カテゴリ:芸能( 75 )

つくづく落語って芸能

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 思いっきり短い2月の終わりになりました。

 この2日に恒例パルコ1カ月公演を終え、これまた恒例になったシンガポールからタイのバンコクへ落語を届けにまいりました。

 しかも、今年はフィリピンのマニラ公演も加わるというハードスケジュールの綱渡り移動。

 どんだけ綱渡りだったかと言うと、シンガポール公演の翌日にバンコクへ移動して午後4時開演、6時終演後、スタッフの食事会もそこそこにバンコクの空港へ移動。夜11時過ぎのタイ航空でマニラに飛び、朝4時にマニラ空港に到着。昼まで仮眠、午後3時から落語会。

 とにかく無事に終えられて安堵(あんど)。

 幸運な綱渡りでした。

 今週は、こちらも恒例、今年で11年目になる「全国学生落語選手権」が岐阜市で行われ、学生らしい新鮮な8高座を聴かせてもらいました。

 結果、岐阜大の女子大生が優勝しました。

 演目は、やきもちを焼くふたりの女性の間で右往左往する男を描いた『悋気(りんき)の独楽(こま)』だったのですが、女性のかわいらしさがとてもよく出ていました。

 いまさらですが、つくづく落語は演者の人間性が出るのだなあ、と感じ入りました。

 この翌日が、これまた恒例の「文枝・志の輔二人会」。終演が9時半。後片付けが終わると、さあもう帰れない。

 あ、ここは日本!?

 海外で、前日深夜出発、翌日に落語会、その日のうちに東京へ帰る便があるという体験をしてきた後だけに、あれ、日本国内なのにもう帰れないんだ、と思い直して、頭と体が混乱しました。

 来月の中旬からは、またもや恒例となった、今年7年目になるベトナムのホーチミン・ハノイ公演があります。

 こちらも、今年はミャンマーのヤンゴン公演が加わってハードスケジュール。

 「このスケジュールで各国を渡り歩いてるのを出入国審査官が見たら、ヤクの密売人じゃないかと思われますよね」と高座でしゃべったら、共感の爆笑が起こりました。

 日本中どこでも、世界のどこでも待ってくれている人がいて、終わると笑って帰ってくれる。その笑顔に励まされ、旅の疲れも吹っ飛び、つくづく落語家でよかったなあと思います。

 お客様にとっても、私にとってもわくわくできるらくごのごらく、落語って芸能なんだ、ということを強く再確認しています。

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by woody-goody | 2014-02-28 11:52 | 芸能

厄落とし、できた?

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 あけましておめでとうございます。

 今更何を、と思われるでしょうが、今年最初のコラムだし、まだ1月だし、と思いながら書いてしまいました。

 年明けから本日まで、ずっと恒例パルコ1ヶ月公演「志の輔らくご in PARCO」で渋谷に居続けています。

 あと今日を入れて3日になるこの公演も9年目に入り、私は還暦を迎えます。

 厄払いをしなきゃ、と思いつつ、新作落語を作るのに気をとられ、何もせず迎えた初日に、初のトラブルが起こりました。

 今まで1000回を超えるライブをやってきて、こんなことは初めてでした。

 前代未聞。

 まだ、これからライブを見に来る方もいらっしゃるので詳しくは書けないのですが、落語と落語の間に流す映像が出なくなってしまったのです。

 映像なし、音のみの時間が流れたらしい。

 着替えを終えて、2席目に向かおうとしたそのときに、舞台のソデでトラブルを聞かされ、頭がくらくらしました。

 さあ、どうしよう。

 でも、そこは落語のありがたさ。

 お客様にあやまりながら「本当は、ここに映像が流れるはずだったんです。どういうのかと言うと……」と説明しつつ、笑っていただきました。

 落語という芸能のありがたさに、つくづく感謝いたしました。

 もしもフォローできなければ、「あの音は何だったんだろう?」という疑問符がお客様の頭に浮かび続けて、そうなると次の話にも集中できないでしょう。

 スタッフは言いました。

 「このトラブルで、厄落としができましたね」と。

 ものは考えよう。起こってしまったことはしょうがないので、私もそう思うことに。

 今回は、このあと私の体にトラブルが。

 風邪薬を飲み続けていると、高座でぼんやり、耳が聞こえにくくなり、自分との闘いが続きました。

 そんな日々でも、毎日違うお客さんからもらう「笑い」と「気」が、私に元気を注入してくれました。

 アンケートを見ると、下は10歳から上は90歳のおばあちゃんまで、1万人もの方が同じ空間で笑ってくださる。あらためて落語の不思議さ、素晴らしさを実感しました。

 還暦、原点に立ち返り一席でも多く楽しい高座を、と気持ちを新たにした1カ月でした。

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by woody-goody | 2014-01-31 15:24 | 芸能

人から人への落語会

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 組織より人のつながりが原動力なんだな、と感じ入った会がありました。

 それは、岩手県北上市にある「さくらホール」が今年10周年を迎えての独演会。

 北上には石を投げれば高橋に当たる、というくらい高橋姓が多いらしいのですが2000年当時、ここにいた高橋氏が何度も東京での私の落語会に訪れ、楽屋に来ては「なんとか私たちのホールで落語会を」と言っていただき、その年の暮れに実現したのでした。

 彼の熱のすごさは、「県庁所在地ではない都市で本気で落語会を広めたいと思うのなら、季節ごとに年4回やるぐらいの気概がないと……」と、つい言ってしまった私の提案通り、見事に春夏秋冬の落語会を成功させたことです。

 ホールは収容人数400人の中ホールだったのですが、あれから13年を経た11月30日は10周年を記念して大ホールで。

 地元北上はもちろん、気仙沼や久慈、陸前高田など被災地各所から何台ものバスを連ねて来てもらおうという企画も実現させ、結果1300人のお客様になりました。

 ロビーは、多くの食べ物やグッズの店でにぎわい、長唄三味線の社中の皆さんがライブ演奏。ハレの気分が満喫できる演出に、遠方から来た方々もさぞや驚かれたことでしょう。

 実は、この日のために1年前から企画制作の指揮を執っていたのは高橋氏の部下の小笠原氏。

 高橋氏は何年も前に市役所に戻り、3年後の「岩手国体」の準備の要になっているそうなのです。

 高橋氏から情熱のバトンを受け継いだ小笠原氏。

 舞台準備の途中、舞台ソデに人影が。

 見ればあの高橋氏が。

 なんとうれしかったことか。

 「今日の全ての原点は『北上に落語を定着させたい』と東京まで何度となく通って、私を12年前に呼んでくれたからだよね。あなたの意思を受け継いだ小笠原君もすごいけど、スピリッツを与えたあなたもすごいよね」と、何年ぶりかで握手を交わしたのでした。

 彼らは公務員です。

 正直、公務員の中にはあまり熱のない人も多く、そのせいか、そのせいでしょう、寒々しい落語会を何度も経験してきました。

 私の新作落語「歓喜の歌」の創作意欲の原点は、役人への糾弾でしたから。

 でもこの日、私ははっきりと再確認したのです。

 情熱は、スピリッツは人から人へ伝わるものだと。もちろんその人を支える多くの人がいることも。

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by woody-goody | 2013-12-06 13:22 | 芸能

ジブリ「かぐや姫」

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 なんと「かぐや姫」に私が出ています、もちろんこの声で。

 師匠談志が「俺とお前の声とどっちが悪いかねえ」と言ったほどのさわやかな美声(笑)がお役に立つときがくるなんて。しかもそれがジブリの作品だなんて。

 実は私、落語家になる前は広告の世界にいたものですから、二つ目時代はCMのナレーションの仕事で、ずいぶん助けられました。

 映画での声の出演は初めてです。それも斎部秋田(いんべあきた)という役名まで言われて依頼があった時は、本当にうれしかったですね。

 ところが収録現場って、映し出された映像を見ながらセリフを読むものだとばかり思っていたのですが、スタジオに入ってみると私がたった一人。

 しかも、スクリーンを背に、私の前にあるのは私が演じるキャラクターの絵が載った譜面台。

 そこへ、あの高畑監督がいらして、斎部秋田のキャラクターのイメージを説明してくださいます。

 「耳が遠くすっとんきょうな大声で話す秋田で」とリクエストされたセリフは「ああー、かぐや姫のことでございますなー」

 この出だしの「ああー」がうまく出せない。

 監督のイメージ通りにするために何テーク録ったことでしょう。迷惑をおかけしました。

 落語家の場合、すべてのキャラクターを演じるのは自分。その出来にOKを出すのも、NGを出すのも自分。じゃあ今度はこういうふうにやってみようか、と演出するのも自分ですから、誰かにOKを出してもらうために何度も繰り返すというのは、歯がゆいながらもなかなか新鮮で得がたい体験でした。

 「サングラスをしていない黒澤明さん」とでも呼びたいような高畑監督の話し方はとてもソフトなのですが、奥底からOKするまで絶対に帰さないからね、というオーラ、作品に対する並々ならぬ情熱が伝わってきました。

 私の声に合わせて作画の方が絵をつけていくわけですから、監督も安易にOKは出せないのでしょう。

 それにしても近ごろは落語を聴いてくださるお客様が、ずいぶん増えました。

 それは、古典落語には、日本人が失いつつある「けなげで温かい情」が描かれていて、そこに共感したり癒やされたりするからでしょう。

 「かぐや姫」にも随所に共通した情を感じました。ただいまロードショーの真っただ中。

 ぜひ、映画館へ足をお運びくださいませ。

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by woody-goody | 2013-11-29 11:21 | 芸能

談志、勘三郎丈、追悼

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 21日が、家元立川談志の命日、三回忌でした。

 そして、今日は弟子やゆかりのある方々が総出の追悼公演「談志まつり」2日目です。

 先週14日は、家元談志と親子のように親しかった中村勘三郎丈の一周忌公演に参加したばかり。

 場所は、長野県のまつもと市民芸術館。

 なぜこの場所なのか、当日の公演パンフレットにプロデューサーでもあり親交の深かった弟弟子談春くんが書いています。あまりの名文、本番前にこれを楽屋で読み、胸がいっぱいになったくらい。

 なのでここにほぼ全文を掲載させていただきます。

 「……眩(まばゆ)いほどの輝きを放った人でした。談志亡き後、芸の上で困ったときは中村屋に教えてもらえばいいと、それで己を安心させられるほど芸の幅と深さを持った人でした。

 私と中村屋の縁はご当地松本が取り持ってくれました。拙著『赤めだか』を中村屋が涙を流して読んでくれたのがこの松本の楽屋。それから私を可愛がってくれました。だからこの会はどうしても東京ではなく松本でやりたかった。亡くなる前年の暮れに奇跡的にスケジュールが合って実現した、さだ、勘三郎、志の輔、談春のゴルフ。それぞれの世界の金看板に刺激という名のご褒美を神様がくれるために引き合わせてくれたと、今となっては思います。さだまさしも立川志の輔も、あなたのためならと駆けつけて来てくれますよ。我々ではフォローしきれないかもしれない歌舞伎役者中村勘三郎の凄さは串田和美さんに教えていただきます。<中略>

 あらかじめお断りしますが、今日は長い会になります。そのための17時開演です。中村屋の思い出を語るだけでなく出演者が、それぞれの表現で中村屋を送ります。だから終演時間が未定です。覚悟してね。

 哲(のり)さん。あえてそう呼ばせてください。今日は出演者だけでなく、この会に関わる人たちとお客様も含めて全ての人であなたにエールを送ります。あなたが、次の世界でも、あなたらしく生きられるために。そしてこの会を好江夫人に捧げます」

 この日は談春と私の高座や飛び入りの鶴瓶師匠の爆笑落語、さだまさしさんの心温まるミニコンサート、さらにこのホールの芸術監督でコクーン歌舞伎の演出家・串田和美さんによる勘三郎秘話の数々、本当に素晴らしい追悼になりました。これを成し得たプロデューサー談春に限りない拍手を送ります。

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by woody-goody | 2013-11-22 11:29 | 芸能

天野さんの隠居大学

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 落語のよき理解者であった天野祐吉さんが、この20日に旅立たれました。

 落語の、技術論でもなく作品論でもなく、演者論でもなく、みんなにひらったい言葉で落語の世界の豊かさを紹介する役を担われ、ついにはご自身がずっと憧れていた「御隠居さん」になられました。

 隠居になるための作法を学ぶ隠居大学まで始められたんですから。

 時代の先取りをすることにかけては最前線の広告を扱う「広告批評」という雑誌をつくり、その後は正岡子規記念館館長、名誉館長になり、そうそうたるメンバーで「子規亭 新・道後寄席」も始められ、中身は講演、落語会、対談と魅力的な空間をプロデュースされていました。

 10年間毎年独演会を開催してくださり、その度に対談もしていただきました。

 師匠談志が落語協会を出たこともあり、さまざまな試みをしてきた私の落語を温かく見守ってくださった方でもありました。

 そうそう、あれは1997年の11月に毎日新聞東京本社の地下ホールで天野さんとの対談付きの落語会をしたことがきっかけで、共著「話の後始末」という本も出してくださいました。

 そのあとがきが素晴らしかった。

 私の落語のマクラを「いつもいまを呼吸している」とほめてくださり、「芸人は、この世で最も生きのいいジャーナリストでなければいけない」と激励してくださいました。なぜなら、「主に江戸が舞台である落語は世にもおかしな宙づりの世界。この世界に入っていくためにはマクラという助走路が必要なのだ」と。

 で、「この本は志の輔さんとの世間話である」と。

 ここで天野さんは、「いま、世の中から世間話がなくなってしまっている」と嘆き、「いっとき、テレビのワイドショーが世間話の場になっていたように見えている時期もあったけれども、いまはワイドショーからは世間話が見えなくなった」と。

 「人と人は世間話でつながっているんじゃないかと思っているぼくにとってこれはユユしき事態である。やっぱり世間話は、サイコーのヒマつぶしであり、究極のレジャーであって、それがない世の中はひどくギスギスしたものになってしまうと思うのだ」と書き、最後をこう締めくくられています。

 「またどこかで会って、世間話をしましょう」

 今年三回忌を迎える師匠談志とも、今ごろ世間話をされていることでしょう。

 ヨッ、最高の御隠居!

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by woody-goody | 2013-10-25 16:53 | 芸能

今年も気仙沼で寄席

 さあ、「第2回気仙沼寄席」の季節がやってまいりました。えっ、2回目があるなんて思わなかったって? 今年も糸井重里さんは熱いのです。

 思えば一昨年、震災の年の暮れ。糸井さんから相談したいことがある、と持ちかけられたのがきっかけでした。「目黒のさんま祭りで焼かれる5000匹あまりのサンマは、気仙沼の人たちが自費で東京まで持って来てくれてるって知ってました?」

 初めて耳にする事実に私はびっくり。

 「で、実はその気仙沼で落語会をやりたいんです。でも決して慰問の会ではなく、気仙沼市民の皆さんにサンマの代金を、自身で稼いでいただこう、つまり落語会スタッフになってもらって、落語会の収益をサンマの代金に充ててもらおうという企画なんです」

 いかにも糸井さんらしいユニークな企画で、二つ返事で「やりましょう」と答えました。

 去年の「第1回気仙沼さんま寄席」では、全国から1000人を超すお客様が気仙沼を訪れ、私の落語を聴いてくれました。こんなことがなければ、生涯落語とは無縁だったかもしれない方々もたくさん。

 あの日の興奮は今までの落語家人生で味わったことのない、言葉では言い表せない感動でした。地元の子供たちの太鼓や舞に秘められた願いを思うと、頬を熱いものがつたいました。

 伝統芸能である落語が、こんな大災害に見舞われ、大変な思いで毎日を生きる人々の心に果たして届くものだろうか。会の直前まで抱いていた不安が、皆さんからいただいた拍手や笑顔で吹っ飛びました。

 もちろん、現地でみんなといただいた、富山弁ではキトキトと表現するのですが、新鮮なサンマのうまさと言ったら、筆舌に尽くしがたいとはこのこと。

 さあ、9月28,29日の2日間に第2回を行います。1日増えたのは「地元のスタッフさんにもぜひ見ていただきたい」と前夜祭落語会を私から提案したからなのです。ならば「土曜日は東北6県からのご応募限定落語会」と、糸井さんのアイデア。日曜日は全国からご応募OKだそうです。

 津波で陸まで乗り上げた漁船「第18共徳丸」が、市民投票で撤去が決まったとニュースで知り、去年実際に見上げたときの感慨がよみがえりました。

 どうぞ、ご都合がつけば、去年いらした方も、今年初めての方も、そして東北のお知り合いにも、ぜひお声がけいただいて、気仙沼でお会いしましょう。

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by woody-goody | 2013-08-30 11:54 | 芸能

千秋楽は投票日

 こんなに続くとは思ってもいなかったのです。

 恒例の下北沢本多劇場公演、三遊亭円朝作「牡丹灯籠」のことです。

 今年は16日から6公演になりました。

 思い起こせば7年前。たまたま「円朝全集」のページをめくっていた時のこと。

 あの「牡丹灯籠」でしょ? と思いつつ、「いくら読み進んでも知ってる場面が出て来ないぞ」と。

 知ってる場面とは、皆さんもよくご存じの幽霊がカランコロンと下駄を鳴らしながら、愛する人の家を訪れるというシーンです。

 「お露と新三郎」「お札はがし」、さらにせいぜい「お峰殺し」や「関口屋のゆすり」。私が知ってる「牡丹灯籠」は全体の三分の一に過ぎなかったと気付きがくぜん。「案外、私みたいな人がたくさんいるんじゃないかな」「そうだ、これを一気にやってみたい」という気持ちが、むくむく沸き起こってきたのです。

 明治17年、円朝師が15日間連続30時間ほどもかかっただろうこの噺を、私は2時間ほどでやってしまおうと決意したのです。

 ところが現在、落語にもなっているところは、残っているだけあって面白いところばかり。全体の「いいとこどり」が作品となって語り伝えられてきたのです。でも、全体が見えないので、聴き終わった後には頭の上にクエスチョンマークがいくつも浮かぶということにもなるのです。

 そこで一晩で全体像もつかめ、それが故に印象的な場面に深みを与えられるような「志の輔版・牡丹灯籠」をこしらえるのに心血を注ぎました。とにかく、お帰りになる時にお客様の頭にクエスチョンマークが浮かばぬように、すっきりした頭で帰っていただけることだけはお約束できる構成に致しました。

 5年目の再再再再公演です。

 つくっていてつくづく思ったのは、幽霊という概念を等しく持つ日本人のありがたさ。西洋のモンスターやゴーストと違って、円山応挙が描いた絵がお手本の、両手を前へだらりと垂らし、足がない幽霊キャラクターが、お客様の頭に描かれるというありがたさ。

 一応、怪談「牡丹灯籠」と銘打ってはありますが、聴き終わった後、「これって怪談噺じゃないよね」と思っていただけるかも。

 そう、それが狙いです。

 去年からスケジュールを決めていたとは言え、選挙ウイークに重なるとはね。最終日が投票日。「こいつぁー、夏から縁起がいいわい?」

 お待ちしています。

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by woody-goody | 2013-07-12 16:36 | 芸能

イグノーベル賞受賞?

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 知る人ぞ知るイグノーベル賞は「ユニークな研究に与えられる」賞です。どう考えても無駄な研究と思えるものであっても、そこにユーモアが感じられたり科学に興味を持つきっかけになれば、という願いが込められています。

 例えば、日本人が受賞した例で言うと、「火災などの事故で眠ってしまった人を起こすのに、ワサビを嗅がせたら有効だった」という事実を聴覚障害者用の火災報知機開発研究に役立てたり、山岳地帯や山間部に鉄道を新設する際に粘菌の特性を利用して最短距離の路線を見つけたり、台所の生ゴミを減らすのにジャイアントパンダの排せつ物から採取したバクテリアを研究したり……。

 こんな身近なところから発想された研究が、案外大発見につながることもあるのではないでしょうか。

 さて、今週の「ためしてガッテン」を、ご覧いただけたでしょうか?

 私が司会をしている番組なので「手前みそ」になりすぎるか、とコラムでは紹介を控えていたのですが、今週の実験と成果はイグノーベル賞ものだなあ、と自信を持っているので、ここにご紹介する次第です。

 炭酸飲料を落としたり、車で運んだ後にフタを開けると、いきなり泡が噴き出て中身が3分の1くらいに減ってしまったという経験は、みなさん一度や二度はおありでしょう。ガッテンスタッフは、これを何とかすべく、いろんな実験を試みました。

 瓶や缶を転がしてみたり、握ったり、指ではじいてみたり。思いつくことはすべてやってみました。

 で、ついに発見!

 30秒で解決したのです。

 落としてしまった瓶でも缶でも喉に当てて30秒間、「あー」でも「うー」でも。何なら歌ってもいいのです。

 要は、細かい震動を与えること。で、開けてごらんなさい、あーら不思議、泡は出なくなるのです。

 メカニズムはこうです。

 激しく振られた炭酸飲料の容器の中は、小さな泡でいっぱいになります。フタを開けると、この小さな泡が周囲の液体をも巻き込んで一気に上昇、噴き出すというわけです。

 つまり、噴き出させないためには、小さな泡をなくせばいい。要するに「泡の噴出の原因となる小さな泡のもとを声の震動で消してしまおう」というわけです。

 スタッフはイグノーベル賞応募方法を調べ始めました。何かいい方法をご存じの方、ご一報を。私はいま、受賞ステージで着用するタキシードを注文しようかと考え始めています(笑)。

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by woody-goody | 2013-07-05 12:30 | 芸能

トルコに落語のルーツ?

 トルコと言えば今、暴動が起きていてそれどころじゃないのですが、私には行きたい理由があるのです。

 かつて、アジアとヨーロッパをつなぐイスタンブールを訪れた時のこと。とある劇場で、いろんな国から集まった人たちを、それぞれの母国語を駆使して笑わせた、あっぱれな話芸の達人を見たからなのです。

 それとは別に、このコラムで紹介したこともあるムズラック・ハリト君はトルコから大阪へ来て日本語の勉強をするうち「落語」に出会い、自ら日本語で落語をするようにもなり、ひょんなことで私と知り合い、私の落語会のゲストに出てもらったこともありました。

 その後、彼は大学院を卒業。トルコに帰り、先日こんなメールが届きました。

 「以前、志の輔さんの落語会にゲストで呼んでもらったことは、とてもうれしかった。その時のお礼と言ってはなんですが、トルコのメッダリクを聞きに来ませんか?」

 なんでも、手にハンカチと杖を持ち、極彩色のマントに山高帽という風体で一人語りをする人をメッダと呼び、その話芸をメッダリクと呼ぶそうです。

 演劇も禁止されている厳しいイスラム社会で、伝説や英雄の叙事詩のような古典は言うに及ばず、恋愛や時事ネタや流行を取り入れた新作、そこに風刺や毒も盛り込んで笑わせる伝統芸能なんだそうです。現在、これを演じる人は少なくなり、無形文化遺産に登録されているとか。

 ハリト君は、このメッダリクがシルクロードを経て中国、朝鮮から日本へ伝わったのが落語になったんじゃないかと研究し続けているのです。かつて、イスタンブールで見た男に、その伝統が引き継がれていたのかもしれません。

 メッダリクの一例をあげると……。

 同じ屋根の下に住む酒飲みのハサンとフセインがおりました。船で荷物や人を運ぶキツイ仕事の毎日。ある日、自殺を試み間違って船に落ちた娘を助けたハサンは恋に落ち、二人は幸せに暮らすようになりました。これを妬んだフセインが娘に嫌がらせをしているところを見つけたハサンはフセインを殺し、翌日、ここへ現れたスルタンが……。

 なんか落語の人情噺のようでしょう?

 連綿と継承されている落語と違ってメッダリクが減少した理由は、亭号もなく流派も師弟関係もなかったからじゃないか、とハリト君は言いました。

 だとするなら、落語界のシステム、よくできてるってことですね。

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by woody-goody | 2013-06-21 16:04 | 芸能


立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)


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