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今週は休載です。1月12日再開の予定。

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by woody-goody | 2006-12-29 06:57 | 休載

うどんやさんの機転

 コミュニケーションの仕方が、ちょっとおかしいのでは、と思うことが増えました。

 先日、富山空港の2階にあるうどんやさんで起きた事件もそうでした。

 登場人物は、店員であるカスミさん(仮名です。以下すべて仮名)、ビジネスマンの田所さん、三浦さん、そして一部始終を見ていた私。

 店の入り口にはお客さんのカバンやお土産袋が置かれているのが常でした。

 その日、私がいつものようにうどんをすすっていると、そこへ携帯竃話をかけながら田所さんが、入り口に置いてあった黒カバンを手に席に着きました。

 先に来た友達が、2人分のカパンを入り口に置いて席をとっておいてくれたらしかったです。友達は席を確保したあと、トイレに行ったようでした。

 さて、そこへ奥の方に座っていた三浦さんが食事をすませ、やはり入り口に置いてあった黒カバンを持ちレジを済ませ出て行きました。と、5分ほどしてあわててもどってきた三浦さん

 「これと同じカバンなかった?」

 カスミさんは即座にカバンの取り違えだと判断、黒カバンのタグを見て「ちょっとお待ちください」と言うや否や、店を飛び出しました。まもなく空港の館内アナウンスが流れました。

 「お客様のタドコロ様タドコロ様、至急手荷物検査場にお越しくださいませ」

 カスミさんの機転によるアナウンスでした。

 しばらくして戻ってきたカスミさんは三浦さんに、手荷物検査場で待ってもらうよう伝えました。

 そこへ田所さんが黒カバンを持って友人と一緒にレジヘやってきました。もしやと聞くカスミさん。

 「お客様のおカバンですか?」

 「そうだよ」

 カスミさんは急いで店を出て行ったかと思うと三浦さんを連れて戻ってきました。そして、三浦さんに田所さんが持つ黒カバンを指さして「これがお客様のカバンじゃないですか?」。三浦さんが中を確かめるとまさしくそう。

 めでたしめでたしなのですが、このときの田所さんのリアクションが理解できませんでした。

 事情を説明されて、自分が間違って他人のカバンを持ってってしまったということに対してあやまるどころか、「ああ、それでさっき何度もオレの名前をアナウンスで呼び出してたのか」

 呼び出されたことを知りながら聞き流し、事情がわかったにもかかわらず「すいません」も「ありがとう」の一言もなくレジをすませて出ていく田所さんに私はめまいを覚えました。私はカスミさんに言いました。

 「あなた偉いねえ」

 「いえ、私が気付けば取り違えなかったんですけどね」

 この一言に私は救われ、めまいから生還。

 この変な大人のコミュニケーションを子供も見ていると思うと……。

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by woody-goody | 2006-12-22 06:29 | 社会

やさしい日本みつけた

 日本に本来あったやさしさとか思いやりとかが確実に失われつつあります。私などは、そのやさしい日本をこうして懐かしみ、いまのこの状態は明らかにおかしいと思うのですが、いままでよりこれから生きる時間の方が長い子供たちにとって、思い出せるやさしさがないとしたら、これは
恐ろしいことです。

 やさしさという感情のモデルすらないと、自分から発信するなんて、できるわけがありません。

 先日、子供に「街に出て『優しさ』を見つけてきてください」という宿題を出した先生がいたという記事を読みました。

 いろんな優しさをみつけてきた子供たち。

 中でも、保育所の窓ガラスに張られた段ポールを優しいと感じた子供がいました。

 お迎えのお母さんが早く来る子、遅く来る子がいて、遅い子にとっては早く来るお母さんを見ると、さびしい気持ちになるから、見えないようにする段ポールが優しいと。

 もちろん、段ポールが優しいのではなく段ポールを張った保母さんが優しいのですが、その気持ちをきちんと受けとめる子供の感性の優しさに感動しました。

 「先生!私もこの間、優しさを見つけました!」

 「はい、タテカワシノスケ君、なんですか?」

 この間、寿司屋に入り、当然タバコは吸いませんでした。

 店にいたお客さんが1人減り2人減り、最後は私たち仲間3人だけになりました。

 そこへ、くりくり坊主の店員さんがやってきて、「どなたかタバコを吸われるんでしょう?もうこれから入ってくるお客さんもいませんから」と、私たちの前に灰皿を置いてくれました。そう言えば以前タバコを吸ったことがあったのを覚えていてくれたのでしょうか。

 それにしても、若いのにこんな気遣いができるなんて。

 「君、タバコ吸うの?」

 「いえ、僕は吸いません」

 正直に告白しますが、タバコを吸うのはほとんどただのニコチン切れ、習慣です。できればやめたいです。

 しかし、このときほどタバコがうまいと思ったことはありません。嬉しい、ことのほか嬉しい充実した一服でした。タバコの昧が染みました。

 嫌煙権を声高に主張されることにも慣れましたけど、このように対されると、真剣にタバコをやめようかと思いました。

 奪い合えば足らない、譲り合えば余る、どこかで聞いた言葉がちらりと頭をかすめました。

 ちょっと違う?

 吸う権利、吸わない権利、譲り合えば権利も余りますよね?

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by woody-goody | 2006-12-15 06:05 | 社会

芸能と政治

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 逮捕逮捕で知事不在の県に、今がチャンスとばかり、立候補せんと待機している人たちが全国でいっぱいいるんでしょうねえ。

 その第1弾、宮崎県知事選に動き出したのが、そのまんま東さん。

 自分が代表となる政治団体の名前も「そのまんま会」。

 今までのイメージでいけば、選挙という厳粛な舞台にそのまんま会という団体名が出てくるだけで違和感があるようですが、振り返れば、ユニークなネーミングの政党はいろいろありました。

 「フロムファイブ」と、まるでコーラスグループのような名前をもつ政党は、97年、新進覚解党の際に、細川護興さんを中心にして江本孟紀さんら5人で結成された党。

 が、98年には消滅、太陽党などと合体して「民政党」に。

 「スポーツ平和党」は初代代表がアントニオ猪木さん、前代表は兄の快守(よしもり)さん。今年9月に熱海市長選に出馬するも落選。現在は議員なし。

 「中ピ連」は72年に結成され、「ウーマンリブ」という言葉がはやりました。懐かし。

 正式名称は「中絶禁止法に反対しピル解禁を要求する女性解放連合」。代表は薬事評論家の榎美沙子さん。

 不倫をしている男性が勤める会社へ、ピンクのヘルメットをかぶったたくさんの女性が押しかけたニュースが話題になりました。

 77年、「日本女性党」を結党、参議院選挙に出馬するも失敗。

 「老人党」は、作家なだいなださんが提唱したネット上の仮想政党。打倒小泉政権をかかげ03年春に結党。

 「老人党東京」には、上田哲さん、探検家の西丸震哉さん、そしてわが師匠談志も参加しています。

 そう言えば、こんな私にも10年以上前、故郷富山県で参議院選挙の際、ある政党から出馬要請がありました。

 また、インターネットで、タレント富山県知事候補ランキングの第1位に載ったこともあります。

 そもそも政治の「政」は「まつりごと」と読みます。

 芸能と政治は、底のところでつながっているのでしょう。

 私は、落語家として、富山県に落語が聴けるいいスペースがたくさんできればいいなと思い、進言もしています。

 コミュニケーションが苦手な若者、まずは人の話を聞くという習慣をつけるためにも落語はいい道具だと思うんですね。

 安倍総理のめざす「美しい国、日本」、人情あふれる話が落語の中にありますよ。

 いっそ、「らくご党」でも立ち上げますか?

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by woody-goody | 2006-12-08 09:44 | 政治

酔っ払いの帰巣本能

 不景気でもなんでも忘年会とお正月はやってきます。

 いえ、不景気だからこそ、忘れたいことだらけ。

 いったんリセットして新たな気持ちで新たな年を始めたい。

 そんな思いを心の奥底に秘めているからでしょう、酒を飲んでいやなことを忘れる日本人の習憤、忘年会の季節がまたやってきました。

 このころ、ずっと不思議でしょうがなかったのは、いくら飲んで記憶がなくなっても家には帰っているという事実。

 どこで誰と何を飲んだか覚えていないのに、家には帰ってる。

 この脳のメカニズムはいったいどうなっているのか、その原因を発見した人がいます。

 日本大学の泰羅雅登教授と米ロチェスター大学の佐藤暢哉研究員のチームが「道順を記憶している脳の神経細胞(ニューロン)」があることを突き止め、米科学アカデミー紀要電子版で発表。

 酒を飲みすぎても何も覚えていないが、無事帰宅しているのはこのおかげらしい。

 そもそも教授らは、人が脳の頭頂葉内側部を損傷すると、知っている場所でも道順がわからなくなることに着目、ニホンザルにバーチャル空間を画面で見せて実験をくりかえしました。

 実際に町を作ってサルを連れ回すのはえらく大変な作業になるのですが、バーチャル空間を見せて調べるところが現代です。

 特定の場所へ移動することをまずは覚えさせ、次に同じ場所へ行く際に働く脳の部位を調べると、明らかに特定の場所で曲がったり、特定の行き先をめざしている時にだけ活動する神経細胞が頭頂葉内側部にあることがわかりました。

 ナビゲーション機能が脳内システムとして作られていたわけです。

 学生時代、新宿西口の通称「しょんべん横丁」で生まれて初めて「ホツピー」というものを飲んだとき、あまりのうまさに杯を重ね、我を忘れ、翌朝、あまりのうるささに気がつけば、下宿近くの環状7号線の中央分離帯の植え込みの中でした。

 両脇を車がビュンビュン走っていました。

 ということは、あのとき酔っぱらった私の神経細胞は中央分離帯を我が家だと認識していたのでしょうか。

 いえいえ、こちらは単に、すぐ近くの下宿先へ帰るのすら面倒くさくなって、植え込みに倒れ込んだのでしょう。

 しかし、そのとき友達も一緒だったのが不思議です。

 「ちょっと狭いけど、どうぞ」

 「おじゃまします」

 なんて酔っぱらった神経細胞が会話していたことも考えられます。

 いやはや、今となってはとてもそんな体力はこざいません。

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by woody-goody | 2006-12-01 05:46 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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