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by woody-goody | 2006-06-30 08:51 | 休載

蜘蛛の糸に体重預けて

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 じめじめもやもやした日々が続きます。

 この季節になるといつも思うのは、部屋やタンスに湿気取りがあるのだから、人間の体にはりつけるカード状の湿気取りが発明されてもいいのになあ、商品名は、ジットリした湿気を吸い取ってくれるってことで、「トレジットカード」。

 発明と言えば、世の中にはいろんなことを考える人がいるものでして、私が大嫌いなクモを年がら年中、研究している人がいるのです。もちろん空の雲ではなく、胴体に比べて異常に長い手足をもつ虫の蜘蛛のこと。

 奈良県立医科大の大崎茂芳教授がその人。

 蜘蛛のことを知れば知るほど、きっと好きになるはずと教授はおっしゃいますが、私は知れば知るほど嫌いになるような気がするんですけどねえ。

 人の好き嫌いほど単純で不思議なものはありません。

 落語「まんじゅう怖い」では、生来嫌いなものにはわけがあると教えます。

 人が生まれ、胞衣(えな)を土に埋め、その上を最初に通った生き物を嫌いになるらしいので、さしずめ、私の場合は、蜘蛛が通ったのでしょうか。

 大崎教授は、蜘蛛の牽引糸に興味をひかれました。

 そうです、蜘蛛が素早く地面へ降りるときに使う、腹からツーと出すあの糸のこと。

 考えてみれば、ファイト~一発!と言う間もなく、全体重を支えているあの糸はまさに蜘蛛の命綱。

 ロッククライミングで一人の人間の体を支えている太いロープを思うと、あれを腹から出してするすると降りられるなんてまさに驚異の仕組みです。

 その蜘蛛の牽引糸がどれだけの重さに堪えられるかをよくよく調べてみたならば、なんとちょうど体重の2倍に相当するそうです。しかも、糸は2本のフィラメント(細い繊維)から成り立っていて、1本が切れてもあとの1本でカバーできるという危機管理体制抜群。

 感心した教授は次に、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」よろしく、人間が蜘蛛の糸にぷらさがれるものかどうかの実験を始めました。

 自宅で飼うコガネグモ約100匹から3ケ月をかけて太さ5マイクロメートル(20万分の1メートル)の蜘蛛の糸を採取し、それを19万本たばにして、長さ10センチ太さ4キロのロープを作り、そこに体重65キロの教授が乗ったハンモックが5分間ぷらさがることに成功、スパイダーマン
気分を味わったと言うのですが……。

 蜘蛛に気持ちよく糸を出してもらうためには、適度なそよ風と振動が必要、とうれしそう。

 ゆくゆくは、手術用の糸や防弾チョッキを作るのに役立つかもと夢がふくらむ教授。

 発明はこういう人から生まれるんですね。
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by woody-goody | 2006-06-23 07:07 | 社会

カーナビ利用に自戒

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 あの、のんきそうに走っていると思っていた都営荒川線に事故が起きるなんて。

 あの電車が電車にぶつかるなんて想像できません。

 3年に一度の検査のための試運転車両について知らされていなかった後続車両が、気付いてブレーキを踏んだとき、すでに間に合わず、という経過を聞くと、ゆったりしたイメージの荒川線ですが、事故は事故。

 規定の速度を守っていなかったから、とか理由はいろいろ調べている最中だそうですが、乗ってた人はさぞや驚いたことでしょう。

 実は私、この車両を借り切って撮影をしたことがあるのです。

 先日も、5日間でニューヨークとデトロイトで、落語公演を行ってきたばかりなのですが、私が今まで過去に出かけた海外でのエピソードをまとめた本「志の輔旅まくら」という文庫本の表紙が、荒川線の電車の中で撮影されたもの。

 撮影当日は、お日柄もよく、緑のシートにはさまれて、床に黄色の座布団をひいて、一席というスタイル。

 「旅」にひっかけたわけです。

 カメラを向けられながら、窓に映るのどかな春の景色に思わずほおがほころびました。

 座布団の上であんなにリラックスしたのは初めてでした。

 それもこれも荒川線がもつ癒やしムードのおかげです。

 そんな荒川線でも、やはり人間がきちんとしないと事故は起こり得るのね。

 それに比べて、自動車の今の様子はどうでしょう。

 先日も、カーナビを見ながら運転していて事故にあったという記事を読みました。

 さもありなん、と思います。

 運転しながら、目的地を探しつつ、チラリチラリと画面に目を走らせますが、時速40~50キロで走っていると、このチラリの1秒でかなりの距離を走っているわけで、ほんの一瞬がまさに命取りになります。

 携帯電話の方は、かけながら運転すると罰則が科せられることになりましたが、カーナビもゆくゆく罰則ができるのでしょうか。

 でも、これほど普及し、実際に便利なわけで、これがない運転など考えられない状況。

 実は日々恐ろしいことをしているのだ、気を抜くことなく、カーナビを利用しなければ、と自戒の意味も込めて書いてみました。
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by woody-goody | 2006-06-16 05:52 | 社会

事故の連鎖を防ぐには

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 ニューヨークで落語公演を行ってきました。

 1階がショツピングモールになっているビルの7階にある会場へ向かう際に乗ったエレベーターには驚きました。

 2方面のドアが開くのです。入るときは一方が開き、出るときはまた別の一方が開くというのなら日本でも経験したことがありましたが、同時に両方開くというのは初めての体験。もちろんこの方が多くの人がスムーズに出入りできます。

 エレベーターが通路化しているわけで。

 日本をたつ前、高校生がエレベーターにはさまれるというとんでもない事故があり、帰ってくると、それに類した事故、および事故予備軍のような状態にあった事例が次々に全国から報告されていてまたまた驚きです。

 なにかことが起こってから、そう言えば前も……というのはよくあることで、近いところで思い出すのは、トラックのタイヤがはずれた、マンションの鉄骨が骨抜きになっていた、長時間あかない踏切があった、危険な回転ドア……。

 たまたまだろうかと、特別なことはそうそうは起こらないとか、私にかぎってそういう事件には遭遇しないはず、という希望的観測「正常性バイアス」という感覚が、もともと人間には備わっているそうですが、これらの事故の連鎖を断ち切るには、そんなバイアスをかけないようにしないと。

 そんな人の生き死にに比べたらごくささいなことですが、身近なことで言えば、私たち落語家の仕事も、不思議なことがいっぱいです。

 全国のあらゆるところから依頼をいただき、契約書もろくに交わさず、電話で仕事が成立してしまう不思議。

 トラブルがないと言えばうそになります。

 まだ事務所ももたず1人でやっていた頃、頼まれた日の同じ時間に違う場所で落語会の予定が入っていました。

 申し訳ないです、とその旨を告げると「そこをなんとか」と言われ、大困り。だって、同じ日の同じ時闇に違う場所に私はいるのだもの。

 こんなふうに会話がなんかおかしいと、必ず後々よくないことがある。これは私の経験則。

 会の告知がしっかりなされていなかったり、会場の設営がいいかげんだったり、ギャラが振り込まれなかったり。

 これらを前もってなんとか予測することができないものだろうか、と考え出したわが事務所のせめてものキーワードは「たとえどんなささいなことでも、変だな、と思ったら、その仕事は縁がなかったものと涙をのんでお断りする」です。

 身を守るために経験で得た知恵。入り口がおかしけりゃ出口もおかしい。
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by woody-goody | 2006-06-09 06:08 | 社会

香港本場の偽物の本物

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 生まれて初めての海外旅行で偽物の時計を買ったことがあります。

 20年前のことなので、もはや時効でしょう。

 友人と2人で香港の町を歩いていると、一人の中国人が寄って来ました。

 ひそひそ声で言うには「アナタ、ニホンジン、○○○○○○、ニセモノ、アルヨ」

 超有名な時計ブランドの名を流ちょうな日本語で告げられました。

 香港は偽物天国だとガイドブックに書いてあったので無視しようと思ったのですが、以前ラジオで対談させてもらった沢木耕太郎さんの言葉をふと思い出しました。「私は旅に出ると、いつもいろいろな出来事に遭遇するんです。それは、面白そうなことがあるとついそっちに引き寄せられてしまうからなんです」

 この沢木流を実行、私もだまされるふりをすることに。

 「じゃあ、その時計を見せてほしい」

 と言うと、こっちに来い、とばかりに小さなビルの階段を3階まであがり、とある部屋のドアを男が秘密めいたしぐさでノックします。

 ドアの真ん中にある小さな窓が開き、中から誰かがこちらを確認しているようす。

 まるで映画のワンシーンのような展開に高まる心臓の鼓動。

 このまま帰らぬ人になる可能性もあるな、と脳の一部で覚悟しました。

 中は、ショーウインドーのようなケースがずらりと並んだだけのまるで倉庫。

 男が言いました。

 「コレ、○○○○○○。スバラシイニセモノネ。2シュルイアルヨ。アナタ、ドッチガホシイカ?」

 「2種類はどう違うのか?」

 「コッチワ、ミテスグニセモノトワカルニセモノ。コッチワ、ニセモノトハゼッタイニワカラナイニセモノ」

 思わず笑いそうになるのをこらえて、どう違うのかを聞くと、秒針が違うらしい。

 見る人が見れば秒針の進み方で本物と偽物を見極められるのだそうだ。

 「ヤスイネ、オミヤゲニタクサンカウニホンジンイルネ、アナタ、ドッチノニセモノガイイカ?」

 偽物とわからない偽物はたしか10万円ぐらいで、もう一つの偽物は2万円ぐらいだったような。私と友人は、もちろんすぐに偽物とわかる偽物を一つずつ買いました。

 友達が言いました。

 「楽しみだな、これを見て誰が偽物だと見破るか。でもさ、これだけ本物とそっくりの時計をつくれる技術があるんだから、まったく新しいオリジナル時計のブランドをつくればこそこそせずに売れるのにな」

 あの時計、そう言えばどこへいったんだっけ?誰にあげたんだっけ?もらった人、こめんなさい。こういうことでしたー。
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by woody-goody | 2006-06-02 06:09 | 体験


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


by woody-goody

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