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わかっちゃいるけどやめられない

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 20年ほど前にTBS朝の情報番組で、それぞれが東西を代表して一緒に出演していた桂都丸兄さんに呼んでいただき、京都南座に出てきました。

 収容人数が多いわりにお客さんが間近に感じられ、演者の気持ちがダイレクトに伝わるとてもいい小屋です。

 「桂都丸噺家生活30周年記念独演会」

 お互い、あれから20年も経ったのねえ、と感慨深い再会でした。

 都丸兄さんをあたたかく見守る桂ざこぱ師匠にも感動しました。

 パンフレツトの挨拶文にはこうありました。

 「全国各地での記念独演会も、ここで終わりやそうやけど、素晴らしいゴールを迎えられてよかったね。しかし、明日からはまた都丸ちゃんの思う噺家としてのゴールを目指してがんぱって下さい。おめでとう。終わったら早よ飲みに行くで!」

 素敵な言葉です。

 ところがこの日、私は、天災とはいえ実にスリリングな体験をしました。

 富山から京都へ入ろうという朝、空はものすごい荒れもよう。

 事前に調べた運行状況では大丈夫だったはずが、乗った列車が敦賀あたりでスピードダウン。

 本来通るはずの湖西線が、急きょ米原経由へ変更になり、約1時間の遅れという車内アナウンスが流れたときは、焦りました。

 これが自分の独演会であれば、弟子達でなんとかつないでもらうことも可能でしょうが、おめでたい記念の会に呼んでもらって、最悪の状況を考えてイライラは最高潮に。

 私がどうできるものでもないのに……。

 結果、ぎりぎり自分の出番には間に合い、さて高座にあがろうとしたとき、ある言葉を思い出しました。

 一休禅師が弟子たちに残した遺言「大丈夫、心配するな、なんとかなる」です。

 非常事態に、落ち着くのにはとても良いと感心した言葉。

 なにが起ころうと、なんとかはなるものだという深い教え。これを車内で思い出していれば、胃を無駄に痛めることもなかったのに……。結局、この話を落語のマクラでしゃべりお客様にも喜んでもらえたような気がします。

 さらに、この原稿を書いていて思い出したのは、クレージキャッツの故植木等さんの「わかっちゃいるけどやめられない」。これは親鷲聖人の教えにもあるそうです。

 いくらいい言葉を教わっても、知識の一つとしてしか覚えていないと、実際に役に立たない。偉い人はすべてお見通しですねえ。
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by woody-goody | 2008-02-29 23:16 | 社会

捨てられないベータ

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 テレビの仕事を始めたころ、自分が映った映像を録画して勉強しなければと買い求めた機械はべータでした。

 局からもらうビデオテープも、すべてべータでしたから当然の選択でした。

 民間ではすでにVHSが普及していましたが、画質のいいのはべータと聞いていましたし、サイズもわずかにコンパクトで収納にも便利と、迷う余地はありませんでした。

 現場のプロが使っているという事実もかっこよく、べータ派であることに少し優越感があったことも否定できません。

 なのに、みなさんも御存知の通り、VHSが主流になるなんて、よもや、.まさか、驚天動地と言っても過言ではないくらいの展開。

 技術力だけが世間に広まる基準ではないことを思い知らされました。販売力、これにソニーも気付き、今回のDVD企画争いでは、ソニー側、ブルーレイの勝利。

 実は私、うかつにもDVDの規格争いが続いていることすら知らず、ニュースを見て、そう言えぱうちのDVDデツキはどっちなんだ?とあわてて機械を見て。

 ブルーレイだったことを知り、一安心したところなのですが、たまたまHD規格のDVDデッキやソフトを持っている人たちの腹立ちはいかばかりか。

 どうしてもっと早めに規格を統一してくれないのよ、と愚痴を言いたくもなりますが、両者が競い合うからこそさらなる技術革新が進み、業界が活性化するとも言えるわけで。

 しかし、これから使えなくなるソフトや機械がゴミとして出されるこどを思うとくらくらします。

 してみれぱ環境によくない企業戦争。

 そこへもってきて、ずいぷん先の話ではありましょうが、いまにネット配信の時代になると、DVDに記録保存する事自体がナンセンスになる。

 モノとモノの戦争が、ネット対DVDという手段の戦争、いわぱ保存ソフトの戦争になる。

 そのときまた大量のゴミが出るんでしょうか。で、そのとき、私はべータビデオとデッキ、ブルーレイディスクのソフトとデッキを抱え、途方に暮れるのでしょうか。

 いや、もうその頃は死んでるから、もういいや、どっちでも。
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by woody-goody | 2008-02-22 06:49 | 社会

18歳で大人?


 金額もそうですが、時代によって、年齢もずいぷん違った感じで受け取られます。

 正直者の浪人と若侍が、ひょんなことから発生した金銭を互いに受け取らず、間に入った屑屋が困り果てる「井戸の茶碗」という落語があります。

 この解決方法として浪人が提案したのは、じゃあお金は受け取るけれど、そのかわりに、まだ独り身である侍にわが娘を嫁がせたいがどうだろう、もらってくれぬか?というもの。

 正直さを見込んでかわいい娘を差し出す浪人。これがうまくいけぱ、馬鹿正直な二人の間を行ったり来たりしなくてもすみ、この名案にほっとする屑屋。

 恥ずかしそうに娘を迎え入れる若侍。

 八方丸くおさまってめでたしめでたし。

 が、この落語を話す際、いつも気になる部分があるのです。

 それは浪人が屑屋に言う台詞。

 「実はわしの娘を、その正直な侍に嫁がせたいのだが、まだ13歳と、年は若いが、母に小さい頃死に別れたので……」にさしかかったとき、13歳という年齢に反応した客席が必ずと言っていいほど笑うのです。

 このシーンはジーンとしてもらいたい個所なので、ここで笑いが起きると演出上、実に辛いのです。

 たしかに現代では、13歳といえぱ中学1年生、まだまだ子供。

 ところが昔は、13歳と言えぱ家事全般をこなし、女になる少し前の段階。ましてこの落語に出てくる娘なら、男手一つで育てられたのですから、普通よりしっかりしてる。

 男子なら15歳で元服、成人式が行われたぐらいです。

 だから、江戸を舞台にした13歳はかなり大人扱いされた年齢だったのです。

 笑いが起きると困るのね。

 なんでこういう話をするかというと、成人を20歳から18歳に引き下げようというニュースを見たからなのです。

 毎年、成人式での子供のような振る舞いを見せられる身としては、合点がいかない。寿命も延びたことだし、成人はいっそ25歳に引き上げるか、くらいに思うのに。

 たしかに成人を18歳に定義すれぱ、国民としての自覚ができて政治に関心が向かうかもしれませんが、それにしても、なんでいまごろ引き下げなの?あれえ?ひょっとしてこういうこと?国の財源確保のために、税金や年金をたくさん払ってもらおうって魂胆?

 いえね、ゲスの勘ぐりだとは思いますけど。
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by woody-goody | 2008-02-15 07:01 | 社会

映画の舞台挨拶って

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 映画「歓喜の歌」が全国ロードショーされ、原作者である私は初日都内で3カ所、翌日は私の故郷富山で4カ所、舞台挨拶に参加させてもらいました。

 そもそも原作者が舞台挨拶に立つなんて、そうそうないことでしょうし、落語家でもある私がいったい何をしゃべれぱいいのか…。

 お客さんとテレビカメラに週刊誌の記者さんたちが加わった大勢の前で、主演の役者さんや監督と一緒に舞台に立ち、30秒ほどで、映画に対する思いをしゃべるという難関。

 しかも、舞台挨拶をする時間帯が、映画上映直前と直後、二つの場合があり、まるで違うお客さんの気持ちを計るのが大変でした。

 いろんな要素を頭に入れ、微妙な私の立場も考え、短い時間で、映画の素晴らしさ、役者さんやスタッフそしてお客さんへの感謝、さらに私の喜びを伝えたい、そこに、ここが重要なところなんですが、笑いで受けたりもしたい、もろもろの感情がないまぜになって毎回、頭の中がぐるぐるしていました。

 で、私がしゃべったのは「初めて映画会社のプロデューサーさんがパルコ劇場の楽屋に来てくださって、この新作落語を映画にしたい、と言われたときには、正直ウソだと思っていました。その後、半年くらいなんの音沙汰もなく、監督があの『東京タワー』の松岡錠司監督だと聞かされたときは、やっぱりウソなんだと思いました。3ヵ月後には、メーンの役者さんたちの有名な名前を聞かされ、完全にウソだと確信しました。そして今日、初日を迎え、初めて本当だったんだ、
と思いました。観に来てくださってありがとう」という挨拶になりました。

 映画関係者と映画館をまわるという、落語界では味わえない共同作業の緊張感と楽しさを味わいました。

 富山での一日は、まるで自分の家に、小林薫さんと松岡監督を迎えた気分。

 映画が終わった直後の盛大な拍手に、ただただ「本当にありがとうこざいます。今日ほどよそから運れてきた方々に富山を誇らしく思ったことはありません。こちらの偉大なるヨソモノさん二人に富山はどうです、と思いっきり威張りたい気持ちです」と映画とは関係ないことをしゃべる始末。

 「お前の落語が映画になってほんとうによかったな」と共に喜んでくれるお客さんの気持ちを感じつつ、富山県民の素晴らしさをお二人に観てもらえた喜びに浸っていました。

 それにしても、バランスを取らなければならない舞台挨拶は本当にむずかしい。一人でやる落語の方がうんと楽です。
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by woody-goody | 2008-02-08 11:54 | 芸能

犯人を安心させる?時効制度


 日常生活でわりと頻繁に使われる言葉に「時効」があります。

 「そう言えぱ、むかし、会社を休むときに、親類のおじさんが亡くなって葬式とうそをついたことがあったけど、もう時効だよな」とか「子供のころ、テストの点数をちょっと書き換えて親に見せたことがあったけど、時効だからさ」とか、軽く使うときはありますが、そもそもこれは法律用語。

 広辞苑第五版にはこうあります。

 じこう【時効】〔法〕一定の事実状態が長期間継続し、真実の法律関係を調査することも困難となり、また、たとえ調査できても、これに基づいて永続した状態を覆すことが不当だという場合に、真実の法律にかかわらず、永続した事実状態を合法化する制度

 うーん、うまく把握できない。

 正確に言葉を定義しようとするとこういうむずかしい言い回しになるんですね。

 実際の犯罪の現場では、決定は重く、ぎりぎりの線引きになる時効。

 01年に奈良県で起きた女児ひき逃げ事件が、06年で時効になりました。それをニュースで知った別の03年福井県男児ひき逃げ事件の容疑者が、たまたま知りあいに自分の犯罪をにおわせたのがきっかけとなり、1月29日、時効2ヵ月半前にその容疑者を逮捕というニュース。

 犯人、よくぞ口走った、知人、よくぞちゃんと通報してくれた。

 が、一方で時効の二文字の前に涙をのむ奈良県のご両親。そのこ両親の胸のうちを思い、これまた辛い思いを噛みしめる福井県のご両親。

 時効になろうがなるまいが、いなくなった子供は返っては来ないのだけど、時効の名のもとに捜査が打ち切られるのはやりきれない思いでしょう。

 素人考えでは、たぷん捜査にかかる手間や経費から見切り時間が必要なのでしょうが、どう考えても被害者にとってより加害者に有利になる制度、実にもどかしい。

 江戸時代の仇討ち制度は、心情的な面からのみを言えぱ、被害者側にとって人間らしいうなずける制度。

 終生、忘れられることではないのですから、犯人に安心されては困るのです。
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by woody-goody | 2008-02-01 08:16 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


by woody-goody

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