どう気をつければいいのか、ただただビクビクするしかない実況中継に怒りもこみ上げてきて。

 この前の日曜日には、沖縄の那覇で一年ぶりの独演会。パトリオットの配備が伝えられる中、スタッフは「なんでこんなことに神経を使わなければならないのか」と怒り心頭。旅行者のキャンセルも出ているらしく、そんなところにまで影響が、と驚いたと思ったら、野田総理と自民党谷垣総裁の党首会談の無内容に、またまた口あんぐり。東日本大震災の復興をどうするか、原発をどうするか、あげればきりがない問題山積みなのに、相手の言葉尻を指摘しながら「消費税の問題に待ったをした」だの、「待ったのはそっちだ」だの、子供の喧嘩か。時間つぶしの会談。本当に日本は大丈夫か。

 思わず、落語「あたま山」が浮かびました。

 頭の上に桜が咲いて、花見客がどんちゃん騒ぐ、あまりにうるさいので桜の木を引っこ抜いたらその後に大きな穴があき、そこに雨が降って水がたまり池になり、今度は釣り人がわんさか来てまた大騒ぎ。ほとほと嫌になった男は、自分の頭の池に身を投げて死んだとさ。

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by woody-goody | 2012-04-13 12:05 | 社会

底力

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 台風でもないのにあんな気象状態が存在するんだと思い知らされた一昨々日でした。

 その名も爆弾低気圧。「爆発的に発達する」ことから名付けられたとされる温帯低気圧。

 でも「『爆弾』という表現は不快感を与える」というので、気象用語として正式に認められてはいないようですが、あちこちで起きた甚大な被害を思うとき、確かに爆弾並みの怖さだったと思い知りました。

 ところが、2〜3日前からテレビ画面で「爆弾低気圧」という言葉を何度聞いても、私には、ピンときていませんでした。

 恐怖よりも滑稽な感じをそこに感じてしまっていたのです。

 今や、ミサイル、津波、地震、濃縮ウラン、原発、などがより恐ろしい言葉として広まっている中で、爆弾は時代錯誤で現実味が感じられなかったのです。それはなぜだろうと考えると、きっと、爆弾という2文字が使い古された言葉になっているからでしょう。政治家の爆弾発言が報じられ、よくよく聞いてみると、実に中身のない内容で、爆弾でもなんでもなく、ただマスコミが面白おかしく騒いでるだけだった、ということもありました。

 爆弾という恐ろしい言葉が、あちこちで比喩として使われ過ぎて本来の意味が薄れ、まひしてしまっていたの
です。

 言葉は難しい。

 まるで逆のこともありました。

 春の選抜高校野球開会式の宮城県石巻工業高校、阿部翔人主将の宣誓が見事でした。

 画面を見ながら、ラジオを聴きながら、日本中が涙にあふれたのではないでしょうか。

 たった2分でしたが、後半部分「日本がひとつになり、その苦難を乗り越えることができれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じています。だからこそ、日本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔を。見せましょう、日本の底力、絆を」。

 この「見せましょう」にぐっときてしまいました。普通なら「見せます」「見せられるように頑張ります」でしょうが、とっさに口からついて出たのか練られた原稿なのか、この優しい言い方が胸にぐっと迫ってきたのです。選手の宣誓などという場で、使われなさそうな言回し。このミスマッチな感じが、ありがちな言葉をよみがえらせたのです。

 少々落ち込み気味の私も言います。近いうちに、見せましょう「新・志の輔らくご」。

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by woody-goody | 2012-04-06 12:57 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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