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被災地落語にて

 先週、仙台での独演会に出かけました。

 震災後、この地では初めてで、地元の放送局主催で1000名を超えるお客様の力強い笑い声に充実した時間が流れました。

 また8月には岩手県北上市のさくらホールで、陸前高田の避難所の方々を招待する落語会にも出かけます。少しずつでも被災地で落語会が開かれるようになったことはとても嬉しい出来事です。

 笑う余裕ができてきた、そのことを喜び合うお客さん、主催者、スタッフの方々の交流を見ているだけで、こちらも嬉しくなります。

 従来の落語会では得られなかった喜びがあります。

 先日、秋田での独演会の際、開演前の楽屋に主催者が一通の封筒を持って現れました。

 高座にあがる直前に封を切りました。

 その文面をここにそのまま転載させていただきます。

「志の輔師匠へ。

初めまして。私は仙台に住んでいる***と申します。突然のお手紙、申し訳ありません。伝えたいことがあり、お手紙出させていただきました。

東日本大震災で主人を亡くしました。28歳でした。主人は志の輔師匠の大ファンで、昨年の仙台電力ホールでの独演会へも行きました。よく車の中で志の輔師匠のDVDやCDを聴き、大笑いしていたのが、とても懐かしいです。長男も『一等を出せるもんなら、出してみろ!』(注:私の新作落語「ガラガラ」に出てくる台詞です)と覚えて言っていました。その車も被災し、まだ見つかっていません。見つかれば、車の中のCD・DVDも取ってきたいのですが。今回の秋田での独演会には、私自身は小さな子供がいるため行けませんでした。申し訳ありません。今回は私の妹に、この手紙をたくしました。

私ももう少し落ち着いたら、主人の写真と共に独演会に伺いたいと思います。乱筆乱文で申し訳ございません。主人の事を伝えたかったので。どうもありがとうございます。これからもがんばってください。」

 被災するということはこういうことなんですね。うかつにも出番前にこれを読んでしまった私は、テンションをあげなおすのに四苦八苦。

 弟子に「出囃子は長めに」と頼み、なんとかぐずぐずした鼻をかみ、気を取り直して高座へあがりました。

 このコラムを書き終えたら、返事を書き始めます。いつかこの方が元気になって落語を聴きにいらっしゃれますように、と祈りながら。

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by woody-goody | 2011-07-29 12:52 | 社会

ルールは世につれ

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 なでしこジャパン、とにかくありがとう、日本中がこう言ってるように思います。

 どうしようもない沈滞ムードが一気に晴れた気分、おかげで日本中が元気になりました。

 優勝をお祝いしながら「そもそも、なでしこってなんでしたっけ?」などの番組企画も立ち上げられ、若い人たちがレポーターに質問されている映像が流れ、「大和撫子(なでしこ)」という四文字熟語が認知され始めました。なでしこが花の名前だと知ったときの若者の驚きの表情に驚く私。

 このタイミングで、1860年ごろに編纂(へんさん)されたというサッカーの貴重な資料がオークションで1億1265万円の値がついたとか。

 世界最古の国際サッカー連盟認定のルールブックです。

 ここには、もちろん今のルールの元になっているものがたくさん載っているらしいのですが、中には今ではとても考えられないとんでもない反則ルールも。

 「飛んできたボールはダイレクトならば誰でも手を使って受け取っていい」

 「両手で相手を突き飛ばしてもいい」

 つくづくルールって変わるものなんだなあと思っているところに、今度は交通信号のルールが変更されるというニュース。赤信号でも青色の右折矢印信号について、今までは右折のみだったのが、これからはUターンもできるようにするというもの。でも、これは来年4月からの施行なので、明日からこのルール通りに実行すると違反行為になるので御注意。

 そうそう、こんなこともありました。

 この夏、アルバイトを探していた私の息子が3日前に面接したというので「結果はどうだったんだ?」と尋ねたところ「ダメだったんじゃない?」と言うので「不合格の返事が来たのか?」とさらに聞くと「だって合格だったら連絡あるけど、不合格だったら連絡はないから」

 「ええー!? そんな馬鹿(ばか)な」「今は常識だよ」と。

 30年以上前の私の時代では、合格不合格にかかわらず連絡してくれるのが常識でした。

 連絡しないで済ませるバイト先にも驚きますが、連絡がなくても不合格だと納得できる我が子にも驚くばかりです。

 変わり続けるルールについていくのは大変です。

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by woody-goody | 2011-07-22 21:45 | 社会

ベストな搭乗システム

 毎週のように飛行機に乗る生活を続けています。

 先週乗った秋田線は、小さいタイプの飛行機で、中央の通路を挟んで、右にABCの3列、左にDEFの3列で、奥行き30列ぐらいの大きさでした。

 搭乗する順番は、まず3歳未満の子供と一緒の人、車椅子など手助けの必要な人、そして次は航空会社のメンバーカードなどを持っている人が優先され、最後に残り全員になるのですが、このとき、最後に搭乗する人たちは二つのグループに分けられました。

 まず、座席番号15列より後方の人、そのあとに前方の座席の人たちを含むすべての人たちが乗り込みます。

 通路側を好んで予約する私はC席。Cに座りはしたもののAとBは空席。後から来たA、B席の方のために立ったり座ったりを繰り返すことになります。

 当然、その間は、窓際の方々を通すために通路に立つ通路側の方々で通路が詰まってしまいます。この光景を何十回も見てきた私は、前々から、私なりに思いついた方法を、話のタネにもなるしと、キャビンアテンダントに提案してみました。

 「後方の席と前方の席に分けるのではなく、まず窓際のAF、次に真ん中のBE、そして最後にCDを搭乗させればスムーズにいくんじゃないの?」と。すると、アテンダントはほほ笑みながら小声で、こんな内容を答えてくれました。

 「遅れておいでになる乗客の方も多くいらっしゃいますので、いろいろな搭乗順の結果、混雑状況はほぼ同じだったようで、結果、奥の方からご搭乗いただくことを続けております」

 なるほど。たぶん、何百万回もの搭乗を体験している専門家の経験から割り出されたベストな結論なのでしょう。きっと私と同じサジェスチョンをした方々も数多くいたのでしょう。余裕のある答え方にそう確信しました。

 そう言えば、まるで思いつきであるかのように矢継ぎ早に繰り出される総理大臣の提案の数々。あれも、私たちにはそう見えるだけで、実は複雑に絡み合った条件を計算しつくした結果、プロが出してるベストな結論なのだろうかなあ……いやいやそうはみえないけど、でも、えっ! そんなばかな、なんて思ってるのは私だけですか。

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by woody-goody | 2011-07-15 23:44 | 社会

レバ刺し大好き

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 大好物のレバ刺し、そもそもは、初めてレバーの刺し身を食べたのは、渋谷区恵比寿にある焼き肉店でした。

 10年以上前になります。

 いやはやそのうまさと言ったら。

 こんなにうまいものをなんでもっと早く知らなかったんだろうと後悔したくらいです。

 今回、厚生労働省が飲食店に牛肉の生レバーを客に当面提供しないよう求める通知を都道府県に出し、「レバ刺しが消える?」の報道に接し、え、食えなくなるのかと心配になって店へ直接電話取材してみました。

 忙しいランチどきにもかかわらず、答えてくださいました。

 「ユッケの件と言い、これだけ報道されたら、注文する人はほとんどいなくなりましたね。メニューからはまだ消してないんだけど、このままでいくと消さざるを得ないでしょうねえ。

 でも、ほんと言えば、みなが敬遠するので今こそ、いつもならとても手に入らない極上のレバーが手に入るんだけどなあ。でもお客さんが注文してくれないと、鮮度的にだめになるから仕入れができなくなる。そりゃうちを信用してくれる常連さんは食べるって言ってくれてるけど、いつ来てもらえるかわからないから、そのためだけに仕入れるわけにもいかなくて。本当に困った状態ですよ。国もいったいどういう基準で落ち着かせるのか、トリミングではなく熱湯で消毒と言ってもそれで完全に食中毒がなくなるわけでもないしね。他の食品でもかなり食中毒の件数は出てるわけだからねえ。結局、店単位の信用ってことになるんでしょうねえ」

 最後に店主がつぶやいた一言は

 「フグの肝みたいな存在になっちゃうんですかね」

 つまり、基本的には食べられないはずのフグの肝。

 どうしても食べたい人はどこかで食べてるわけなんですから。

 焼き肉屋でも「マスター、アレある?」「アレですか? いいのありますよ、とっておきのが入荷したとこです」「お、いいね。じゃソレお願いね」。ひそひそ声の会話があちこちで交わされるようになるのでしょうか。

 ワイドショーでカメラに向かって別の焼き肉店店主が半分怒り顔で言ってました。

 「うちは40年商売してるけど、一度も食あたりすら出してないよ。これからも絶対に出さない自信があるよ。要はそれぞれの店の問題じゃないの」

 すごく力強いコメントだった。全店がこうなれば問題ないわけだけれど……。
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by woody-goody | 2011-07-08 10:49 | 社会

大河への道

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 さて本日から7月に突入、いよいよ本格的に夏がやってまいりました。

 そして、今日からテアトル銀座にて「志の輔リバイバル」舞台5日間が開幕します。

 変わったタイトルですが、このわけは、内容が今年の渋谷パルコ劇場1カ月公演「伊能忠敬の物語、大河への道」がありがたいことに、わたしの中だけでなく、好評だったものですから、ぜひ再演をと、この機会を与えていただいた、ということです。

 考えてみれば、落語は、繰り返しの芸だと言えます。

 何百年という時間、繰り返され、いろんな演者の高座にかけられることによって磨かれ無駄のない話芸に昇華されてきた落語。

 落語にあまり触れたことがない方々には不思議に思われるでしょうが、何度も聴いてる話をまた聴く、それでも面白く感動できたりもするのです。

 それは内容もさることながら話芸そのものを楽しむ娯楽だからなんでしょう。

 これは歌にしても同じことが言えて、繰り返し笑え、繰り返し感動できる芸能の特典です。

 でも、今回、もし古典落語なら「リバイバル」という言葉は私の頭の中には浮かばなかったことでしょう。

 新作だからこそ、ひらめいたんですね。

 いつもはお芝居が中心の劇場でやる公演。

 再演だからリバイバルだな、と。

 お芝居なら、再演の際は、出演者が変わったり、演出が変わったりということがありますが、演者は一人。変わりようがない。でも、一人であるからこそできること、それは物語に出てくる登場人物をいかようにも演出できること、人を増やしても減らしても、キャラを変えるのも自由。

 それに、大変に悲しいことですが、伊能忠敬が歩測で測量した三陸海岸を含む東日本は、このたびの津波で形を変えざるをえませんでした。

 さて、どうするか。

 いったい舞台がどうなるか読めずにやみくもにドキドキしながら開幕した正月公演のような興奮を演者としてどう蘇(よみがえ)らせるか、今はそれのみに集中しています。

 で、ふと「リバイバル」という言葉を辞書でひいてみたら、「一度すたれたものが見直され、再びもてはやされること」ですって。

 あれ、思ってた意味が違う。

 もてはやされたと言うのも大げさですし、すたれてもいないよなあ。

 ま、再演ってことで、よろしくです。

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by woody-goody | 2011-07-01 23:59 | 芸能


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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