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踏切に時刻表を

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 毎月21日は、新宿で恒例の落語会を続けています。

 ふと気付けばそろそろまる7年になります。

 渋谷パルコ劇場や下北沢本多劇場での公演がある月はお休みしているものの、よく続いていると我ながら感心しています。

 これほど長く通っている新宿ですが、今月初めて、ひょっとしたら開演時間に間に合わないかも、と一瞬ヒヤッとしました。

 原因は、あかずの踏切です。

 タ方6時過ぎ、代々木から新宿へ抜けようとした私の前に立ちはだかった小田急線の踏切。 上下線が次から次へと重なり、右が終われぱ左、左が終われば右、と列車の矢印ランプが明滅を繰り返します。

 イライラ待つ車の中で、テレビをつけるとそこには私と同じようにあかずの踏切の前でイライラ待つ人たち。

 とある私鉄沿線の様子を映すニュースによると、なんと、そこは1時間のうち57分間、あかないそうな。

 レポーターが、やっとあいた踏切を渡って来た歩行者にインタビュー。

 「どれぐらい待ってたんですか?」

 「30分ぐらいかな、もう、まいっちゃうよ」

 当然、車は長蛇の列。

 やっと渡れるようになっても、10台そこそこが渡れるにすぎません。へえ、こういうところもあるんだ、とフロントガラスに目をやると、依然としてカンカンカンカンの音とともに閉まったままの踏切が。

 おいおい、ひょっとしてこのまま、このニュース番組と同じように30分、40分閉まったままだと落語会に間に合わないぞ、と不安がよぎります。

 7年間、幸いなことに遅刻はしたことがないのに。

 車の中で考えた。

 1時間に数本しか来ないバスや電車の話はよく聞く。が、時刻表があるおかげで、イライラすることはない。

 予定がわかれば人はイライラしないもの。

 いったいいつ踏切があくのかわからないことにいらだつのです。

 日本の交通ダイヤは世界に類をみないほど正確だと言われています。

 なら、いっそ、踏切の時刻表を作ったらいいんじゃないの?

 あと10分待てばいいのか、40分待てばいいのか予測がたてばそれなりの対処のしよう、気持ちの持ちようがあるのです。

 次の瞬間、踏切があくかもと期待を込めて待ち続けるのは体に悪い。車で言えば、反対車線には車がいないわけだからUターンすることも可能なのです。

 私が思いつくこんなことぐらい電鉄会社もとっくに思いついていることでしょう。

 でも、わざわざ不評なあかずの踏切状態を明文化するのは恥をさらすようなものだという危惧があるから実行に至っていないのでしょうか。

 毎度そこを通る常連の車はいざ知らず、たまたまそこに当たった車のためにも、踏切時刻表の看板を願う者であります。

 これってサルヂエ?

 あ、で結局、目の前の踏切は2分ぐらいで開きました。ラッキー。踏切が開いたぐらいで、このうれしさよ。
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by woody-goody | 2005-10-28 06:13 | 社会

不思議な暗闇体験

 ビールグラスに唇が触れたとたん、全身が指になったような、ひとくち飲んだとたん、全身が口になったような感じが私を襲いました。早い話が「うまかった!」のです。

 スポーツで汗を流した後でも、暖房が効きすぎる部屋にいたからでもありません。

 暗闇で飲んだからでした。

 それは、広尾のD-ハウスで行われている「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」というイベントに参加したときのことでした。

 このイベントは1989年、ドイツのアンドレアス・ハイネッケ博士のアイデアで生まれ、日常生活のさまざまな環境を織り込んだまっくらな空間を、聴覚や触覚など視覚以外の感覚を使って体験するワークショッフ形式の展覧会です。

 すでにヨーロッパ中心に70都市で開催され100万人が体験済み。

 去年から気にはなっていたのですが、1年越しでやっと実現しました。

 視覚障害者である女性に案内してもらいながら、7人で1グループになり、たどたどしく闇を突き進むうち、視覚以外の感覚が研ぎすまされていくのを感じます。

 頼りは案内人の声のみ。

 革を踏みしめる自分の足音、憐の人の足音、壁をつたう自分の手のひらの感触、革の匂い、体中の今まで眠っていたとしか思えない感覚が総動員され、豊かになった自分を発見します。

 駅ホームの点字パネルを踏みしめながら電車がやってくる音を頼りにホームを歩くのはこんなにも怖いことなのか。

 闇の不安、そして豊かさを感じながら、最後のバーにたどり着いたとき、案内人から尋ねられました。

 「暗闇に入ってから何分くらい経ったと思いますか?」

 「だいたい20分ぐらいですかね」

 「45分です」と言われたときの驚き。

 視覚情報が入ってこない分、時が経ってないような気になるのでしょうか。

 やはり視覚障害のあるバーテンダーが注文を聞き、円になって座っているらしいみんなにグラスを持たせてくれて、ビールやワインやジュースをこぽさずに注いでくれたのにも驚きました。

 暗闇体験後思ったのは、日常生活において私たちは視覚以外の感覚に障害を持っているのではないかということでした。

 闇でかわしあった声の温かさ。

 発案者のハイネッケ博士はホームページに書いています。

 「このイベントは、視覚障害者への理解を深めようと企画されたものではなく、もともと私は哲学を学び、人はどうして区別することを好むのだろうか、と考えていた。そこで私は、人の違うところではなく、同じところをみつけるためにこのフロジェクトを始めた」と。

 ハイネッケさん、目的は達成されていますよ。

 最後に案内人の川端さんとかわした握手は、明るい場所でしたが、すでに私の手のひらは今までと明らかに違い、研ぎすまされていましたから。
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by woody-goody | 2005-10-21 08:09 | 体験

国勢調査に思う

 国勢調査。

 国の勢いを調べるのかと思ったら、国の情勢を調べる調査。情勢を知って具体的に何がどうなるの?

 必要性がわかりもしないのに、協力せよと言われても、と二の足を踏む人が多いのはあたりまえでしょう。

 前回の調査から5年経ち、「自分のことはなるべく知られたくない、同じ町内に住む人にはなおさらという空気が濃厚な時代になり、個人情報保護法が法制化されたばかりで、こういう問題にみんなピリピリしてるのにもかかわらず、のんきに5年前と同じ方法で調査が遂行されること
に誰も疑問を感じなかったのでしょうか?

 今回は、なにか別の方法を考えないとまずいんじゃない?と誰かが言い出さなかったんでしょうか?

 しかも、国勢調査員の中には乱暴な人もいたようで。

 また、調査員に対してことさら冷たい態度に出た人もいたようで、あちこちで人情が薄くなった様子が報告されています。

 私のまわりでも、怒っている女性陣がいました。年齢性別くらいならまだしも、なんで会社名や電話番号、未婚か既婚かまで記入しなけりゃいけないのよ!と。そうかと思えば、ネットでは、住民からつっけんどんな対応をされた調査員さんの悩み苦しみが告白され、立場の違う互いが大きな精神的苦痛を味わいながら、でもその苦痛の原因である調査の意義がいまひとつよくわからない理不尽。

 なんのために……これがはっきりしなければ、人は動けない。

 落語の世界でなら、大家さんは日ごろから長屋の住人の細かい相談にものり、あれやこれやで日々の暮らしをサポートしていました。

 自分の町内のことはなんとなしわかっていたという時代。

 いま、それはなくなりました。

 人のことを知りたくもないし、知られたくもないのです。

 知られることのメリツトがあった昔と、デメリツトがある現代。

 たとえばこんなことがありました。

 早朝、買い置きを切らしてタバコの自動販売機を探しにパジャマのまま外に出ました。近所には見当たらず、大きい交差点の向こうにそれはありました。

 と、そこで私に奇妙な感覚が起きました。

 この交差点を渡るのはパジャマのままじゃあまずいと。

 そうです。私にとってパジャマのままで歩けるのが町内。それを恥ずかしいと感じる場所は町内ではない、という基準が、私の体に知らず知らずにあったのです。

 いまや、行政区分はメチャクチャになり、昔のように回覧板もまわってこないし、町内もないも同然ですが、自分にとっての町内感覚は残っていたのです。

 さて、あなたなら、どこまでパジャマで出歩けますか?

 あなたの町内はどこまでか、体に聞いてみると面白いですよ。
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by woody-goody | 2005-10-14 06:56 | 社会

潰瘍ができて嬉しい人

 「私の胃の中に潰瘍ができたときは、本当に嬉しかった」と、こんな変なことを言った人がいます。
 胃に潰瘍ができることを待ちに待った人というのはどんな人か。

 それは、オーストラリアにある西オーストラリア大学のバリー・マーシャル教授(54)です。

 このマーシャル教授は今年、ロビン・ウォーレン名誉教授(68)と共にノーベル医学生理学賞を受賞した人。

 1979年、細菌の一種であるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を発見した教授は、証明するのに自分の体を実験台に使いました。

 奥さんの大反対を押し切ってピロリ菌を飲み、胃に漬瘍ができたことを証明したのです。

 そこまでやるか。

 自分でいくら自信があっても、人に分かるように証明ができなければ、世には認められないのも事実。

 人に頼むわけにはいかないので、我が身を犠牲にするしかなかったのです。

 落語にも「試し酒」という我が身を犠牲?にして、あることを証明する男の噺があります。

 こちらは、さすが落語なので、笑えるオチがついてます。

 ある且那のところへやってきたお客についてきた下働きの男久造。

 いかにも頑丈そうな武骨者。うちのこいつは大酒飲みだと客が且那に自慢をすると、且那は、いくら大酒飲みだとは言っても五升は飲めないだろうと言い出した。さっそく久造に聞いてみると、飲めると思うとの返事。無理だろうという且那と、いや飲めるというお客が一言い争いにな
り、それでは飲めるかどうか賭けをしようということになった。

 さあ、自分の御主人様に恥をかかせるわけにはいかない。

 散財させるわけにはいかない。

 久造は「ちょっと外で考えさせてくれ」といったん外へ。怖じ気づいたんだろうと旦那は勝ちった顔。もう掛け金はもらったようなものとほくそえむ。

 さて、久造の前にある大杯になみなみと注がれる酒に、緊迫した視線が注がれる。一杯、また一杯と久造が杯を飲み干していく。

 もうダメだろう、次の一杯で音をあげるだろうとみなが見守る中、ついに五升飲み干してしまった久造。

 まんまと掛け金をこ主人様が受け取り、めでたしめでたし。

 金を払ったあと、且那は一つ久造に質問した。五升飲み始める前にちょっと外へ出て行ったのは、飲んでも大丈夫な薬かおまじないでもやったのかい?と。

 久造が言うには、いやあ、五升なんて今まで飲んだことがないし、もし飲めなければこ主人様に恥をかかせることになると心配になり、試しに表の酒屋で五升飲んで来た。

 つごう一斗飲んだことになる久造は、まずは自分に証明するために五升の酒を飲んだわけです。

 ノーベル賞はもらえなかったけれど、御主人様の信頼を得た久造はさぞや満足だったことでしょう。

 
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by woody-goody | 2005-10-07 07:04 | 社会


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


by woody-goody

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