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「京の茶漬」かと思ったら

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 江戸時代と比べるなら、国内で西と東の感覚の差が縮まったとは言え、いぜんとして残るのは断り方の違いです。

 東京から大阪へ出張した営業マンが、訪問先で自社の商品をすすめたところ、「ほな、考えときますわ」と言われ、ああ、よかった、検討してもらえるんだと安堵、その報告を上司にもして、数日後、再度訪問。

 「先日の件、いかがでしょうか?」と尋ねたところ、「ああ、あれでっか、その件に関してはこのまえ『かんがえときますわ』と返事しましたやろ」と言われ、そうか、せっつきすぎたのか、もっと検討する時間がほしいという意味なんだなと、さらに数日後出かけました。

 「さて、この間の件、考えていただいた結果はどうなったでしょうか?」と問うと、「せやから『かんがえときます』と言いましたやろ」とむっとされ、ここで東京の営業マンはやっと気付いたのです。そうか、大阪人の「かんがえときますわ」は、早い話が「NO」なんだと。「遠まわしに柔らかく言ってるんやけどなあ」という大阪人のやさしさなんでしょうけど。

 これに似た「京の茶漬」という習慣が京都にもあり、落語にもなっています。

 用事で訪問した客が玄関で靴を履いて「では、これでおいとまします」と挨拶、いままさに帰ろうとしたそのとき京都人は言うのです。「まあまあ、なにもおへんけど、ちょっとお茶漬でも……」とひきとめるそぷり。

 これを真に受けて靴を脱いであがったら、あつかましい人になる。

 京都人において「茶漬」は、別れが淋しいですね、という代わりのきまりきった挨拶言葉みたいなもの。

 落語の方は、お腹のすいた男がこの京都の習慣を逆利用して、悪巧みをする話。ところが京都人も負けてはいません、さすが!と笑って聞けるオチがついています。

 さて、宮崎県知事が、総選挙出馬を要請され、出した条件がこの「京の茶漬」だなと、最初は直感的に思ったのです。総裁という、普通に考えればとんでもない条件を出して、やんわりとしたうまい断り方だなあ、と。

 言われた自民党の選挙対策委員長も「考えときますわ、それにしてもえらいこと言わはるなあ」と帰れば、お互いのプライドも傷つかずに終わったろうに、と。ところが、いま、事態は私の想定外の方向へ。

 原稿を書いてる時点では、「次期総裁選にわたくしを出馬させるお覚悟がおありですか?」から「もし本当に自民党さんが20人の推薦人を用意してくださる事態になれぱ、私も言った責任上、考えなければならない」へ。

 これは、芸人の言い回しなどじゃなく、実は地方の現場から出たまっすぐな現職知事の言葉で、「京の茶漬」なんてのではなかったようです。

 さあ、ゆらぐ政界、つぷさに見ていきましょう。
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by woody-goody | 2009-06-26 05:36 | 社会

落語家はなぜ正座でしびれないか


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 落語家への、よくある質間ベスト3の一つが「そんなに長い間、よく正座できますね、なにかコツがあるんですか?」。

 先日、女優の室井滋さんとの対談でも聞かれたばかり。

 役者なら正座しなきゃいけない役柄だってたくさんあったでしょうに、不思議がられるのが不思議だったのですが、そうか、そうかもしれません。私の記録でいうと、高座に座って夢中でしゃべっていて気がついたら1時間50分たっていたことがありました。

 さすがに立てず、座ったまま幕を降ろしてもらって、幕の内側でさあ立とうとしてもやはり立てず座布団の上でひっくり返ったことがありました。

 実は、正直に告白いたしますと、落語を演じているかぎり、おそらく2時間を超えても大丈夫な気がします。

 ところが黙ったままだと10分ともたないのです。

 お通夜や告別式で、私もしびれた経験が何度もあります。

 いつぞや、京都でお茶室に招かれたときなど、普通の人より早めにしびれがきて困ったことを覚えています。

 まわりの方々は、正座し慣れている落語家だからしびれることはないだろうと思ってらっしゃるんじゃないかと思って、さりげなく立とうといかに緊張したことか。

 でも落語は正座じゃないとできません。言葉にカが入らない。

 いろいろスタイルを模索して立ってやったこともあります。

 弟子に稽古をつけるときはあぐらをかいてやったこともあります。

 が、本気で落語を語るとなると、正座以外では身がひきしまらないのです。

 この正座という文化は、世界中で日本だけらしく、そういえぱ、中国でも韓国でも座禅のようなあぐら座スタイルです。

 なぜ正座じゃないと落語ができないのか、習慣以外のなにかがあるのでは、と常々考えていたところ、「正座と日本人」という本に出会いました。

 著者は医学博士の丁宗鐵さん。

 実に面白い。正座は外国人から見ると極めて特異な独自の文化だそうで、そもそも正座がフォーマルな座
り方になったのは明治政府が国民をシャキッとさせようと意図的に広めたのだそうです。

 驚いたことに、これ以前は、あぐら座や立て膝が礼儀正しい座り方だったんだそうな。ええ!

 千利休ですら、茶室が狭いので韓国式立て膝で座っていたなんて。

 著者は、私たちの先輩の落語家たちがボケずに長生きした秘訣にも答えてくれています。

 正座は脳の血流をよくしてくれて認知症予防効果も、あるそうな。そればかりか、この本は「正座の未来のあ
るべき姿」まで突っ込んでいくのです。

 ぜひご一読を。
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by woody-goody | 2009-06-19 06:02 | 芸能

歴女もいいけど、落女も

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 ケーキや和菓子のことひっくるめてスイーツと呼び、全国あちこちから宅配してもらう「おとりよせ」が女性の間で人気かと思えぱ、一方では「歴女」ブームだそうで。

 最初は何の事だか、チンプンカンプンでしたが、歴史上の人物が好きな女性が増えてるそうな。大河ドラマの影響もあるのでしょうが、真田幸村に代表される武将の決断力、行動力に魅カを感じるのでしょう。雑誌、単行本、博物館、史跡巡りなどで知識を増やし、歴女どうしで盛り上がっているそうです。

 そりゃたしかに、問題山積みな現在、手をこまねいているとしか見えない優柔不断な政治家を見ていると、領民を思い、敵を思い、家族を思い、一本筋の通った理念を持ち、勇気ある決断を潔く実行していく戦国の武将に、女性が惹かれるのも道理です。私から見ても、かっこいい。

 いまはまさに戦国時代にも似て、新たな方法を編み出し、果敢に取り組んでいかなければ道が開けない時代ですから。

 かっこいいと言えぱ、落語にだっているんだからね。

 ただし、かっこいいの質がちょっと違う。落語「だくだく」に登場する貧乏な八五郎。長屋に引っ越してはきたものの、部屋ががらんとしててあまりにも寂しい。

 汚れた壁に自い紙を張ってはみたものの、人並みに家具なども置いてみたい。

 でも、金がない。

 ちょうど隣に住むのは、もと侍で絵を描くのが好きな先生。

 そうだ、家具の絵を描いてもらおう!と思いつく八五郎も八五郎だが、最初は馬鹿なことを言うなといいながらも、じゃあ引っ越し祝いだと絵を描き始める先生も先生。

 床の間、金庫、タンス-もともと描くのが好きなのでどんどん絵筆を走らせる。

 そこへこれまた酔狂な泥棒が入って来る。この泥棒、目が悪い。

 手を伸ぱしてもタンスの引き出しはあかないわ、金庫からはみ出た小判はつかめないわ。

 貧乏どうし、住人の意図を察したこの泥棒、そのつもりで住んでるんなら、こちらは盗んだつもりになろう、とパントマイムで盗みごっこ。この後がまた面白い展開に。

 どうでしょ?かっこよくありません?

 歴女ならぬ落女が、落語会帰りに居酒屋で「お金がなくてもアイデアで乗り切る八五郎さん、かっこいいわよね」「でもそれにのってくる先生の方が素敵」「そんなの泥棒に比べたらまだまだ。そもそも盗みに入って、盗んだつもりになるなんて、かなりの上級者よね。一緒にお酒を飲みたいな」。

 こんな会話をしている「落女」。ひょっとしたら、もう存在してます?

 私がブームに乗り遅れてるかも。

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by woody-goody | 2009-06-12 05:34 | 社会

今日の優先順位

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 人は知らず知らずのうちに毎秒、次の行動にランク付けをしながら生きています。

 頼まれてたインタビュー原稿のゲラにチェックを入れるか、ずっと気になってた落語の資料を探すか、それとも歯医者に行くか、髪を切るか、おっとその前に小腹がすいたので蕎麦でも食うか、まずはリラックスするために煙草が先だ。切羽詰まった問題にランク付けをしながらより的確な判断を下したいと願う毎日。

 もっとも頭の結論と体の結論がちぐはぐなこともあるから、あれこれ悩んで立ち止まることもしぱしばです。

 これが国となったら、立ち止まってるわけにはいきません。

 世界平和指数GPIが発表されました。

 ニュージーランドが「世界一平和な国」で、最下位は3年運続でイラク。判断のポイントは、兵器の輸出、重犯罪、戦死・死傷者、囚人の数、潜在的なテロの危険性、社会政治的葛藤などで、日本は7位で、アジアではトップ。ちなみに2位デンマーク、3位はノルウェー、という具合に、上位10カ国の半数は北欧諸国。そう言えば北欧やニュージーランドの事件のニュースは耳に入っては来ないなあ。

 日本でトップにくるニュースは、年金問題、派遣切り、インフルエンザ、北朝鮮、裁判員制度、と毎日くるくる変わりますが、政治家の皆さんに「いま、日本重要問題ランキング」、をつけてもらったらどうなるのでしょうか。

 案外、「政治献金のよりよい方法は?」とか「世襲を上手に継ぐ方法」というような意見が飛び出したりして。

 そういう勘ぐりをさせるここんところの動きは、そもそも政治とはなにか、という原点がどこかへいってるからなのでしょう。

 父の日記念で「下着を送りたくなるタレント」第1位は2年運続で石田純一さん、第2位が所ジョージさん、第3位が木村拓哉さん。

 この木村拓哉さんを追い抜きトップに私が躍り出たのは、煙草をやめてもらいたい人ランキング。

 1位が私、2位が木村拓哉さん、3位が宮崎駿さん、4位が麻生首相。

 喉がダメになったら落語はどうするのと心配してくれる人、人に健康になる方法をすすめる番組の司会をしてるのに、とたしなめてくれる方々。

 さて、今の私の優先順位1位は、煙草をやめることでしょうか。

 頭では充分わかってはいるんですがねえ。

 体が発する「禁煙でいらついて落語ができなくなったらどうするんだ」という言い訳を一日も早くやめるように、考え始めております。

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by woody-goody | 2009-06-05 05:43 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


by woody-goody

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