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お盆に落語

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 落語家になって26年目。

 今年の夏は、お盆の8月15,16日に国立大劇場で落語公園を行います。

 本番が近づいてきてふと気がつきました。

 え、お盆に―。

 そう言えぱ、長い落語家生活の中で、お盆の時期に落語会をやったことはなかったなあ。

 学生の頃から、お盆は故郷に帰るものと思い込んできましたから。

 でもよくよく考えてみれぱ、東京のお盆は7月なのですね。

 じゃあ、お盆ってなに?と調べてみると、今まで知らなかったことが続々出て来ました。

 子供心に夏休みの工作みたいだと思いながら見ていた、割り箸が刺されたナスやキュウリ。

 キュウリは馬を表していて、霊が早く家に帰れるようにという願いが込められているそうです。

 ナスは牛を表し、お盆が終わって、供物を背中にのせてゆっくりお帰りくださいという願いが込められているそうです。

 面白いから飾ってるだけじゃなかったのね。

 夏の野菜を使ったみごとなお盆ディスプレイです。

 庶民の智恵。

 蜀山人の狂歌に「庭に水、新し畳、伊予簾、透綾縮に色白の美女(にわにみず、あたらしだたみ、いよすだれ、すきやちぢみにいろじろのたぼ)」というのがありますが、透綾縮とは、われわれ落語家もよく身につけるステテコのことで、たぼとは、女の人の長い髪を後ろでくるっと巻いてカンザシでとめてある様をいい、総じていい女をタポと言うようになったそうです。

 言葉だけで、涼しさを味わおうという智恵ですね。

 落語家はこれをユーモアに変えます。

 夏になるとよく高座にかけられる落語「青菜」のまくらで、人間国宝だった柳家小さん師匠は、わざわざこんな暑苦しい言葉を並べていました。

 「西日さす、9尺2間に、太っちょの、背なで子が泣く、ままが焦げ付く」

 うわあ、あまりの暑苦しさに笑ってしまいます。

 言葉で遊ぷ日本人の豊かさ。

 霊が来るとか帰るとか、突き詰めれぱあるかないかわからないものを、みなで信じて、一斉に休みをとり遊びに転化させる智恵。

 いまほどイベントが多くなかった時代に、あの世の祖先の霊にかこつけて、この世の人たちが明日も元気に過ごせるよう伝統として残った年中行事。

 そうか、それならお盆に落語会、いいじゃないか。骨休めを兼ねて笑って、夏をのりきりましょ
う。
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by woody-goody | 2008-07-25 05:31 | 芸能

魚の値段

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 「食卓から魚が消える日」、この衝撃的なタイトルは映画でもなく近未来小説でもなく、まさにいま私たちの暮らしを揺さぷらんとする事態を言い表したワイドショーのタイトルです。

 食糧自給率の低いこの国の食卓に必須の魚までが消えるのか。

 燃料費の高騰が、漁を直撃、悲嶋をあげた漁師さんたちがストライキまで。

 こうなる原因、魚の値段が決まる仕組みを初めて知って驚きました。

 商品の値段は、燃料費が上がれぱ当然、仲買や問屋の利益に上乗せされ、それがスーパーや小売店の値段に反映される、ところが、魚の値段の場合はどうも違うらしい。

 簡単に言えぱ、魚の値段を決めているのは小売り側。

 つまりは、スーパーが、アジ一匹の値段はこれくらいにしてもらわないと、と値段を下げれぱ、それに問屋さんが自分たちのもうけを引いた値段で仕入れ、仲買さんも、それを見越した値段で競り落とす。結果、競り落とされた値段で漁師さんたちの収入が決まるというわけです。

 私たち消費者にとっては、魚の値段が急にあがったりせずに助かるシステムなのですが、漁師さんたちにとってはとてもつらいシステム。

 これを機会に国会でなんらかの対策を講じなけれぱ大変なことになる。

 魚はいつでも海や川にいる、米はいつでもたんぼでとれる、そんなありがたい時代に作ったシステムが今は立ち行かなくなっているのです。

 ひょっとすると、そのうち「フリーの漁師さん」が登場、インターネットで直接販売するようになるのでしょうか。

 野菜はすでに「中島さんちのトマト」「齋藤さんちのアスパラガス」など、スーパーやネットで独自の販売が始まっています。

 漁師さんのホームページで「高橋さんちの船のアジ」「竹内さんちのほだるいか」が売り出され、消費者も「やっぽり魚はヤフーよね」「でも魚介類は楽天がいいいみたいよ」などの会話が交わされ、行商のおぱちゃんの写真のわきには「野菜でも魚でもあたしが届けます」とコメントがあり、、消費者が意見を寄せる掲示板では「こないだの澤田さんちのまぐろは脂がのってておいしかった、またよろしく」「イカ、届いてすぐにイカソウメンにして食べました」など声が寄せられ、というふうに昔の井戸端会議がバーチャルで再現されるようになるのでしょうか。

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by woody-goody | 2008-07-18 05:33 | 社会

「記録、保存、って何?」

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 定年になり、さあ、後の人生をどう過ごそうかと思ったとき、まずはずっと気になっていた録りだめ音源や映像の保存作業にかかっている人も多いことでしょう。

 私も、夏の日差しを感じたある日の午後、なにげなく挿入したビデオテープが傷んでいることに気付き、あわてているところです。

 軽く1000本以上ある落語ビデオがみんなだめになっていたらどうしよう、不安がどんどん大きくなります。

 こういうときに持つべき者は友達。

 詳しそうな友達に尋ねると、さまざまな方法を教えてくれましたが、まずはすべてハードディスクに移し替えるしかないだろうとの結論に達しました。

 そこで、デッキを購入して始めたのはいいけれど、いや、その時間のかかること。

 アナログをデジタルに変換するわけですから、録画したと同じ時間がかかるわけで。

 でも、これが完成すれぱ倉庫状態になっている事務所の一部屋が空く、それはそれでとてもいいことだし。

 弟子にも協力してもらい、楽屋でもひたすら保存作業を続けています。

 すると、ハードディスク保存の智恵を授けてくれた友達がぽろっと一言、「移し替えたとしても、ハードディスクが壊れたら一瞬ですべておしまいですよね」。

 え!?またまた何を言い出すんだ!

 「バックアップをとっておきましょう」それが安全というなら、そうしよう。

 「いっそ、こういうのはどうですか?ハードディスクに保存したものを、パソコンにも入れて、それをiPodに移せぱ、移動中にどこででも見られるので、いらないものを消去する作業ができますよ。すると少しは無駄がなくなる」

 そうなのか。

 それならそうしよう。

 毎日のように、デッキとパソコンとiPodを車に積んで、仕事先で合間をみつけてはダビングを続ける毎日です。でも、ふと、我にかえって思うんです。

 作業をしている間は映像を一切見ていないわけで、この行為は果たして意味があることなのだろうか、と。

 「でもこれを続けないと、貴重な映像がなくなってしまうんですよ。それでもいいんですか?」

 ああ、そうだった、と反省しながらも半信半疑で、「なんでまたこんなにたくさん録画してしまったんだ、俺」とわけわからないことを眩いて、日が暮れていきます。

 同じ悩みをもつみなさん、一緒に頑張りましょう。
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by woody-goody | 2008-07-11 05:45 | 社会

「英語落語『つぼ算』に挑戦」

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 今年も大銀座落語祭の季節が巡ってきました。

 5年という区切りで、このお祭りも今年で終了いたします。

 5万人以上のお客様が落語を観るためにこの期間、銀座に集まるという日がくるなんて、以前なら考えられませんでした。

 このお祭りで私が英語落語をやるようになって3年目。

 「お菊の皿」「時そぱ」に続いて今年は「つぽ算」に挑戦いたします。

 ポイントは、英語という記号をどれだけ覚えられるか、54歳の記憶力に挑んでるといった方が正確です。

 英訳してくださる大島希美江先生から、いろんなことを学びました。

 幽霊が登場する「お菊の皿」では、イスラム圏では幽霊の概念がわからないと指摘され、「時そぱ」に登場する超妄想男に巻き込まれまいとして蕎麦屋のおやじが思わず言うセリフ「もう、ゆるして」は、英語圏の人間には理解できないのでは、とサジェスチョンを受けました。

 自分が悪くもないのに、他人の異常な妄想に付き合わされるのはかんべんしてほしい、という気持ちで蕎麦屋が思い余って発する言葉が笑いを誘うシーンなのですが、英語圏の人間は、
自分が悪くもないのに相手にゆるしを講うことなど絶対にない、と言われ――、ことほどさように、これに類した問題が山積みで、厄介でありながら実に面白い発見があるのです。

 今年の「つぼ算」にいたっては、もともとこの噺ができた関西では「そこがこちらの思う壼や」の地口落ち、つまり駄洒落落ちで終わるところ、江戸落語として東京に輸入され、壺が瓶(カメ)に変わり、この落ちが使えなくなりました。なので、数字のマジックに混乱した店主が、「もうその大きなカメ、お持ち帰りください。ああ、それからまぎらわしいので、ここにある3円もお持ち帰りください」と、わざわざ自分がさらに損になるような愚かなセリフを吐き、笑わせるというオチにしています。

 でも、先生は言います。

 英語圏の人々は、いくら混乱しているといっても、すでにもらった3円をわざれざ返すことはしないし、面白くもないと。さあ、じゃあどうするか。

 試行錯誤の末、、「私は明日、新しい計算機を買う事にする」という落ちで先生からOKをもらいました。

 今年の会場は、いつもよりたくさんお客さんが入場できる博品館です。この年齢でこれを覚えて爆笑をとるか、それとも最大の恥が待っているのか、憂鬱な日々です。


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by woody-goody | 2008-07-04 05:47 | 芸能


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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