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睡眠力と老人力

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 いい雨がしとしと降り続くと、思わずまぷたが重くなり、春になれぱ「春眠、暁を覚えず」の諺通り、時間どおりに起きるのが大変でした。

 「諺ってよくできてるよなあ」と人に語ったことを覚えているので、たしかによく眠っていたのです。

 ところが50歳を過ぎたころから、「よく寝たなあ」と思ったことがありません。

 時間的には寝てるはずなのに、起きた時のすっきり感がない。

 ああ、また昔のような気持ちのいい目覚めを体験したい、と思い続けてきました。

 まるで私の疑問に答えてくれるべく、「ためしてガッテン!」がこの問題を取り上げました。

 どうすれば深い眠りが得られるのか、推奨したのは「昼過ぎの短い眠り」「タ方の軽い運動」「タ方に光を浴びて」「就寝前のお風呂」詳しくはホームページをご覧下さい。

 こういうポイントを司会者としてお知らせしながら、私がもっとも得心がいったのは、先生の一言でした。

 「ないものねだりはやめましよう」

 若いころは体力があり、眠る力、つまり「睡眠力」もあるというのです。

 徐々に体力が低下するのにあわせて「睡眠力」も低下していってるのだそうです。

 そうだ、昔と同じわけじゃない。

 このあたりまえの事実をなかなか受け入れられない脳の方が問題なのです。

 自分の落語会を考えてみても、10年以上前なら、一日で昼夜2回公演を平気な顔をして三日も四日も続けられたのに、最近は一日でへとへと。どうしてなんだろう、と不思議がる脳の方がどうかしてる、ということになかなか気付かない、気付けない。

 だから、残された道は二つ。

 回数を減らすか、何回でも対応できるような落語に変化させていくか。

 こう考えると、少しずつ変わっていくであろう落語が楽しみになってきました。

 きっと、昔の達人・名人、大御所たちはみな、そうして落語を続けてきたのでしよう。

 体力が落ちていくのと一緒に「ないものねだりしないカ」をつけていくという智恵。これも「老人力」のひとつなのでしょう。

 老人カとは、老人になったらいきなり付く力ではなく、少しずつ身に付けていかねぱならないものなのかもしれません。

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by woody-goody | 2009-05-29 05:35 | 社会

理不尽に慣れた若者

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 新型インフルエンザにかかりまわりに迷惑をかけたと、被害者であるにもかかわらず責任を感じてあやまる女子高生がいる一方で、これを悪用するオレオレ詐欺まで現れる御時世です。

 長野県の実家に、息子から「金を振り込んでくれ」と電話があり、いつもと声が違うと親が問うと「新型インフルエンザにかかってるから」との答え。

 おかしい、息子が住んでる首都圏ではまだ患者は出ていないはずだと、本物の息子と運絡をとって詐欺が
発覚。

 悪事をはたらく奴らは、機を見るに敏です。

 あきれながら感心してしまいます。

 負けてらんない。

 大阪地方裁判所では、裁判官も検察官も、そして被告までがマスク着用。傍聴人はどうだったんでしょう。

 マスク一色の裁判所、まるでコントのような風景がそこここで繰り広げられています。

 気象協会が地震津波訓練の際に関係者だけに伝えるつもりの「宮崎が震度6強」という訓練情報が、公式ホ
ームページに掲載されてしまい、あちこちで大騒動。

 これをコントと言わずしてなんとしょう。

 さらに、日本水泳連盟が認めた競泳男子の入江陵介選手の背泳ぎ世界新記録。が、着用水着のせいで、国際水泳運盟からは認められず、結果、日本記録が世界記録を上回るという事態に。

 泳いで結果を出した後に、水着基準を持ち出すなんて、順序が逆だろ。

 不条理コントだ。

 これに対して救われたのは、当の入江選手のコメント。

 「まだ、バツでもなくマルでもなくサンカクの状態。よくわからない感じ。世界記録が公認されてもされなくても、あの結果以上を出すのが目標。ちょっと悔しいが、もう一回世界新を出すチャンスをもらえてうれしい」

 この若者は、もはや大人の理不尽な運営方法を相手にしていない。

 大人の対応です。

 得体の知れないインフルェンザに、人力でどれだけ対応できるか不安はつのりますが、せめて人力でどうにでもなりそうなことに、ポカスカしているのを見ると、いつもよりよけいに腹立たしくなってきます。

 その点、嘘のない目の前の生の笑いは常に本物ですから、ありがたいな。

 でも、舞台が終わったあとに聞いてみたら、「実はあれ、思い出し笑いだったんだ」と全員に言われたら、ショックで寝込むでしょう。

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by woody-goody | 2009-05-22 06:02 | 社会

裁判という理不尽

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 カセットテープの中から出てきた、故・六代目三遊亭円生の落語テープ「高瀬舟」を聞いていました。

 ヨッ、名人!と声をかけたくなるくらいの名調子、ぐいぐい引き込む迫力にすっかり聞き惚れているうち、あれ、この筋をどこかで読んだことがあるなあと、思い出したのです。そう、森鴎外の短編小説でした。

 大正5年に発表されたもので、舞台を江戸時代に設定しているものの、「罪とはなにか、罰とはなにか」「幸せとは何か」「知足」「安楽死」など、現代人が抱える問題を見事に浮き彫りにしています。

 今月から始まる裁判員制度についてますます考えさせられました。

 賛否両論、とまどいながらも誰でも裁判員制度に参加する可能性があるなら、一度ぜひ、この小説を読む
か、円生師匠の落語を聞くかして、こんな場台、自分ならどうするか、自分に問いかけてみてはどうでしょうか。

 物語はこうです。

 罪人と役人をのせた高瀬舟は、遠島まで京都の高瀬川を下っていきます。

 今までに何人も罪人を護送してきた役人にとって、弟を殺したという罪人の様子が、妙に晴れやかなのが気になって仕方がない。

 今までの例だと、みな、目もあてられないほど気の毒な様子だったのに、この男はどこから見ても楽しげな
のですから。

 その理由が知りたくてたまらぬ役人が男に問うてみたところ、この男、早くに両親を亡くし、貧乏のどん底で弟と二人暮らしを続けていた。いくら稼いでも金銭は右から左へ移動するだけの毎日。手元に残ったためしがない。

 ところが島へいく際に、奉行からいくぱくかの金銭をもらった。初めて手にした金銭のありがたさ。

 しかも、弟を殺したのには、いたしかたのないわけがあった。

 病気で働けなくなった弟は、兄の暮らしを楽にさせようと自殺をはかったそこへ帰宅した兄。死にきれないで苦しむ弟を助けんがため、刃を喉に差した兄。

 兄に後悔はなかった。

 もう楽になった弟を思うとき、兄は罪人とされようが、気持ちは晴れやかなのだった。

 話を聞いた役人の心は、はたしてこの男は罪人なのだろうかと、腑に落ちぬま船は進むのであった。

 切羽詰まった兄の行為―私が裁判員であれぱ兄を無罪にするでしょう。が、裁判長はどう考えるのか、私
が兄の立場なら、どうするのか、考えれぱ考えるほど、わからなくなるのです。

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by woody-goody | 2009-05-15 20:30 | 社会

引き算、老人パワー


 新型インフルエンザにかかる人に老人が少ないということから、これはひょっとして旧型インフルエンザじゃないか、すでに抗体ができた人たちにはうつらないのかも、いや、老人は移動が少なく人がたくさん集まるような場所へ行かないからそうなってるだけ、といろんな推測が飛び交っています。

 私の知り合いの医者はこんなふうに言いました。

「若者はウイルスに抵抗する力が強いので、ウイルスの方もむきになって入り込んでくるんですよ。高齢者はほどよく免疫力が衰えているので、ウイルスがやってきても気付かないで、そのうち気付いたときには、やり過ごしたあとなんじゃないかなあ。花粉症も高齢者には少ないでしょう?花粉症は花粉に対する過剰反応なわけだから」

 言われてみると、なるほどそうかもしれません。

 なんだかわからないうちに悪いことが通過していくのは、年をとることの特権なのかと思えます。

 そこへ、足立区が今月から、深夜の公園に集まる騒々しい若者排除策として採用したのが、英国製の「モスキートMK4」導入作戦。

 なんでも、若者にしか聞こえない高周波音を発生させる装置で、国内の販売会社に言わせると、装置を作って実施した英国の場合、装置が作動後、10~15分程度で若者を排除できたんだそうです。

 この装置、ノーベル賞をパロディーにしたイグ・ノーベル賞を受賞したアイデアらしいのですが、なんだ、実際に役に立っちゃったじゃん。

 大型連休にETC休日割引制度を利用して高速道路に入り、渋滞に巻き込まれた結果、予想外に時間がかかり、目的地に着く前によそで一泊しなけれぱならず、金銭的にも体力的にも大損こいた、という話を聞くと、ETCも知らず、割引も知らず、新型インフルエンザも知らず、縁側でひなたぽっこしたり、雨に濡れる庭を愛でながら一句詠んでた老人が一番幸せな連休を過こされたのかも。

 日本のあちこちで繰り広げられた連休狂想曲に、イグ・ノーベル賞をあげたいくらいの気持ちです。

 ふとこんな話を思い出しました。

 故・林家彦六師匠の逸話です。

 「師匠、なんで餅にカビがはえるんですかね?」と弟子が聞いたら、「そりゃ、早く食わねえからだ」。

 若いもんには言えないセリフですよ。

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by woody-goody | 2009-05-08 19:51 | 社会

ウイルス退治落語

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新インフルエンザが世界に広がり、一つずつ色が変わっていく大陸のニュースを見ていると、ウイルスに征服されそうな地球を見ているようです。

 人類の歴史はウイルスとの闘いでした。

 手を替え品を替え、生きる道を拡大しようとするウィルス。

 ニュースを見るにつけ溜息つきつつ、マスクを買いに走るしかすべのない私たち。

 気がめいる。

 医学がいまほど微細じゃなかった江戸時代にできた落語は、病気をこんなふうに描きました。

 「疝気(せんき)の虫」という落語です。

 あるとき、医者がつぷそうとした変な小さい虫が人間の言葉を話し出します。

 「助けてください!」

 必死な彼の言い分を聞くと、実はこの虫、人の腹の中で暴れて、腹の中にある筋を引っ張って苦しめるのが職業なのだと言います。

 このおしゃべり虫は調子にのって、大好物なのは蕎麦で、苦手なのは唐辛子だとまで告白。

 唐辛子が体にかかると腐って死んでしまうそうで。

 「そうか、だから蕎麦には唐辛子がつきものなのか。で、そういうときはどうするんだ?」

 「別荘へ逃げるんですよ」

 「別荘?」

 「男性の下のほうでブラブラしている袋ですよ」

 「え?つまりアレか?……おお、夢か」

 妙な夢を見たものだと思っていたそこへ、疝気に悩んでいる人からの依頼があった。疝気の秘密を知った医者は、張り切って往診へ。

 まず蕎麦を用意してもらう。痛みで借しむ旦那に蕎麦の匂いを嗅がせて、実際に蕎麦を食べるのは奥さんの方。

 医者には一計があったのだ。

 旦那の腹の中で蕎麦の匂いを嗅いだ疝気の虫は全身にカがみなぎり、蕎麦の匂いの元をさぐりつつ、旦那の口から出て奥さんのロヘぴょんと飛んで入り込んだ。

 さあ、この機会を逃がしてなるかと医者は「さあ、奥さん、唐辛子を溶いた水を一気に飲んでください」旦那のためと辛い水を我慢して飲んだあと、奥さんの体内では、虫が大騒ぎ。

 大変大変、いつものように別荘めざして右往左往。

 「別荘…別荘…別荘が……ない!」

 お伽話のようですが、ウイルス退治も原理はこのようなものかも。

 ウイルスの弱点を知って、いかに騙すか。

 根本的な退治は医療関係者にお任せするとして、びくびくする気持ちは免疫力をさげるといいますから、気をめいらせず、せめてできることで虫に対処していくしかありません。

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by woody-goody | 2009-05-01 18:35 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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