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松山や 秋より高き 天守閣

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 私が落語会で全国へ出かけているのを見て、まわりの人は羨むように言います。

 「いいよなあ、お前の商売は。毎週のようにいろんなところへ行けて。いろんな景色を見て土地のおいしいものが食べられて」

 でもその実態は、ほとんどが会場であるホールしか記憶に残らないほどのトンボ返りの連続なのです。

 いつもがそんなだから、先週の愛媛県松山市の落語会は嬉しかった。

 会場は正岡子規記念館で、翌日、時間があったので、前々から行きたいと思っていた松山城へ。

 三の丸、二の丸、と順に上がって行く途中の立て札に、一句、書かれていました。

 「松山や秋より高き天守閣」

 ふうん、これも子規の句なのか、と空を見上げると、透き通るように晴れ渡った秋空が頭上いっぽいに広がり、そこを突き抜けるように天守閣がそびえています。

 思わず「すごい!」と眩きました。

 時代は変われど、この感動は同じなのです。

 子規さん、ほんとうですね、そのとおりですね、とガッテンガッテンガッテン。

 俳句のことはよく知りません。

 でも、俳句ごころなどわからない私にも伝わる感動を与えてくれた17文字、その形式、句が詠まれたときと同じ空がそこにある、あれやこれやが重なって「すごい」の言葉が私の口をついて出たんだと思う、そのことにまた感動。

 空の高さ、そこに建つ天守閣に純粋に感動する理屈抜きの自分の感情が嬉しかった。

 いつだって理屈をつけないと喜べない大人の思考回路になっていたことに気付きます。

 こんな頭がスカッとしたような気分は、似たようなことがあったなあと、ふと思い出したのが、小学4年のときに初めて書いた詩の中の「アサガオには目があるのかな」を先生がずいぷんほめてくれたときのことです。

 夏休み中、毎朝アサガオを見ていて、棒に巻き付きながら伸びていく芽が、先までのぼりきると、遠く離れた竹垣に向かって伸びていき、翌日になるとみごとにそこに巻き付いていたのを書いただけだったのですが。

 「よく気がついたね」先生の一言、忘れられません。

 へー、こういうことが面白いのか、という発見。

 天守閣への階段を上るうち息切れする私の体はまぎれもなく54歳。

 体は若い時代にもどることができないけれど、頭は小学生にもどることができるのですね。

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by woody-goody | 2008-10-31 20:14 | 列島各地

「わたくし」のいまさら雑学

 「私という漢字を"わたし"と読んでもよい」という小さな記事をみつけ、頭の中にはクエスチョンマークがいくつも浮かびました。

 なんらかの校正ミスか、誤植かと中身を確かめれぱ、そうではありませんでした。

 つーことは今まではだめだったってこと?

 これを「決定」した文化審議会の漢字小委員会によると、私はすべて「わたくし」という読み方しか認められていなかったらしい。

 くらくらしながら辞書を調べてみたら、たしかに「わたくし」と記載されていました。

 ああ、知らなかった。

 みんなはどうなんだろう、と番組収録時にスタッフに聞いてみると、長年ずっと思い込んでいたことが実は違ったというトリビア雑学とでも呼びたい体験が出るわ出るわ。

 「上へ下への大騒ぎ、って言いますけど、あれは本当は、上を下への大騒ぎ、なんですって」に始まって「逆手に持つ、逆手に取る、がそれぞれ正しいらしいです」、「流れに竿さす、は建設的な意見が出たときに使うんですって」と、言葉の問題からついにはこんなことまで。

 「信号の黄色って、注意して渡れだと思っているでしょう?本当は止まれ!なんですよ」

 「えー、本当かよー」

 「自動車学校の教本に書いてありましたよ」

 となると、信号無視で捕まって、信号が黄色だったからと主張しても意味ないわけか。

 「JRの入場券は2時間しか使えないんですよ」

 その場にいた全員が

 「えー!」

 たまたま知り合いを迎えに行った人が入場券を購入した後、列車が遅れることがわかり、よそで時間をつぷして2時間後に改札に行くと、「これはもう使えません」と言われたそうな。

 「歯を磨かなくても虫歯にならない奴っているじゃないですか?それは唾液が治してくれていたんですって」
 
 と、得意げに言った奴に全員が突っ込んだのは言うまでもありません。

 「それってガッテンで放送したばっかりの情報じゃない!」

 ところで、落語を聞くときに自由席だった場合、舞台に向かって右に座るか左に座るかで、性格が出るって知ってました?

 これはお客様から教えられたことなんですけど、右に座ると落語家が演じる登場人物から「お願いされる」事が多く、左に座ると「怒られる」ことが多いって。

 目上の人を演じるときは、落語家は下手に顔を向け、目下の者を演じるときは上手に向かうので、そうなるのでしょう。

 だから、怒られるのが嫌いな人は自然に右に座るらしいですよ。ほんとかな。
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by woody-goody | 2008-10-24 05:45 | 社会

日本の親切、過保護

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 都内のデパートのエスカレーターに乗っている間、ずっと繰り返されていたアナウンス、思わずメモってしまいました。」

 「本日はご来店ありがとうこざいます。エスカレーターをこ利用の際は、手すりにつかまり、黄色い線の内側にお乗りください。顔や手などを手すりの外側に出すと危険です。こ注意ください。お子様運れの方は、手をつなぎステップの中央にお乗せください。エスカレーターの近くは危険です。お子様から目を離さぬよう、ご注意ください。スニーカーやロングスカートをお召しのお客様は、エスカレーターに挟まれないよう充分にこ注意ください。ベビーカーやキャリーケースをこ利用の方は、エレベーターをこ利用ください。乗り降りの際は、足元に充分ご注意ください」

 あまりの丁寧、あまりの親切。

 これと似たような体験を思い出したのは、羽田空港のポーディングブリッジという機内へ向かう蛇腹、通路の入り口でのこと。機体へ乗り込むところで、ヘルメットをかぷった作業員が「行ってらっしゃいませ。お気をつけて」とひとりひとりに頭をさげてくれる。

 おそらく外国ではないサービスでしょう。

 電車がプラットホームに入ろうとするときの「白線の内側までお下がりください」「駆け込み乗車はご遠慮願います」の類いは言うに及ばず、コンビニではレジ袋に品物を入れた際に、最後にくるっとねじって持ち手をつくってくれるし、ものすごく親切な国、ジャパン。

 公共ホールのトイレに入ると便器の前には「下水道の水を便用しております」、いただいた名刺には「再生紙を利用しております」と、エコアピール。

 形を変えた親切か。

 今週水曜日に全国で一斉に行われた親切はすごかった。

 ATMの前に5万6000人の警察官が立ち会い、貴重な年金を支給されたお年寄りが振り込め詐欺にあわないようにと大親切。

 みんなこんなに親切なのに、肝心の年金、介護、医療、生命保険、が親切じゃない。

 保険料や年金を二重に天引きしそうな担当者のそぱに立って「天引きにご注意ください」と言ってもらいたい。名簿の不備がパソコン入カミスにあるなら「そのクリックにこ注意ください。あなたのそのワンクリックが二度手間、三度手間で税金の無駄遣いにつながります。それより、みなさまの不信を招かぬよう充分ご注意ください」

 これはいくらなんでも過保護ですかね。

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by woody-goody | 2008-10-17 19:03 | 社会

今週は休載です。

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今週は休載です。

管理人:青石伸一郎

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by woody-goody | 2008-10-10 20:33 | 休載

「納豆のタレが二袋に」

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 納豆、ナットー、この響き、どうですか。

 私の大好物です。

 苦手という方には、大きなお世話でしょうが、食べられるようになって欲しいと願うぱかり。

 人生最後に何を食べたいかと問われれぱ、「必ず納豆は加えておいてね」と言うくらいの納豆好きです。

 小粒であろうが、ひき割であろうが、かまいません。

 ここへ、長ネギを細かく刻んだのと、カラシと醤油を入れるというオーソドックスな方法でもいいし、卵の黄身だけや、キムチをまぜたものをビールのヅマミにいただくの、最高。

 そんな私が水戸の落語会へ出かけるたびに楽しみに購入していたのが「青仁一粒(せいじんひとつぶ)」という納豆です。

 高級感のある丸いワッパのケースにおごそかに収められています。

 一粒一粒が大きく、豆の味がしっかりしていて、コクがある。

 ケースの帯には「酒肴逸品 青仁青豆使用」とあります。

 どちらかと問われれぱ、小粒納豆が好きだった私が、この大粒納豆の虜になったのは、添えられたタレ!これが絶品なのです。

 シソの味と香りがする、とろりとしたゲル状タレ。

 このタレを小皿に用意し、大粒の納豆に爪楊枝を刺します。

 とろとろタレをちょっとつけた一粒の納豆を口に入れます。

 まごうかたなき大豆の味が口いっぽいに広がります。

 ううむ。

 ここヘビール、いや日本酒でもいい。

 ゆっくりじっくり、納豆とビールをやってると至福の時間が流れます。ここで注意するのは、タレと豆の量。

 慎重に計算しながら少しずつタレをつけていくのですが、どうしても最後半分はタレがなくなってしまいます。

 私がこの納豆ファンであることを落語会主催者が伝えてくれたのでしょう、一昨年ここの社長夫妻が楽屋にいらした際、「タレが足りないんですよね」と冗談まじりに話してみました。

 「考えておきます」と言いながら別れ、さて、先日の落語会で、楽屋見舞いに届いた納豆の中には、タレが二つ入っているではありませんか。

 メモに「タレを増やすことにしました」。

 私が言った一言が商品に反映された、よかったのか私の一言、と嬉しいのと同時に身がひきしまりました。

 食品問題が多い中、面倒な旨を聞いてもらって、商売の極意を見たような気がしました。

 ユーザの声を大事にするのは、食品でも娯楽でも同じ、つながるってこういうことなのね。


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by woody-goody | 2008-10-03 06:07 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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