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国語指南書「広辞苑」


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 以前、5年続いた全国ネット文化放送の番組「志の輔・好江のつっこみトーク」では、毎朝、すでに亡くなった漫才師の内海好江師匠から、言葉についてありがたいお小言を受け、指南してもらっていました。、

 「最近、銭湯がなくなってきましたね」と言うとすかさず「銭湯じゃなくて、湯屋って言わなきゃ。あんた落語家なんだろ!」。

 「あんなビルが東京のど真ん中に建っちゃって」」と言えば「ど真ん中っていうのは、大阪弁だよ!」「えっ、そうなんですか?じゃあ東京ではどう言うんですか?」「まんまん中って言うんだよ!」

 たしかに、まんまん中の方が耳にきれいに響きます。

 どしろうと、どしょうっぽね、どいなか、これらはみな大阪弁からきているのか…。

 富山は大阪文化圏だったのか。

 東京弁を度忘れする私のど頭はどんくさすぎるかも。

 直されながらも、でも、いまどきそんな言葉は使わないよなあ、と心の中で小さく反発していると、まるで見透かしたように、「志の輔くん、いいかい、どんなに言葉が変わっていっても、本当はこう言うんだということは知っておかないと。あんた、落語家なんだから」。

 今でも、この言葉が好江師匠の声音そのままに、耳に響きます。

 何が正しいか、これは非常に難しい。

 で、頼りになるのが「広辞苑」

 10年ぷりにー万項目が追加されて改訂版が出ることになりました。

 枕にするのにちょうどよい高さの机上版「広辞苑」が、ついに上下2冊に。巻末付録も別冊に。

 科学用語が新たに加わるのはあたりまえとして、富山弁「きときと」が入ったことはまことに嬉しいことでした。

 新鮮、ピチピチ、活き活き、どの言葉も「きときと」にはかないません、富山で育ったものにしてみれぱ。

 地域差があった言葉も入れば、いっときのはやり言葉かと思っていな言葉も入っています。

 いま巷に流布していて、これからも(たぷん10年後?)流布し続けるであろう言葉を選択決定していく作業はいかぱかりか、想像するだに「広辞苑」編集者の苦労が偲ぱれます。

 天国の好江師匠へ。

 いま、「らしくない」落語家が「グローバリゼーション」の波にのって、「癒やし系」落語を毎日高座でしゃべり、「落語がマイブーム」と言ってくれる人が増え続け、昔からみると「サプライズ」な状況になってますよ。
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by woody-goody | 2007-10-26 06:00 | 社会

なまものは早めに

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 お土産品についての疑問がここ最近よく話題になりますが、製造日や加工日や解凍日、原材料の産地や添加物、特産や名産や本場、などの表示についてほんと考えさせられます。

 どこからどこまでがそうないのか、どうなったらそうじゃないのか。

 昔は、原材料を確保する場所、加工する場所、流通経路にのせる会社が同じですみました。

 ところが、モノを腐らせずに、少しでも早く、少しでもたくさんの人に届けよう、販路を広げようとして、多くの智恵が絞られ、そこに無理が生じます。

 最初は少人数の人がおいしいと感じ、それをまわりの人に伝え、次第に評判が評判を呼び、そのおいしさを一人でも多くの人に提供しようと、システムが整えられていく。

 そうこうするうち、そのシステムを整えていくこと自体にエネルギーが注がれていく。

 結果、システム疲労が起こり、それらが明らかになるのが今なのかも。

 ブランドもののファッションにしたって、生地と縫製と販売会社が別々な例はいっぱいあります。

 また、観光地で目にした「特産山菜憤け」の原材料が中国産であったにしても、法律上の問題はないわけです。むしろ正直に明記してあるのに感心するくらい。

 いま、実は来年1月パルコ公演のチラシが完成しつつあります。

 演劇の世界からするとこれは遅い進行らしいのですが、落語をやる身にしたら、え、もう作ってるの、と驚きです。中身が決まっていないのに、人が来たくなるような、興味をそそるようなイメージをチラシの中に盛り込もうと四苦八苦するスタッフ。確かなのは、日付と時間と料金と場所だけ。

 不当表示と言われないようほうに、「抱腹絶倒」とか「爆笑間違いなし」とか「すごい」という言葉は一切使っていません。

 それらは当然お客様の判断に委ねるべきものですから。

 自分で作って自分でやる、シンプルな構造の落語です。

 苦しいけれど楽しい作業が始まります。
 
地震になるか、大雪が降るか、私の腰痛が再発するか、声が出なくなるか、考えたらきりがないので考えません。

 来年のお正月は、一緒に健康な体でお会いしましょう。
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by woody-goody | 2007-10-19 23:43 | 社会

「携帯電話の届かない村」

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 人ロ100人の村に行ってきました。

 1999年から始めて5回目の落語会です。

 ここに昼夜2回公演で400人のお客様が集まりました。

 村民をはるかに上回る数の方々がいったいどこから?

 来てくださる原因として、そりゃ私の落語もありますが、会場である公民館の前に張られたテントで格安に販売される村で収穫された新鮮な野菜や、無料で配られる松茸おにぎり、心のこもったスタッフの気遣い、のおかげでしよう。

 私にしたって、松茸につられて始めたんじゃないの?と言われて否定できないのも事実です。

 今年の異常気象のせいで、松茸のできが悪く松茸おにぎり無料配布が不可能になり悔しがっていたスタッフ。

 ふふ、でも楽屋には松茸おにぎりと松茸のお吸い物が用意され、顔がほころぷ私です。

 長野県の諏訪湖のそばにある通称松茸山にある公民館に向かって、車で30分ほど山道を走っていると、ところどころに私の顔写真がでかでかと入ったチラシ入りの看板が立てかけてあり、「熊に注意!」の立て札にも似て自分で笑ってしまいました。

 ここの楽屋に入って毎回気付くのが、携帯電話が通じないこと。

 連絡は公民館の入り口にある赤い公衆電話のみ。

 最初は困ったと思うのですが、どうしても連絡をつけなきゃいけないところへは前もって伝えておけぱいいことですから、案外、困らない。

 だんだん、電波のない楽屋に慣れ、心地よい時間が流れ出します。

 電波が行き交わない公民館全体の静かなこと。集中力が増す客席。

 この感じがさらに高まったのは打ち上げです。その名も松茸山という名のお店で、松茸づくしのメニューでお疲れ様宴会の楽しかったこと。

 携帯電話生活に慣れてしまった私が言うのもなんですが、過疎化が進む中で村に残り、村を守る10代20代の若者のさわやかな笑顔が酒をおいしくさせました。電話で中座する者や大きな声になりがちな携帯の会話が聞こえない打ち上げが、こんなにゆったりしたものだったとは。

 若者に聞いてみました。

 「携帯がないと、どう、不便?」

 あいまいに「そうですね」と言いながら浮かべたとまどう笑顔が忘れられません。

 愚問でした。

 不便も何も、持ったことがなければ不便を感じようがないのですから。

 携帯がない代わりに松茸のある村を観光の目玉にすれぱ?というのは、村の人たちの日常生活を無視した、通りすがりの無責任な発言でしょうか。
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by woody-goody | 2007-10-12 05:51 | 列島各地

落語が似合う町、倉吉市

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 日本の北から南まで落語会でまわり始めて20年になります。

 全国くまなくまわっているような気になっていますが、出向く回数がどうしても少ない県があります。

 鳥取県もその一つです。大阪に近いこと、関西弁になじみがある地域というのもあって、落語なら関西の芸人さんを呼ぷというのが通例なのでしょう。
 
 そこへ、先週、初めて独演会で出かけました。鳥取空港まで1時間、車で1時間、ものすごく近い倉吉市。

 私のふるさと富山県と同じ日本海側で、同じような空の色、同じような海の色、懐かしい風が吹いていました。

 ただし、これは鳥取県の方にはあやまらないといけないのですが、島根県と鳥取県が左右どちらにあるのか一瞬わからなくて、飛行機内の機内誌で再確認。

 ごめんなさい。

 でも、富山県と新潟県と石川県の位置関係を正しく言えなかった人を何人も知ってます。

 ホールはとてもきれいで、楽屋にあいさつに来てくれた主催者の言葉がうれしかった。

 「ようこそ。鳥取の名産20世紀梨をむいておきました、どうぞ召し上がってください。私が館長ですが、去年、東京渋谷のパルコ公演を見せていただいて、ぜひ我が町でもというので御連絡しました。実は、ここは1500人のホールと300人のホールがあるのですが、どうしても志の輔さんの表情がちゃんと見える小さなホールでお客さんに見てもらいたくて、少々値上げして行うことにしたんです。申し訳ありません」

 ほとんどのところは、お客さんが来るのであれぱ、できるだけ大きなホールでやるというのが常識のようになっていますが、このようなお客さん側に立った気持ちで呼んでもらったと知っただけで、いつもよりよけいに腕によりをかけちゃおうと思うわけです。

 いつもホールからホールヘという旅で、その町を見歩くことも少ないのですが、飛行機に乗るまでのわずかな時間、町見物をしました。小京都を思わせる町のたたずまい、きれいなせせらぎの両側に立つ古い町並み、酒と醤油がかおる自壁の土蔵、落ち着いた感じのお土産物屋。

 森や公園、さくらの名所やかおりのある風景、美しい日本の歴史的風土などで、全国100選に選ぱれているのもうなずけます。

 どの店へ入ってもとても親切に対応してくれる人たちが、この風景を支えているのだなと思いました。

 落語が似合う町。
 
 まだまだ私の知らないすてきな町がいっぱいある、この先そんな町に会えるんだ、と飛行機に乗りました。

 帰りたくなくなる町でした。
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by woody-goody | 2007-10-05 20:14 | 列島各地


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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