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山形県芋煮だより

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 時代の大きな波がうねっているのを感じます。

 そろそろ中央に翻弄されるのはやめにしたい、自分たちの力で独自の文化を育てていかなけれぱ、という地方の熱を、行く先々、全国で感じています。地方分権のきざしが、娯楽の世界にも如実に押し寄せています。

 それにしても思うのは、落語のライブ格差です。

 東京では、定席である寄席も合めれぱ1日に20~30本もの落語会があちこちで開かれているというのに、先日出かけた山形県天童市は、将棋の駒と温泉地で有名であるにもかかわらず、落語会を開くのは初めてだというのです。

 500人近いお客さんは、なにはさておき、とにかく初めて生の落語が聴けるというチャンスにわくわく、チケットが入手できたという参加の喜びが客席に充満しています。

 まるで、100年以上にわたる落語の空白時代に、そろそろピリオドを打て、と言われたような。

 その熱い気持ちに触発され、こちらも熱い高座をつとめてまいりました。

 そこの打ち上げで出た山形県名産の芋煮のうまかったことと言ったら。

 テレビニュース映像で御覧になったこともあるでしょうが、川原で直径10メートルぐらいの巨大な鍋で何千人分もの芋煮をつくる、あれです。

 私は、なんだって、外で食べれぱうまいにきまってる、ぐらいにしか思っていませんでした。

 ところが、室内でもうまい!

 しかも、芋なのに不思議なぐらいに、酒にも合う。

 沸かしたお湯に、皮を剥いた里芋、牛のバラ肉、コンニャク、あとはゴポウやネギやニンジン、早い話がすき焼きの薄味みたいなもの。これが酒に合うのはなぜ?

 さらに、芋煮は場を盛り上げる。

 興奮が最高潮に達したのは、鍋の具が少なくなったころに発せられた男性の一言「買ってこいよ、うどん」から始まりました。

 近くのコンビニで購入したうどんの玉と、インスタントカレーの固形ルー。

 四つの鍋のまわりに真剣なまなざしが注がれます。

 すぐにうどんを投入した鍋に、隣の鍋奉行が叫びます。

 「バカ、なにやってるんだ、早いんだよ、うどんはつゆが沸騰してから入れるんだよ」

 「なに言ってるのよ、これは冷凍うどんだから、先の方がいいのよ」

 「おい、ビールを少し入れた方がうまいよ」

 「ビールだと苦くなるよ、入れるなら日本酒の方が」

 おいおい、なんでそんなに真剣なんだよ。彼らにとっての芋煮の会は、想像以上に文化なのでありました。

 それぞれの鍋が完成すると、私の前に4杯の芋煮出汁カレーうどんが並べられました。

 「さあ、どれが一番うまいか、師匠に判定していただきます」

 冗談まじりの遊びだからと、気軽にランク付けしたところ、大変なことに。

 優勝を逃したチームの方々が口をきいてくれなくなりました。

 ああ、されど芋煮。

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by woody-goody | 2009-09-25 05:03 | 列島各地

歴史と伝統、そして新芸術

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 政権が代わりました。

 時代という大きな空間がうねりをもって新しい風を誘い込んでくれたらなと思います。

 私は、たった半畳にすぎない座布団の上で時代や空間を超えたさまざまな落語を語る落語家という職業を続けているわけですが、一番大事にしているのは、決して目には見えないその場の「気」です。

 自慢じゃないけど日本中のかなりの数のホールを渡り歩いてきましたが、先日、京都でまたひとつ素晴らしい会場に出会うことができました。

 発端は、私のテレビドキュメンタリーを見た大学教授からいただいた一通の手紙でした。

 私が国立劇場で落語をする様を見て、うちの劇場なら師匠にもお客にも必ずや満足してもらえるような会になるに違いない、といった内容が誠意を込めて綴られていました。

 会場は、京都造形芸術大学の敷地にある春秋座

 学生も含めたスタッフの熱心さはもとより、大学の敷地内に漂う学生のみずみずしさ、私までもが若返ったような気がしました。

 案内パンフレットには「芸術と文化の都、この京都の地から発する文芸復興の鼓動が、日本の魂を静かに深く揺り動かすことを願って」とありました。

 9年前に、歌舞伎俳優市川猿之助さんを芸術監督として迎え、花道もこしらえ、歌舞伎からオペラまでが可能な定員約800人のみごとな空間。

 そこに一人高座。普段にもまして熱のこもった落語をやれたような気がしました。

 終演後の教授や学生の笑顔が、なにより京都まで来てほんとによかったと思わせてくれました。

 偶然、ここにせがれが入学したという友人に電話をかけました。

 「素晴らしい大学だよ、いいところに入学したね、せがれは」。

 やはり芸術は建物じゃない、人と人とで創りあげるものだと、あらためて実感。

 もちろん芸能だけじゃない、政治も経済もそうでしょう。

 会を終えて、駅まで向かう車中から見る景色はまぎれもなく伝統の街そのものの京都でありました。

 ついさっきまで、近代的な芸術の雰囲気の中にいたのが嘘のような。

 車の中で、こんな京都の小噺を思い出しました。

 「あのお店は古そうですね」

 「そうどす、戦前からあるんどすえ」

 「へ~、60年以上たってるんですか」

 「なに言うてますの、応仁の乱の前からですよ」
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by woody-goody | 2009-09-18 05:46 | 政治

だって、防水携帯なんだもの

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 ここまできたか、もうついていけない、と時代の変化を思い知ったのは、先日対談した某女性タレントさんから聞いた驚くべき体験談。

 彼女がプライベートで温泉に出かけたときのこと。シャンプーの途中、なんとなく背中に視線を感じたので、脇の下からそれとなく後ろを見てみると、なんと大きな湯船に入っている若い女性がこちらに携帯電話を向けていたのでした。

 お尻を撮られてるかも!驚きと同時に恐怖がこみあげ、しかし、どう対処すればいいのか、泡だらけの頭で考えてもいい案が浮かびません。はたして自分が撮られているのかどうかの確認をどういう方法で確かめればいいものか。

 もう気もそぞろ、頭を洗うのもそこそこに、彼女はついに意を決して、体を拭いて、脱衣場に設置されていた内線電話で宿の支配人に連絡、事情を話して来てもらったそうです。

 やって来た支配人が湯船で熱心に携帯をみつめる女性に尋ねると、彼女はただ携帯電話でメールを打って
いたのだそうです。

 もちろん、お尻は撮っていない、と。

 それはあたりまえとして、わたしが驚いたのは、そのあとの言葉です。

 「私は、家でお風呂に入っているときは、いつもメールをしてるから……」

 えっ、うそ、すこい。そうか、風呂の中でまでメールをする生活をしている人がいるんだ、と。

 メールはすぐに返信するもの、という約束事がある世代だとしても、いくらなんでも自分ちの風呂でメールをしてるからといって、見ず知らずの裸の人がたくさんいる中で携帯電話を操作できるとは、いったいどこまでの公私混同だろう。

 そりゃあ、携帯電話が防水になったから風呂でも利用できるでしょう。

 でも、まさか温泉で使うなんて、電話会社だって予想しなかったでしょう。

 携帯で撮影するのがあたりまえの時代だからこそ、自分は撮っていなくても、撮られているのかもしれない、と思う人がいるかもしれない、という想像力だけは働かせてほしい。

 文明の進歩につれて、なにかがどんどん壊れていく音がするようです。

 これじゃあ、電車の携帯はもちろん、化粧したり、または化粧を落としたり、牛丼食べたり、なんてなんの抵抗もないわけですよね。

 携帯電話会社も、温泉や更衣室など、公衆の場所で使うなんて注意書きを追加しなくちゃいけなくなりそうですね。
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by woody-goody | 2009-09-11 19:18 | 体験

落語と総理

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 政権交代なるか、という投票目の前々日、長野県は戸隠での落語会に出かけました。

 今年で15年、地元青年団の熱意あったれぱこそ、よくぞ続いたものだと感慨深いものがありました。

 その地元青年団が言うには「戸隠は、小選挙区制度が導入されるまでは1区だったんです。長野1区は、隣接している長野市を中心としているエリアだったので問題はなかったのですが、長野2区になってから、いったい誰に投票していいもんだか困っているんですよ。だって、2区は生活圏とはほど遠い松本市を中心としたエリアなんですよ」。

 「我々にとって馴染みがないから1票入れる実感がわかないんです。候補者だってこんなに離れた戸隠まで遊説にくるのも大変でしょう。来てもせいぜい一度か二度が精いっぱい。あまり知らない人に地元を託す投票をするのって、どうにも気分がのらないんですよね。なんでこんな区分になったのか、ずっと思ってるんですけどね」

 選挙区分ってとても大事なんです。日々の暮らしを馴染みのない人に任せる不安。特に、都会と違ってそこで生まれそこで育った人たちにとっては切実な問題だと思います。

 おかしいと言えば、小選挙区と比例区の重複立候補はなくさなきゃいけないと言われながら、いっこうに真剣に議論されてるふしがありません。

 確かに、小選挙区で落選した候補者が突然キョンシーのように復活するのも変な話ですが、一方で10万票以上の票を獲得していながら、その地区では当選者は一人だけと決められているからと言って、5千票足らずの差で落選、というのもおかしな話です。

 あれだけ選挙戦に向けて政治の勉強をした人が落選したからと言って政治への道が断たれるのは理不尽で、なにかこのエネルギーを活かす制度はないものかと思います。

 私の知り合いも、今回少しの差で敗れました。

 彼は言いました。「選挙終盤で、1万5千票がずっと離れていくのをはっきり感じた」

 どうしてわかったの?と尋ねても、相手候補との際どい攻防戦のさなか、票が確かに動いていくのが肌で感じられ、「票読み」という言葉を実感したそうです。

 今回の選挙、私個人にとっても、いろんなことを考えさせられました。

 そう言えぱ、某新聞記事によると、民主の鳩山代表は「桂三枝さんや立川志の輔さんの落語のCDを聞きながら寝るんですよ。笑うと健康に良いし、演説に便えるフレーズも出てくる」そうです。

 なら、ひょっとして私の小咄も鳩山さんの口から出たんでしょうか。

 で、私が一番気になるのは、それが受けたかどうか、なんですが。

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by woody-goody | 2009-09-04 05:25 | 政治


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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