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なんじゃこりゃ検察

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 ええっ、なんでそんなことが、またそりゃどうして、いったいなぜそのようなことが、といくらつぷやいてもつぷやき足りない言葉が口をついて出てきます。

 正しいことを調べる側が、データを改ざんしていたなんて。

 医者が人を殺したり、農家が育った稲穂の芽を摘んだり、教師が生徒の勉強の邪魔をするようなものですよね。

 そりゃ落語にも、そらまたどうしてというのもあるにはあります。

 たとえぱ「小間物屋政談」は、旅の途中で死んだはずの亭主が、生き返って帰ってくるという話。

 亭主が死んだらしいという知らせを聞いて、死体を確認しに行ったのは、女房から、旅に出るときに亭主が着用していた着物の特徴を聞いた大家さんだったのですが。

 亭主が生きて帰ってきたのだから、めでたしめでたしとなりそうなところ、そうはならないのは、亭主が亡くなって女一人になってかわいそうと情け深い大家さんが、他の男を世話した後だったため。

 最初はぎこちなかった新しい夫婦も、しだいに仲睦まじくなってきたところなのに、さあ、どうしようとなりました。

 ここに登場するのが名裁きで有名な大岡越前守。

 もとの亭主にも、女房にも、新しい亨主にも、大家さんにも、誰にも悪意はなく、たまたまのゆきちがいが巻き起こした騒動だと了解した大岡様は、こんな案を出しました。

 実際に、旅の途中で強盗に襲われて亡くなったのは、大きな店の主人。そこには美人の奥さんが悲嘆にくれて毎日泣き暮らしていました。

 もと亭主は、その奥さんと再婚し、大きな店を継ぐというのはどうか?そうすれば、みんな丸くおさまるではないか、と。

 昔、この落語を高座にかけていたときは、なにか釈然としないものを感じていました。丸くおさまったって、そんな都合よくいくかなあ、と。ところがこの噺が最近ピタツとくるようになったのです。

 情報も通信方法もなかった時代には、勘違いしてしまったことはしょうがないとして、その先、どう暮らしていけばよりよく生きられるかを考える、そんないい「かげん」が日常茶飯事だったんじゃないかなと考えるようになったのです。

 この落語の「なんじゃこりゃ」は、人としてありえないことではない。運命のいたずらというやつです。

 が、今回の検察のやったことは、運命のいたずらではなく、いたずらに人の運命を変えた、正真正銘「なんじゃこりゃ」ですよね。
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by woody-goody | 2010-09-24 05:56 | 社会

ツカミは魔物


 愛知県の小学校の担任の先生が算数の授業で出した例題「18人の子供がいます。1日に3人ずつ殺すと、何日で全員殺せるでしょう」が問題になり、教諭は謝罪、市の教育委員会が厳重注意。

 この先生、生徒が授業にあまりにも集中しないので、口頭でこの例題を出して気をひきたかったらしい。

 これを生徒がノートに書き写したのを親が見てびっくり、教育委員会に通報したという経緯。

 この「まずは気をひく」作業を、私らの業界用語ではツカミと呼びます。

 ツカミさえうまくいけぱ、共感の土壌ができるので後は楽にネタに入っていけるのです。

 大袈裟に言えば、その日の舞台が生きるのも死ぬのもこのツカミにかかってい.ると言っても過言ではありません。

 例をあげるなら、頭を下げていきなりマイクにぷつかりゴンと音をさせて笑いをとったり、しばらくマイクの前でクチパクでしゃべって、観客があれ?と思った頃、声を出し始めて、なあんだと思わせて笑いをとったり。

 これだって「大丈夫かしら?」と思わせたらおしまいです。

 私の場合、偽装事件が話題になっているころは「独演会とチラシに書いてあったのに、いきなり弟子が出て来て申し訳ありません。偽装と言えば偽装です」のツカミをよく使ったものです。なんとかして早く観客と一つになるために、我々芸人は日夜いろんなことを考えています。

 芸歴が長くなると、滑ったときにフォローするセリフも用意してるのに、それすら滑って、ということも数知れず。

 場を読む感覚、時代の空気、そしてここが大事なのですが、自分のキャラの把握。

 たぷん、この先生はテレビで芸人がブラックなことを言って受けてるのを見て、自分も、となったのでしよう。

 だって、舞台に登場するやいきなり「お集まりの貧乏人の皆さん!」と言って笑いをとれる場合とシーンとされる場合がありますよね?ブラツクな笑いは綱渡りです。

 馬鹿なことを言うのが仕事な私らと教えるのが仕事な公務員である先生の違い。

 でも、この小学校の先生のニュースを見て、自分の今までツカミで滑ったときのぞっとした感じをまざまざと思い出しました。

 ツカミは魔物です。
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by woody-goody | 2010-09-17 05:55 | 社会

ビール気分に乾杯!

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 それにつけても日本の技術はすごい。この不況に、ノンアルコールビールが大変な売れ行きのようです。

 酒類じゃなく、清涼飲料水のジャンルに属するため、メーカー側にとっても税金の点でメリツトが多く、ありがたい新商品、力も入ろうというもの。

 いかにビールに近づけるか、繊細な舌を持つ日本人を納得させるための地道な研究開発、販売努力、そして若者のアルコール離れもあいまって、すっかり時代に必要な飲みものになりました。

 かくいう私も、大いに売り上げに貢献しています。

 炎天下のゴルフコースからハウスヘもどり、冷たいビールを飲む、これが最大の楽しみなのに、できない。

 車を運転してきたからです。

 聞けば、参加者全員もそうでした。

 「どうする?ウーロン茶にする?それともジュース?」

 なんだかだらしがない。

 場がしまらない。

 「じゃあさあ、ノンアルコールにするかあ?」

 残された選択肢はこれしかありません。

 「んんん……そうだな」

 一緒にツマミも頼んだりして。

 テーブルの上に届いたビールのようなものを各自、それぞれグラスに注いで、「おつかれさま、カンパーイ!」

 ぼそぼそ、乾きものなどつまみながらグラスをあおりはするものの、いまひとつ盛り上がらず、しみじみした空気が流れます。

 「クーツ!」もなければ「プハーツ」もなく、「やっぱりビールじゃないな」などとあたりまえのことをつぷやいたりして。

 わかっていて注文したくせに。

 ビールじゃないものをそれと知りながらビールがかもしだす空気を期待する自分たちが悪い、いさぎよくない、脳と体がよくない。

 わかっているのにこの不満。

 似せたと言えぱ、「カニかまぼこ」は、食べるたびに「しかし、よくできてるよなあ、このかまぼこ」と感心するのに。

 こんなにすごい発明品も、ビールだと思うから、がっかりするのでしょう。

 ビール味の清涼飲料水だと最初に思えぱ「よくできたビール味だなあ」と感嘆するはず。

 ネーミングがよくないのかな。

 提案!

 「ビール気分」というのはどうでしょうか?

 これだけよく似た味なんだから、いつの日か、飲んだあとに「プハーッ」と言ってやりたい気分なのです。
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by woody-goody | 2010-09-10 05:57 | 社会

下北沢の魅力

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 久しぶりに緊張興奮したライブでした。

 先週の日曜日、下北沢のライブハウスで行われたイベントの名は「SHIMOKITA IS DEAD?」

 下北沢再開発に反対する趣旨に私も賛同したのがきっかけでの出演でしたが、ロックバンドやパンクバンドの間にはさまって落語を披露するなんて、こんな落ち着かない気分は何十年ぷりでした。

 バンドが終わっての舞台転換はわずかな時間。座布団と同じ大きさの台の上に乗りはしたものの、扇子はどこへ置けばいいの?途中で脱いだ羽織はいったいどうすれば?と膝の上に抱えたまま落語に入ると、観客は爆笑。

 会場はスタンディングも含む、おそらく20代を中心にしたバンドファンも大勢いただろう若い観客で埋めつくされていました。

 いったいどうなることやらと落語の前の軽いおしゃべりであるマクラに入りました。

 世の中、なんでも開発して便利にさえなれぱ町も人もよくなるなんて単純なものじゃない、という趣旨を込めながら、「電子ジャーのないその昔、私のおふくろはかまどの前でー時間かけて火吹きだけを吹き汗だくになっていました。居間に待つ家族の前でおひつの蓋を取ったとき、湯気の向こうに見えたおふくろの顔は、どーよ!と言わんぱかりに自信たっぷりで、私がおいしく炊き上げたのよ、という充実感に満ち溢れていました」と語した途端、会場の若い女の子からいっせいに拍手が起こったのでした。

 突然の予期せぬ反応に、一瞬、自分の間がくずれそうになりました。それほどの驚きがあったのです。

 そうか、そうだったのか、この完全便利生活を享受している若者たちも、一つのことをなしとげた満足感、達成感の素晴らしさに憧れているんだと、ものすごく嬉しかったのです。

 音楽を基本に生活している彼らだから特にそうだったのかもしれません。

 本編の落語は新作落語「買い物ぷぎ」。女房にトイレの芳香剤、掃除の洗剤、歯磨き、風邪薬の買い物を頼まれたものの、どれも種類が多すぎて、店員を質問攻めにして困らせるというストーリー。存分に楽しんでもらえたようでした。

 38年前は、アングラ劇団全盛期で、いまの本多劇場のある場所はまだ空き地でした。

 ここで、「黒テント」や「赤テント」を観ましたっけ。

 変化しているのにいつもなにやら懐かしい、いろんな要素がまざりあった雑駁な魅力のある町、下北沢。こんな町、また造ろうと思っても造れない、それを壊すことだけはやめてもらいたい、と心から願っています。
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by woody-goody | 2010-09-03 05:56 | 列島各地


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


by woody-goody

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