<   2011年 09月 ( 5 )   > この月の画像一覧

マツタケまみれの日

d0051179_19434216.jpg

 「打ち上げはマツタケのフルコースですよ」に魅かれて始めた「諏訪後山落語会」も隔年開催で7回目になりました。

 一昨年まではなんと携帯も入らなかった現在住人70人の村に、この日だけは、500人近い観客が落語会めざして駅から1時間かけて車で登って来るのです。

 入り組んだ山道のそこここにぶらさがっているのは落語会会場への案内ボード。一緒に私の大きな顔写真。まるで指名手配のポスターみたい。

 「マツタケ掘りをしてみませんか?」という主催者の初めてのお誘いにのり「やってみましょう!」とふたつ返事。

 これがなかなか大変な作業だったのです。

 シイタケならシイタケ菌を原木に植え付けて栽培されているわけですが、マツタケ菌は未だ発見されていないので、自然に生えているのを掘り出すしかないのです。

 マツタケの産地で有名になった後山では、山の一部をお金を払い契約して、偶然マツタケのあたり年にあたれば大もうけ、はずれれば損をするという、オーナーシステムのようなものもあるそうです。

 さて、スニーカーで出かけようとしたら「地下足袋をはいていかないと」と土地の人。

 山に入ってみるとその険しさになるほど地下足袋じゃなきゃ無理。

 単にキノコ採りと侮っていたことを深く反省しました。その上、マツタケはおいそれとはみつかりません。

 ガッカリムードが漂ってきた頃、案内をしてくれてる主催者が「なんとなく、このあたりにありそうな気配ですよ」とつぶやき、ふと見ると松の根方にものすごく大きいマツタケがポツンと生えているではありませんか。寄ってみるとまさしくマツタケの香り。土に指を深く突っ込み、マツタケを抜いて、できた穴はきちんと埋めておきます。後から生えるマツタケのためのエチケットだそうです。

 案内人のサジェスチョンを受けながら次々にマツタケを掘り出す私。気がつけば腰に下げているビクがいっぱいに。

 実は、主催者の方々が前日この山に入り、みつけたマツタケに目印の葉っぱをかぶせておいてくれたのだそうです。私はそれをキャーキャー言いながら、心の中では、こんなに確率よくみつけられるなんて私はマツタケ掘りの天才かもと思っていたんですが。

 さて、今年は当たり年なのかどうか、もう少しあと、季節の終わりに判明するそうです。


**********************************************

 公式サイト「しのすけコム」
 毎日新聞
 2005年5月以前の記事

 青石銘木店へ(このブログの制作者)
※このブログの制作にあたっては立川志の輔事務所(シノフィス)ならびに毎日新聞のご了承を頂いています。
[PR]
by woody-goody | 2011-09-30 19:45 | 体験

台風直撃落語会

d0051179_13111844.jpg

 来てくれちゃいました、台風15号が、下北沢の3日間独演会最終日に。楽屋にいる私の携帯には、「いま、新宿にいる。電車がストップ、間に合わない」「いま渋谷、これから歩いていく」「仕事がキャンセルになったので時間ができた、行けるようになったけどやりますよね?」と臨場感たっぷりなメールや電話が入ります。劇場では、朝のうちにかかってきた問い合わせの電話に「予定通りです」と答えたのが約30本ほど。

 それを聞いていた私は「遠いところから来る方は残念だけどしょうがないな、少しお客さんが減るのかな」くらいに思っていたところ、なんと400人満員予定の客席にお客さんが100人弱。

 ほとんどが空席というこの状態、ああああ!!

 落語家になりたての頃のライブを思い出しました。

 28年前、下北沢駅前ビルにある60人も入ればいっぱいの劇場で、毎週水曜日夜10時から1年間ライブを続けていました。

 落語はやらずにおしゃべりをという縛りを自分に課して続けました。

 満員になったのは1回目と最終回のみで、ほとんどが10人でこぼこ。自由席だったので、知り合いじゃないこの10人がばらばらに座り、散漫になる笑い。これをどうまとめるか、ずいぶん勉強になりました。

 最低人数はゼロ。お客様が誰も来なかった日。その次の最低観客数は3人。この3人を相手に、どうするか。スタッフに、当時珍しかった日本酒「燗板娘(かんばんむすめ)」を4本買って来てもらってその開け方を説明しながら「お客さん、どうやってこのライブを知ったんですか?」と質問しながら、はては身の上相談までして1時間。

 台風直撃の日も観客数は少なかったとはいえ、なにがなんでも見るぞ、こんな日だからこそ見たい、という強い「気」が漂い、舞台と客席の集中力の戦いで見事な空間になりました。

 席と席との間に、物理的にはスースーした風が吹いているのですが、気持ち的には密度の濃い空気が流れているのです。

 ひょっとして3日間で今日のできが一番よかったんじゃない?とスタッフが言ってくれたことがまんざら嘘(うそ)でもなかったかも。

 つくづく、落語って演者が一人でやってるんじゃない、お客さんと一緒に創り上げるものなのだと、今更ながら思った一夜でした。

**********************************************

 公式サイト「しのすけコム」
 毎日新聞
 2005年5月以前の記事

 青石銘木店へ(このブログの制作者)
※このブログの制作にあたっては立川志の輔事務所(シノフィス)ならびに毎日新聞のご了承を頂いています。
[PR]
by woody-goody | 2011-09-25 13:12 | 社会

「粋」って何?

d0051179_1321584.jpg

 ある映画を見て、あらためて「粋」ってなんだろうなと考えました。

 たとえばこんな話。素敵な真っ白の着物で吉原に通い続ける男がいました。花魁は、この男が毎日同じ着物だとしたら貧乏くさいし不潔で嫌だな、と確かめることにしました。

 白い着物の隅に小さく赤い糸を目印につけてみたのです。

 翌日、赤い印はついていません。あら、糸がとれてしまったのかしら?と思っていたところ、7日目に赤い糸のついた着物で現れました。そうか、この男は7枚も同じ着物を持っていたんだわ、なんて粋な人、と惚れなおしたんだそうな。

 この話って、なんだかなあって感じですが。

 私が明治大学落語研究会に入部し、落語に出会い、ショックを受け、連日の寄席通いを続けながら先輩に「落語の魅力のポイントは?」と尋ねたところ「江戸っ子の粋な生き方だよ」と言われ、さらにわからなくなりました。

 「相手に見返りを期待しない、やせがまん」と答えてくれた人もいます。

 自分が粋だと思い、相手も粋だと感じてくれる場合はいいけれど、きっとそうじゃない場合の方が多かったんじゃないでしょうか?

 でも「見返りを求めない」精神から言うと、それこそが粋な状態なのかな。

 江戸の人たちが宣言した粋の美学は、自分たちを生きやすくする方便でもあったんでしょうね。

 見た映画は「ハラがコレなんで」。監督は「川の底からこんにちは」の石井裕也さん。

 この映画に登場する臨月の原光子(仲里依紗)はなにかにつけて「粋」を連発します。

 はらんだ子供の父親もしかとわからず、そうじゃないかと思う元カレは行方知れず。お金もなく追いつめられた彼女が向かった先は昔住んでいた長屋でした。

 優しすぎるためにパッとしない住人たちが陥った困難を解決すべく一肌脱ぐ彼女がことあるごとに口にするのが「粋だね」「それじゃあ粋じゃねえんだよ」

 こんな場面で粋という言葉は使わないだろうとツッコミながら見るうち、彼女のペースに巻き込まれてる自分がいました。彼女が信じる「粋」に寄り添おうとしている自分がいるのです。ああ、こういう説明してること自体が粋じゃねえのかなあ。とにかく、抱腹絶倒、しのごの言わずに見てやってくんねえ。

**********************************************

公式サイト「しのすけコム」へ
 毎日新聞へ
 2005年5月以前の記事へ

 青石銘木店へ(このブログの制作者)
※このブログの制作にあたっては立川志の輔事務所(シノフィス)ならびに毎日新聞のご了承を頂いています。
[PR]
by woody-goody | 2011-09-16 13:21 | 芸能

新幹線多用の夏

d0051179_12213813.jpg

 この原稿、新幹線の中で書いています。なう。

 この夏は新幹線を何十回と利用しましたが、異常気象のせいでハラハラし通しでした。

 8月末の大阪公演に向かう新幹線に乗るべく、東京駅に着くと大混雑。12時発の新幹線がかなり遅れて出発、車両の前方にある電光掲示板には「ただいま、静岡県掛川付近、大雨のため新幹線は、16分から41分の遅れが出ております」の文字が流れました。

 この分単位の情報を見よ。鉄道網を完全に把握、コントロールしてるぞと言わんばかり、言っちゃあ悪いが、中国には真似のできない芸当だ。

 新幹線利用が多いと、いろんな乗客にも遭遇します。

 座席の後ろからカチャカチャカチャカチャ、仕事する音が聞こえてきます。

 私の背もたれの後ろに密着してついているテーブルの上でノートパソコンのキーボードを押す動作の速いこと、力強いこと、まるで楽器のようです。

 カチャカチャにまじって時折鳴る携帯着信音の方がまだましというくらい、すさまじい。おかげで睡眠できるわけもなく、自分も気をつけないといけないなと思いました。

 東京駅で、上越・長野・東北の各新幹線に乗るときなどは、自動改札を2回通ることになるのですが、こんなことがありました。

 事務所で手配してくれた長野までの特急券を1枚持って、八重洲の改札口を通過、新幹線の改札を通ろうとするとガシャンとバーが出て来て、ピンポンピンポンとアラームが鳴り、ランプが点灯。3回チャレンジしたあと、JRの女性係員が来てくれました。「お客様、どうなさいました?」事情を聴いて私の切符を見たあと「お客様、この切符は特急券だけになっております」。

 あれれ?と乗車券を購入しようと場所を尋ねると「お客様、どうやってここまでおいでになりました?」。

 ついさっきまでの行動を振り返って告げてはみるものの、特急券だけでは駅の中には入れないはず。不思議。

 「八重洲の改札ではこの特急券だけで入れたんですよ」と主張する私にほほ笑みながら係員は乗車券購入場所へ案内してくれました。

 まるで笑い話ですが、こんなことがあるんですねえ。

 正しい切符でもひっかかることもあれば、正しくない切符で通れちゃうこともある。

 しょせん機械のやることだもの、とつぶやきながら、でも人間のやることよりは正確なことも多いよなとも。

**********************************************

公式サイト「しのすけコム」へ
 毎日新聞へ
 2005年5月以前の記事へ

 青石銘木店へ(このブログの制作者)
※このブログの制作にあたっては立川志の輔事務所(シノフィス)ならびに毎日新聞のご了承を頂いています。
[PR]
by woody-goody | 2011-09-09 12:21 | 社会

「牡丹灯籠」放送怪談噺

 大阪で久しぶりに3日連続公演でした。

 今年の冬、東京渋谷パルコ公演で高座にかけた新作落語「大河への道」を、どうしても大阪のお客さんにも見せたいと、夏に呼んでもらったのです。

 大阪でいつも思うのは、お客様の集中力、クオリティの高さです。最後の拍手は、なんというかこの、塊のようになってどーんと舞台に押し寄せてくる感じなのです。

 演じ終えた後の達成感、満足感、苦労したあれやこれやが一挙に吹き飛ぶ感じ。

 最終日にみえたお客様の一人が突然「昨日はひどかったですね…」と。本人は、昨日は昨日でそれなりのできだったと思うし、お客様にも喜んで帰ってもらったはずだし、と戸惑っていると、「WOWOWの放送ですよ」と言われて思い出しました。先週の金曜日は、本多劇場公演を去年収録した「志の輔版・牡丹灯籠」をWOWOWで放送する日だったのです。

 でも、そんなにできが悪かったとも思えないし、ひょっとしてそのお客様との相性が悪かったとしても、本人を目の前にしてそこまで言うか、と思いよくよく聞いてみると、放送トラブルが起きたようなのでした。

 WOWOWから届いた詫び状の一部をそのまま掲載すると「8月26日(金)夜7:20から放送いたしました『志の輔らくご「牡丹灯籠」2010』におきまして、不手際によりテープの順序を取り違えて放送してしまいました。途中からもとの順序に戻して放送いたしましたが、番組の前半部分はご覧いただくことができませんでした。視聴者の皆さまには、ご迷惑をおかけいたしましたことを深くお詫びいたします。あらためて9月2日(金)夜6:00から、10月15日(土)夜9:00から、10月30日(日)朝7:20から、と3回の放送を予定させていただきます」

 演出上、前半と後半に分けて作っていた「牡丹灯籠」が逆に放送されたらしいのです。

 まるで現代の怪談噺です。御覧になった方々に私からも深くお詫び申し上げます。一番がっかりしているのは当人です。下北沢本多劇場で5年間もロングランを続けている公演、楽しみに録画していただいてる皆様、再放送の方を録画しなおしてくださいませ。

 お客様の機械が故障したわけではありません。事情の御報告と心底からのお詫び、そしてお知らせでございました。

**********************************************

公式サイト「しのすけコム」へ
 毎日新聞へ
 2005年5月以前の記事へ

 青石銘木店へ(このブログの制作者)
※このブログの制作にあたっては立川志の輔事務所(シノフィス)ならびに毎日新聞のご了承を頂いています。
[PR]
by woody-goody | 2011-09-02 12:12 | 芸能


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


by woody-goody

プロフィールを見る
画像一覧

S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

カテゴリ

社会
列島各地
体験
政治
芸能
休載

以前の記事

2014年 03月
2014年 02月
2014年 01月
2013年 12月
2013年 11月
2013年 10月
2013年 09月
2013年 08月
2013年 07月
2013年 06月
2013年 05月
2013年 04月
2013年 03月
2013年 02月
2013年 01月
2012年 12月
2012年 11月
2012年 10月
2012年 09月
2012年 08月
2012年 07月
2012年 06月
2012年 05月
2012年 04月
2012年 03月
2012年 02月
2012年 01月
2011年 12月
2011年 11月
2011年 10月
2011年 09月
2011年 08月
2011年 07月
2011年 06月
2011年 05月
2011年 04月
2011年 03月
2011年 02月
2011年 01月
2010年 12月
2010年 11月
2010年 10月
2010年 09月
2010年 08月
2010年 07月
2010年 06月
2010年 05月
2010年 04月
2010年 03月
2010年 02月
2010年 01月
2009年 12月
2009年 11月
2009年 10月
2009年 09月
2009年 08月
2009年 07月
2009年 06月
2009年 05月
2009年 04月
2009年 03月
2009年 02月
2009年 01月
2008年 12月
2008年 11月
2008年 10月
2008年 09月
2008年 08月
2008年 07月
2008年 06月
2008年 05月
2008年 04月
2008年 03月
2008年 02月
2008年 01月
2007年 12月
2007年 11月
2007年 10月
2007年 09月
2007年 08月
2007年 07月
2007年 06月
2007年 05月
2007年 04月
2007年 03月
2007年 02月
2007年 01月
2006年 12月
2006年 11月
2006年 10月
2006年 09月
2006年 08月
2006年 07月
2006年 06月
2006年 05月
2006年 04月
2006年 03月
2006年 02月
2006年 01月
2005年 12月
2005年 11月
2005年 10月
2005年 09月
2005年 08月
2005年 07月
2005年 06月
2005年 05月

フォロー中のブログ

その他のジャンル

ファン

記事ランキング

ブログジャンル

画像一覧