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映画「おくりびと」雑感

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 「おくりびと」で、富山は田中耕一さんノーベル賞受賞以来の大騒ぎ。映画のきっかけになった「納棺夫日記」著者の青木新門さんと監督の滝田洋二郎さんが富山の方だからです。

 この映画で、私がすぐに思い出したのは、祖母と小遊三師匠。

 変だけど、私の頭の中ではつながるのです。

 幼いころ、祖母からよく言われたのは「町で霊枢車を見たら、親指を内側に隠さないと、親の死に目に会えないよ」。

 以来、向こうから霊枢車がやってくると、緊張しながら親指を隠したものでした。

 上京しても、一度身についた習慣は変わりませんでした。

 そんな学生のころ、寄席で小遊三師匠のまくらを聞きました。

 「町を歩いていて、霊枢車が通ると、親指を内側に折って隠さないと親の死に目に会えない、というから両手の親指を握ってたのよ。そのうち、親父が死んじゃったので、霊枢車が通ると、片手の親指を曲げるようになったのよ。その何年後かに、母親が死んじゃって、霊枢車を見たとき、親指を曲げようとして、ああ、そうか、両親ともいないからもういいんだ……思わず霊枢車にピースサインを送っちゃった」

 ほんとは淋しい事が、笑いに転化されて、客席は爆笑。

 これに少し似通っているかと思われたのが、富山でユニークな自動車をつくり続けている光岡自動車が発表した「おくりぐるま」。

 以前からオリジナルの霊枢車を手作りしていたのが、映画を見て、つらく悲しいだけの死のイメージから認識が変わり、尊厳と優しさをもって死者を運ぷための車をイメージしてデザインしたとのこと。

 一連のニュースを見ていて思ったのは、オスカー受賞もさりながら、なんと言っても秀逸なのは「おくりびと」というネーミングです。

 そうだ、告別式で私たちは、霊をおくるのだ。お盆には霊を迎えるのだ。あたりまえのことが思いおこされました。

 此岸から彼岸へ霊をおくる告別式。

 「おくる」という言葉が改めて、こちらとあちらは連綿とつながっているとイメージさせてくれます。

 世界がはっきり分断されているのではなく、形を変えてつながっている、そんな優しさが「おくりびと」という語感には宿っています。

 だから、光岡さんも「おくりぐるま」と名付けたくなったのでしょう。

 忌むべき死が、おくりおくられるという日常の言葉に変換されたおかげで、やわらかくなるのです。

 いつの日か、おくられるまで、みなおくりびと。

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by woody-goody | 2009-02-27 06:51 | 芸能

あなた、日本一!

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 のっびきならない情けない状態で帰宅、まさに玄関のドアを開けようとするまわりからは報道陣の刺すような視線、やっと長い一日を終え、巣にもどろうとしたそのとき、オカミサンの声「あなた!大丈夫!日本一!」。

 すごい、の一言です。

 何度も繰り返し流される亭主のもうろう記者会見映像を見るにつけ、オカミサンもどう迎えようか、さぞや悩んだことでしょう。

 それにしても、である。

 テレビ画面で、そのセリフは、パソコンで打たれた文字ではなく、背景の上に白墨で書いたようにのっけられ、あたたかみのある感じに仕上げられていました。

 アメリカ人には理解できないだろうなあ。

 まったくそのまま落語の国のオカミサンなんだもの。

 たとえ亭主が世間的にどうであろうと、私が守ってみせる、長屋のカミサンの真骨頂。

 そう言えぱ、これに似た人をもう一人思い出しました。

 「女は子供を産む機械である」と失言した元大臣。

 このときもオカミサンは

 「あの人は、勉強はできるんですけど、馬鹿なんです」と週刊誌に語り、最高の愛情表現だと感心したものでした。

 もうこうなったら、オカミサンたちが大臣になった方がいいんじゃないかと妄想します。

 で、亭主が家事をこなす。

 あ、家事はもっとむずかしいから、もっと無理か。

 国会の議員席にオカミサンたちが座っている状況を想像するだけで愉快になる。

 予算問題、年金問題、郵政問題、オカミサンたちに話し合ってもらえぱどうだろうか。

 どうすすめれぱよりよい方向にまとまるかより、どうすれば俺の方が上になれるかぱかり考え、目的があらぬ方へいってしまう戦闘的な男より、話が早いんじゃないかな。

 さっさと結論がまとまったオカミサン会議のあと、一次会二次会では、当然亭主こきおろし井戸端会議。

 「ほんと、うちでもえぱっちゃって大変なのよ。自分の靴下がどこにあるかも知らないくせに」

 「前から、飲むのは家でだけにしなさい、ってあれほど言ってたのに。俺は大丈夫だって聞かないのよ。これで懲りたかしら。大臣やめても、体こわして病気になること思えぱ、ちょうどよかったわ」

 落語国のオカミサンなら、きっとこう言いますね。

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by woody-goody | 2009-02-20 06:47 | 政治

本気かい?国会


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 本気かどうかっていうのはどこでわかるんでしょうかね。

 空転する国会中継を見ていると、情けない面白さで、やりきれなくなってくるんですね。

 定額給付金、カンポ、年金……まとまらない、なにかがおかしい。

 落語みたい。

 私の新作落語に「異議なし」という作品があるのですが、まとまらなさかげんがこれとそっくりなんです。

 近くのマンションで物騒な事件が起きたので、エレベーターに防犯カメラをつけたほうがいいんじゃないかという相談に集まった自治会の4人。

 セキュリティー会社に来てもらい、パンフレツトを見ながら、見積もりも聞いたところ、思ったよりかなり高い。

 さあ、そうなると、思考は変な方向に。防犯カメラはそれほど必要でもないんじゃない?家内安全というお札でも張っといたら?と、話はひたすら料金が安くすむ方向へ加速。

 要するに、「安全」という第一の目的がどこかへ飛んでいき。

 国会でも、なにゆえに、給付金?年金?カンポ?問題点があやふやにぼやけてきて、協議があらぬ方向へ。

 最近知ったニュースで、たとえぱ、フェリー行方不明少年。

 乗船時と下船時のチケット枚数があわなかったために、巡視船4隻、ヘリコプター2機が出動して捜索という大騒ぎに。ところが少年は、1人で乗船、中で家族と合流、一緒に車にのって下船していたことが判明。一同、ほっと胸をなでおろした。海への転落を心配して本気で探した海上保安部。

 本気が見えたニュースでした。

 そして、感心したのは「開楽パック」。高齢者でも子供でもらくに開封できる豆腐のパックの開発。いびつにはがれた中から水が飛び出したり、エエイ!と包丁を突き立てれぱ、豆腐がくずれて……。

 ささいなことだけど、本気でかかわった技術者は、ついに楽に開けられるパックを開発したのです。

 そうだよ、本気になれぱきっと解決するんだよ。

 ひょっとして、国民は吠えない番犬を飼ってる気分になってない?

 おいしいえさを与えて、ぬくぬくしたベッドを用意、でも危なくなっても吠えもせず、うだうだと寝そべってる犬を、しょうがないなあ、と見てる飼い主。

 2丁目にいた犬はふと気付けぱ、日当たりがいいからと、3丁目や4丁目に移動してたり。要は飼い主がしっかりしなくちゃいけないってことだろうなあ。

 あっ、このたとえ話、本気で書いたんですけど。

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by woody-goody | 2009-02-13 06:23 | 政治

給付金、1万2000円の謎

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 そろそろ飽きてますよね?

 定額給付金の話。

 当初は、年末へ向けて大きな話題にもなり、考えついた人は我ながらいいアイデアだ、と思ったことでしょうに。

 テレビで、この問題に、まだ時間を割いているのを見ていると、おいおい、いま日本はそんなことやってる余裕はないんじゃないの、と疑問に思います。

 パルコ一カ月公演で寄せられたアンケートにも、定額給付金についての意見がたくさんあったのですが、その中にユニークな意見がありました。

 あの使われなくなった2000円札がからんでくるのだから面白い。

 私が高座で「定額給付金はなんで、きりのいい1万円じゃなくて、中途半端な1万2000円なんだろう」と疑問を呈したのを受けて「実はこの1万2000円は振込ではなく現金で受け取る場合、1万円札と2000円札の計2枚が支給されます」とあり、続けて、2000円札がいかに敬遠されているかを分析しているのです。

 自販機では使えない、コンビニやスーパーのレジには仕分けスペースがないため困る、新レジを製造する会杜が現れてこない、他の紙幣と間違える人がいる、ゆえに流通しない紙幣。

 沖縄サミットの年に小渕内閣によって発行された2000円札。せっかく印刷したのだから使わなくてもかまわないから国民の皆さんには渡したい。でもひょっとして、多くの国民が1万2000円を、振込ではなく現金支給を希望すれぱまた印刷しなくてはいけなくなるので、このことを公言するわけにはいかない。

 現金でもらったらタンス貯金してもらってもそれはそれでいい、珍しがられるお札として流通はしなくとも、〃死蔵金"ではなくなるので、とにかく政府は渡したいのだ、と。

 末尾は、私の新作落語「狂言長屋」をもって、「狂言じみた噺で、お笑い下され」としめくくられていました。

 これが現実だと笑うしかないし、つくりことならよく考えた、今度、新作落語を一緒に作ってもらいたいと思えるほどよくできた話です。

 2000円札が出た当時は、「発音がニセサツに聞こえるね」なんてしゃべっていたのを覚えていますが、〃死蔵金"である2000円札を使い切るために定額給付金の額が決められたとしたら、わあ、「狂言長屋」どころか「狂言国家」であり「狂言給付」。

 もし、ほんとならね~

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by woody-goody | 2009-02-06 05:46 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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