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文楽と志の輔らくご

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 昨日から、この時期垣例の下北沢本多劇場ライブが始まっております。ふう。

 29日までの公演なので、これからいらっしゃる方のために詳しく書くのは来週以降にさせていただきますが。

 今年ですでに12回目を迎えたこの公演。

 今までは、たった一人で、トークに一人芝居に落語の3本立ての構成でしたが、今回初めて総勢10名の「文楽」の方々をお迎えしています。

 実は、去年は1年間、満月の夜に、京都は茂山家の皆さんを迎え、落語と狂言のジョイントの会「満月の會(かい)」を11回行いました。

 そこで伝統芸能の楽しさを発見したのです。

 私が文楽と衝撃的な出会いをしたのは忘れもしない5年前のことでした。

 「仮名手本忠臣蔵」の通し公演は圧巻でした。

 劇場に入れば流れるのがあたりまえと思っていたBGMもなく、張りつめた空気の中、チョン!チョン!チョン!と析(拍子木)が入り開演が告げられました。

 上手には義太夫語りが見台を前に座り、三味線弾きも2人、わきを固めています。

 舞台正面には屋敷のセット。

 語られる内容は皆目わからず、ただただ気持ちのいい声が調子のいいリズムにのせられて耳に入ってきます。

 まるで外国人になった気分です。これから長時間、私はこの状態に堪えられるのかどうか不安がよぎったそのとき、下手から人形が出て来ました。

 3人一組で一体の人形を操作する人々。

 2人は黒子で顔が見えず、ただ一人顔を見せているおじいさんは人間国宝なのだとイヤホンガイドが教えてくれました。

 最初は、人形を使う人間の方ばかりに気をとられていたのが、あら不思議、徐々に黒子も人間国宝も視界から消え、なんと人形だけが見えてきたのです。すでにそれは人形ですらなく、それはそれは色っぽいうっとりするような一人の女がそこにいたのです。ふとした首のかしげ方、たもとに添える手の……これをたおやかと言うのでしょう、現実ではあまりお目にかからない恥じらいのある女性がいたのです。聞こえるはずのないこの女性の声を聞いてみたい、と切に願う私がいました。

 最後は、討ち入りを終えた赤穂浪士が勢ぞろいをして主君へ報告する場面。身じろぎもせずさまざまな思いを胸にそこにいる12,3体の人形。緊迫した空気と時間が流れ、私の耳には確かに彼ら一人一人の心臓の鼓動がドクンドクンと聞こえたのです。

 私が文楽から得たそんな感動をお客様にも味わってもらえれば。

 そして、私のライブですもの、趣向もないわけがない……。

 いらっしゃれない方々には、いずれこの紙面で御報告、相務めまーす、チョーーーン!
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by woody-goody | 2005-05-27 07:05 | 芸能

もったいないチャンス

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 日本には「もったいない」というこんないい言葉がある、と耳にしたノーベル平和賞のワンガリ・マータイさん(ケニア副環境相)の提唱もあり、地球規模でこの動きを広めようと毎日新聞がキャンペーンを繰り広げています。

 それにしても偶然とは言え、マータイとモッタイナイは似てる。マータイさんがこの言葉に強く反応したのはこの語感があったからかもね、と思っていた折り、現在の落語ブームについてインタビューされる機会がありました。

 ブームという言葉が使われると、必ず言われるのは、ブームは必ず去るという否定的概念。

 でも、でもですよ。

 たとえ、いずれ去ったにしても、何もなかった頃より落語に関心のある人たちの数は確実に増えるのです。

 ブームを契機にしてたくさんの人が落語に触れます。ある方々は、舞台美術もなにもなく、座布団に座った一人の男がただ話すだけという形式につまんな~いと感じるでしよう。

 が、逆にこのシンプルな形式を面白く感じる人もきっといるはずなのです。

 そのパーセンテージは少ないかもしれません。

 でも1000人のうちの100人より、1万人のうちの1000人が残ってくださればいい。

 今までなら、「どこへ行くの?」と聞かれて「落語を聞きに行くの」と答えれば「え~。落語お~、なんで~、年寄りみた~い」と言われたものが、「ああ、そう言えば、今、はやってるよね、落語。へ~え、面白いんだ。若い人が聞いても面白いの?」という反応が返ってくるかもしれない。それでいいのです。きっかけはなんでもいいのです。

 とにかく、言葉からいろんな情景を思い浮かべる思考回路を楽しめる方々が増えればいい。そんな習憤を楽しいと感じてもらえる方々が増えるといい。

 だって、生涯落語を知らずに死んでいく人を少しでも減らしたいと思って、私は全国へ落語を語りに出かけているのですから。

 この落語ブームの機会を逃すのは、まさにもったいないと思うのです。

 「もったいない」の語源「そのものの値打ちが生かされず無駄になるのが惜しい」からいくと、まさにこの落語ブームを生かさないともったいない。

 このブームは、みなさんが落語に触れる千載一遇のチャンスなのです。

 冷蔵庫の中で干からびたカラスミも、賞味期限が過ぎた鰻頭ももったいないけれど、新たなチャンスを生かし切らないのももったいない。

 そう言えばナタデココはどうなったの?ティラミスは?モツ鍋は?と言う具合に、そう言えば落語は?と言われるようになるかもしれない。でも、落語の奥深さを知り、汲めど尽きせぬ魅力に
離れられなくなる人だってきっと出てくる。

あなたにその一人になってほしいと祈っています。

(以前の記事はhttp://www.bluestone.co.jp/chikutan/shinosuke/theme/backnumber1.htm)
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by woody-goody | 2005-05-20 20:17 | 芸能


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


by woody-goody

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