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立川志の輔のエッセイ(毎週金曜日毎日新聞に掲載)

by woody-goody
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伊能忠敬物語が…

 本州で見られるのは129年ぶりの金環日食とあって、観察用の眼鏡の売れ行きは好調、眼鏡付き雑誌は売り切れ、と大いに盛り上がっています。

 小中学校では登校時間をずらすところまで。

 このご時世、見るだけではなく携帯で撮影しようと考える多くの方へ、太陽に向けた携帯画面を見ただけでも目に影響が出るので、目からずらした状態で、レンズだけ太陽に向けましょう、とワイドショーで注意を呼びかけていました。

 これをきっかけにして、一気に天体に興味が向いた方々も多いことでしょうが、子午線一度という言葉をご存じでしょうか。

 北極点と南極点を結んだ地球半周の距離を正確に出すためには、まず子午線一度分を測定しなければなりません。A地点からB地点までの距離が長ければ長いほど正確になります。子午線一度の長さがわかれば地球の大きさがわかるのです。

 200年前、この子午線一度を知る夢に一生を懸けた男がおりました。

 日本列島を歩き回り、日本地図をこしらえた伊能忠敬その人です。

 私の新作落語にこの伊能忠敬のことを描いた「大河への道」というのがあるのですが、実は、先日、事務所にこんな手紙が届きました。

 伊能忠敬の地元、千葉県香取市佐原の伊能という名字の方からでした。

 名付けて「伊能忠敬NHK大河ドラマを目指す推進協議会香取準備会」というのが発足しているらしく、忠敬ゆかりの地である香取市にはじまって、九十九里町、江東区、台東区なども入っています。

 面白いのは「大河実現への狼煙(のろし)」第一弾として、推進者である会員まで募集していることです。

 あれえ、ほんとになっちゃったよ、と私が笑ったのは、だって、「大河への道」をすでにご覧になった方ならおわかりと思うのですが、この新作落語の内容は、「ひょっとして伊能忠敬物語を大河ドラマにしたらどうか」と県や市が動きだし、でもやっぱりなんぼなんでも無理だよね、とため息まじりに台本作家がつぶやくところで終わっているのですから。

 でも、でもですよ、この夏どこかで再演することがあって、それを見ていただいて、実際に旧佐原市で上演できたら面白いですよね。

 偶然、週末はこの落語を京都で再演しております。

 さて、想像の世界では実現しなかった物語が、実際の世界で実現するとしたら……。

 ふふ、面白いですよねえ。

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# by woody-goody | 2012-05-18 12:07 | 社会 | Trackback | Comments(0)
理解に苦しむ

 理解に苦しむ。

 一審で無罪とされ、党員資格も復活、その翌日に控訴された小沢一郎議員が発した言葉。

 青天の霹靂で思わず口をついて出たのでしょう。

 ワイドショー的に言えば、俳優の二股愛をマスコミが毎日追い続けるのも理解に苦しむが、そうか、舞台の宣伝も兼ねていたのかと思うことにすれば疑問も解け、理解に苦しまない。

 最近で言えば、猫ひろしさんの五輪大会出場資格が取り消されたニュースも、最初は理解に苦しんでおりました。

 なんで、わざわざカンボジアまで行くんだろう、どうやら特別枠があって、基準のタイムに達していなくても出場することができるらしい、それにしても国籍移籍後、1年に満たないとアウトなんだったら、そんなことくらい調べて行けばいいじゃないかと理解に苦しみ、調べてみたら、この規則ができたのはなんと今年に入ってから。なら、前もって調べようがないことがわかり、私的には理解に苦しまずにすんだ。

 が、それって、またよくある、日本が得意なスポーツのルールを急に変えたりする、嫌がらせなんじゃないの?と思ったら、実は事情があった。

 中東の石油産出国が金にまかせてアフリカの有力な選手を引き抜いていたという事実。この乱用をなくすために、急きょできた規則なのだそうです。

 たくさんの国の選手が五輪に参加できるようにと新しいルールをつくれば、それならとそのルールを利用して頭をひねる選手の選ばれ方が考え出され、それを規制するためにまた新たなルールができる、と、しょせん人間の考えることはいたちごっこです。

 猫ひろしさんはそのとばっちりを受けたとも言えましょう。そして、4年後リオデジャネイロ五輪を目指し、カンボジア人の38歳選手として出場する意欲を見せ、とにかく走りたいんだ、という情熱を見せてくれました。

 しかし、これを契機にオリンピックってそもそもなんなんだ?ってことも考えさせられますね。

 なんといっても、理解に苦しむで言えば、これはもう原発でしょう。あれだけの惨事を引き起こし、原発から出るゴミの処理もできぬまま、ああでもないこうでもない、ぬらりくらりと再稼働に向けての道を残してくのはなんでだろう。あんなひどいことが起こるくらいなら、やめようよ。こんな単純なことがどうして通らないのか、最大の理解に苦しむ案件です。

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# by woody-goody | 2012-05-11 12:18 | 社会 | Trackback | Comments(0)
「サラリーマンNEO」に

 以前から大ファンで、DVDも全て持ってるぐらいに好きなNHKの番組「サラリーマンNEO」に出演することになりました。

 間や画面のカット割りも十分に計算した上で練り上げられている、とても上質なコント番組で、ことあるごとに大好きな番組だ、とあちこちでしゃべっていたら、ついにプロデューサーさんから「出てみませんか?」と。

 好きではあるけれど、自分が出る側になっても何もできないことはわかりきってるので丁重にお断りしようと思っていたのですが、心の声がささやきました。

 「もし出演できたら、一生の自慢の種かもよ」

 演出家の方からは「大丈夫ですよ、心配しないで」とあたたかく励まされ、こうなったら、生瀬さんをはじめとした大好きな役者さんたちの胸を借りてやるしかないかと覚悟を決め、台本を広げたものの、なんということでしょう、台詞が覚えられないのです。台詞の数じゃないのです。長さでもないのです。演じるのは、会議室で論争する5人のうちの、一番年上の役。ものの3,4分のコントなのに、短い台詞なのに。

 日ごろ、落語会を終えると、いろんなお客様が楽屋にやって来ます。「いやあ、よかったよ!」と豪快に笑い飛ばす人あり、言葉を探しあぐね、もじもじしてる可愛い顔あり、差し入れの酒やお菓子がいかにうまいか、入手が困難かをしゃべり続けるセールスマンのような人あり、その多彩さは見てて飽きません。

 自分が舞台を見に行ったときも、どう感想を言えばいいものか悩むのでお互い様といったところです。

 そんな中、よくあるのが「あんなに長い落語をよく覚えられましたねえ」という質問のような感想です。

 はっきり言って、私は短期の記憶には自信があります。落語の場合は、たとえ1時間半にわたる落語でも、短期の記憶を、繰り返し繰り返ししているうち長期の記憶として脳の中に保存されていくのです。

 ところが、コントとか芝居とかいうものは、相手があるからなのか、作家さんが作った台詞だからなのか、とにかく覚えられないのです。

 こんなにも不安で、夜も眠れずハラハラドキドキの仕事は久しぶり。

 いよいよ今日これから収録に行ってまいります。どうなりますことやら。ご期待ください。

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# by woody-goody | 2012-04-27 12:09 | 社会 | Trackback | Comments(2)
70%は「かなり」
 テレビを見ながら22歳の息子がぼそっと言いました。

 「ねえ、地震が起きる確率が70%ってどういうこと?」

 酒を飲みながら一緒に画面を眺めていた私は「なんだって?」と一瞬酔いが冷めました。

 ニュースは続けて「首都東京にマグニチュード7.3の地震が起きると、従来の想定を3000人以上、上回る9600人の死者が出るとの報告書をまとめた」と重々しく伝えています。

 おそらく近い将来、間違いなく来るであろう大地震。それに備えるための情報には違いないのですが、あまりの息子の素朴な質問にとっさに「来る確率は高いから、気をつけろよ、ってことだ」と父親としてなんの威厳もない答え。

 翌朝、落語会にもよく来てくださる、テレビでもおなじみの数学者、秋山仁先生に電話をかけました。

 まだ起きたばかりでぼんやり気味の先生は、やはり私と同じく「なんだって?」と一瞬、聞き返されました。

 また馬鹿な落語家が変なことを聞いてきたな、と思っているらしい気配が電話のこちらに伝わってきます。

 以前にも、微分積分ってなんの役にも立たない、なんで高校であんなに時間を使って習わなきゃいけないのか、という質問に対して、たとえば車が行き交う道路を走って渡る場合に微積分を使ってるんです、と一例をあげ、実生活で役に立ってることを懇切丁寧に証明してもらったことがあったものですから。

 しばらくあって先生は「うーん、つまりね、70%だから、かなりの確率で来るぞ、ってことですわ」。わー、私が息子に答えたのとおんなじだー。

 このあと、Σをはじめとする数学の専門用語を使っていろんなことを説明してくださいましたが、私の頭はそれらを右から左に聞き流し、残ったのは「70%って、かなりってことなんだ」だけでした。

 専門家がたとえどんなに貴重なデータを出したとしても、それを読み解く力がなければどうしようもない。人は信じたいことしか信じないと言われるとおり、思うのは、できれば30%の方であってほしい、せめて風呂とトイレに入ってるとき以外であってほしい、などなど。

 70%用の備えと90%用の備えに違いはなく、当事者としては来るか来ないか、常に50%の確率です。

 データをそれぞれがどう使うか、あなたの備えは、何%ですか?

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# by woody-goody | 2012-04-20 12:36 | 社会 | Trackback | Comments(0)
驚きニュースの頭山

 昨日の新聞には、驚きっぱなしで、もうもう、何をどう考えればいいのか頭の中がぐちゃぐちゃになりました。

 スポーツ紙に、私を含めて演芸人があまりにもお世話になっている高田文夫先生が緊急入院のニュース。嘘!という言葉がまず口から出ました。たしかに、ここのところ超忙しいスケジュールであったことは確かですが、いまのところ、詳しい事情がよくわからず呆然、というのが正直なところです。一日も早い復帰を願うばかりです。

 そんな身近でショックなニュースの一方で、スマトラ沖地震、2004年にあったばかりの、100年に一度、1000年に一度の大地震がこんな頻繁にあっていいのか。よくないと言っても起こっている事実は消えません。

 その記事のそばには、「震災悪質商法3万件」の見出しが。弱みに付け込んでなんでも考える人がいるものです。「被災された方への特別支援キャンペーンです」とか「被災者支援の広告を出してもらいたい」という電話が突然かかってきて、被災地の高齢者を中心に詐欺商法が行われているのだとか。

 あいた口がふさがらず、あんぐりあいたまま。

 あけたまま思うのは、北朝鮮のミサイル打ち上げ。どう気をつければいいのか、ただただビクビクするしかない実況中継に怒りもこみ上げてきて。

 この前の日曜日には、沖縄の那覇で一年ぶりの独演会。パトリオットの配備が伝えられる中、スタッフは「なんでこんなことに神経を使わなければならないのか」と怒り心頭。旅行者のキャンセルも出ているらしく、そんなところにまで影響が、と驚いたと思ったら、野田総理と自民党谷垣総裁の党首会談の無内容に、またまた口あんぐり。東日本大震災の復興をどうするか、原発をどうするか、あげればきりがない問題山積みなのに、相手の言葉尻を指摘しながら「消費税の問題に待ったをした」だの、「待ったのはそっちだ」だの、子供の喧嘩か。時間つぶしの会談。本当に日本は大丈夫か。

 思わず、落語「あたま山」が浮かびました。

 頭の上に桜が咲いて、花見客がどんちゃん騒ぐ、あまりにうるさいので桜の木を引っこ抜いたらその後に大きな穴があき、そこに雨が降って水がたまり池になり、今度は釣り人がわんさか来てまた大騒ぎ。ほとほと嫌になった男は、自分の頭の池に身を投げて死んだとさ。

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# by woody-goody | 2012-04-13 12:05 | 社会 | Trackback | Comments(0)
底力

 台風でもないのにあんな気象状態が存在するんだと思い知らされた一昨々日でした。

 その名も爆弾低気圧。「爆発的に発達する」ことから名付けられたとされる温帯低気圧。

 でも「『爆弾』という表現は不快感を与える」というので、気象用語として正式に認められてはいないようですが、あちこちで起きた甚大な被害を思うとき、確かに爆弾並みの怖さだったと思い知りました。

 ところが、2〜3日前からテレビ画面で「爆弾低気圧」という言葉を何度聞いても、私には、ピンときていませんでした。

 恐怖よりも滑稽な感じをそこに感じてしまっていたのです。

 今や、ミサイル、津波、地震、濃縮ウラン、原発、などがより恐ろしい言葉として広まっている中で、爆弾は時代錯誤で現実味が感じられなかったのです。それはなぜだろうと考えると、きっと、爆弾という2文字が使い古された言葉になっているからでしょう。政治家の爆弾発言が報じられ、よくよく聞いてみると、実に中身のない内容で、爆弾でもなんでもなく、ただマスコミが面白おかしく騒いでるだけだった、ということもありました。

 爆弾という恐ろしい言葉が、あちこちで比喩として使われ過ぎて本来の意味が薄れ、まひしてしまっていたの
です。

 言葉は難しい。

 まるで逆のこともありました。

 春の選抜高校野球開会式の宮城県石巻工業高校、阿部翔人主将の宣誓が見事でした。

 画面を見ながら、ラジオを聴きながら、日本中が涙にあふれたのではないでしょうか。

 たった2分でしたが、後半部分「日本がひとつになり、その苦難を乗り越えることができれば、その先に必ず大きな幸せが待っていると信じています。だからこそ、日本中に届けます。感動、勇気、そして笑顔を。見せましょう、日本の底力、絆を」。

 この「見せましょう」にぐっときてしまいました。普通なら「見せます」「見せられるように頑張ります」でしょうが、とっさに口からついて出たのか練られた原稿なのか、この優しい言い方が胸にぐっと迫ってきたのです。選手の宣誓などという場で、使われなさそうな言回し。このミスマッチな感じが、ありがちな言葉をよみがえらせたのです。

 少々落ち込み気味の私も言います。近いうちに、見せましょう「新・志の輔らくご」。

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# by woody-goody | 2012-04-06 12:57 | 社会 | Trackback | Comments(0)
「気」仙沼の「気」は消せん

 朝7時、東北新幹線の一ノ関駅に降り立つと、地元のコーヒー屋さんが車で迎えに来てくれていた。この方のお店もまるごと津波で流されてしまったが、車中、努めて明るく話す様子に、外から来た者への気遣いが感じられて温かい気持ちになる。

 さあ、いよいよ「さんま寄席」のスタートだ。

 約1時間半かけて気仙沼に到着。

 海岸から何キロもあるのに、津波で運ばれた大きな遠洋漁業の船が横たわっているのを見ると、覚悟していたとは言え、ぎょっとなる。

 こんな大変な目にあった方々の前でいったいどんな落語をやればいいのだろう、と気持ちがどうにもあがらない。

 と、車の外をみやると会場への案内プラカードを持った東京から来た若者が町の角ごとに立っている。

 初めて気仙沼に降り立った彼らが、後から来る1000人のお客さんがスムーズに会場にたどりつけるようにと頑張っている姿に、この一瞬で私にスイッチが入った。

 主催者糸井重里さんとのコタツトークをはさんで、私の落語2席の後に、地元の方々による大漁祝い歌「どや節」が披露された。

 自分で言うのもなんだが、本当にいい落語ができた。

 これはとにかく、町中にあふれていた「気」の塊のおかげだと思う。

 主人公は誰でもない、気がついたらみんながつながってできあがったいい時間と空間。企画をした糸井重里チーム、現場の運営をしてくれた気仙沼の人たち、東京から訪れた1000人以上の人たち。

 名目は観光でもなんでもいい、とにかく被災地の現状を見てほしい、そしてそれを伝えてほしい、という「気」のすごさ。

 なにかしたいという潜在的な気持ちをこの会をきっかけにつかみたいと集まった人たち。三位一体という言葉があるけれど、まさに、これほど「気」が充満してそろった会場で落語がやれたことを幸せに思います。

 沖にいる船が、陸にカツオの収穫高を知らせる「大漁唄い込み」。2番から歌えば200本、3番から歌えば300本、これに合わせて陸では、沸かすお湯の量を決めたと言います。20人ほどの歌声を聴きながら手拍子する糸井さんと私。熱いものがこみ上げる。「気」ってなんだ?と広辞苑を引いたら「精神の盛り上がり」とあった。そうだろうそうだろう、「気」仙沼だしな、と思った一日でした。

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# by woody-goody | 2012-03-30 17:31 | 列島各地 | Trackback | Comments(0)
ベストな解凍、氷水
 そもそも食料は、とれたその場所でそのとき食べるのが基本でした。が、時代が進むにつれ、どんなに遠く離れた場所でも、ときを経ても、同じように食べられればいいな、という願いをかなえるべく、物流と保存技術が発達しました。

 距離と時間を克服する方法、それは冷凍技術。おいしさそのままを食卓へ届けるために、冷凍技術の進歩にはめざましいものがあります。それに比べて解凍技術はどうでしょう。

 高価なステーキやマグロを冷凍でいただいたのはいいけれど、解凍方法を間違ったために台無しにしたという経験をおもちの方も多いことでしょう。

 冷凍庫があるのに、なんで解凍庫がないんだろうと常々思っていました。

 その解凍庫が発売されない理由がわかったのです、先週放送になった私が司会をする番組で。御覧になれなかった方もびっくり!

 キーワードは「解凍とは加熱することにあらず」。

 つまり、温度をあげていけば解凍になるという勘違いが、解けるときに食材から出る汁、いわゆるドリップをたくさん出して一緒にうまみも逃がしてしまってるというわけなのです。

 結論を言いましょう。

 水道を流しながらの「流水方式」も、ただただ放置しておく「自然解凍」も、冷凍庫から移す「冷蔵庫解凍」も、どれもベストではありません。

 ベストアイテム、それは「氷水」です。

 そもそも解凍というのは、食材を「マイナス3度から0度の間にする」とおいしくなる。これは食材が凍り始める温度、食品業界では「氷温(ひょうおん)」と呼ぶそうです。

 たとえばカツオの氷温はマイナス2度。

 水が凍るのは0度。

 なので氷水につければほどよい温度に解凍されるというわけです。

 東京海洋大学の食品冷凍学研究室の報告では、この方法だと、冷蔵庫解凍よりスピードは速く、ドリップも少ないという驚きの結果が出ています。

 ここでおわかりでしょう、解凍庫が発売されないわけが。

 だって、「夢の解凍庫、新発売」と銘打った家電製品のフタを開けてみたら、ただ氷水が入ってただけってことになりますもんね。

 ぜひ、氷水で作った自家製解凍庫でおいしい解凍を試してみてください。


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# by woody-goody | 2012-03-24 15:39 | Trackback | Comments(0)
鳴砂から環境問題へ
 これ、お土産、と砂の入った小瓶を渡された方、きっといらっしゃるでしょう。

 ふってみると、小さな音、このかすかな加減がなんとも言えなくて。

 国内、海外にもある鳴砂(なきすな、なりすな)は、砂の上を歩くとキュッキュッと鳴る砂を言います。

 二条城のように、侵入者を察知するために歩くと音が鳴る、鳴き廊下を作った城主の知恵にも感心したことがありますが、こちらは天然で鳴る砂。都会の喧噪(けんそう)からは想像できないわずかな音に耳を澄ます生活に憧れます。

 砂が鳴る詳細なメカニズムはまだわかっていないようなのですが、富山県の私立藤園学園龍谷富山高等学校1年の山本良太君が、鳴き砂から環境問題にまで言及し「地球だって笑いたい」という論文にまとめ文部科学大臣賞を受賞しました。あまりに素晴らしいので、ここにご紹介させていただきます。

 「やった! 成功だ! 僕の手の中で、砂がキュッキュッと鳴いた。まるで『くすぐったいよ』って笑っているようだ。この『鳴き砂』を瀕死の状態から生き返らせるのに、実に1年かかった。環境汚染の深刻さを実感してあぜんとした。鳴き砂とは自然界に普通に存在する砂だが、鳴かなくなる、いや鳴けなくなるのは、人間の出した汚れのせいだ。それも工業排水や、重油流出事故による海水汚染以上に、一般の人が、何気なくポイ捨てしたプラスチックゴミが、鳴き砂を絶滅危惧の危機に陥れているというのだから驚きだ。海に行くと、よくトレーだとか、使い捨ての弁当箱とかが砂浜に落ちているのを見た事があると思う。それがプラゴミである。自分は海でそんな物をポイ捨てして来なかった、だから関係ないと考えているとしたら、それは認識が甘すぎる。もう一度プラゴミに着目してほしい。洗剤のボトルとか洗濯バサミとか、普通わざわざ海に持って来て捨てる物ではない。じゃあどこから来たのか。市街地や海から遠く離れた山中で、不用意に捨てられた物がほとんどだ。ゴミは風に飛ばされて川に入る、川に流されて海に出る、そして海流に乗って長い旅をして、どこかの海岸に打ち上げられる……」

 鳴き砂から海に国境はない、環境汚染問題に気付く良太君。16歳にしてこの着眼点、文章のクオリティー、おじさんは恐れ入りました。ノーベル賞を受賞した田中さんに続く故郷富山県の誇りです。


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# by woody-goody | 2012-03-16 12:53 | 社会 | Trackback | Comments(0)
ユーモア力

 落語家になる前は、広告の仕事をしていました。そういう御縁もあって、元「広告批評」編集長、現在は松山市「子規記念館」名誉館長でもある天野祐吉さんに20年以上、お世話になっています。

 天野さん発案の、子規記念館で行われる「道後寄席」も今年で9年目を迎え、先日、そこに出演させてもらいました。

 松山は、30年前に昨年他界した師匠立川談志と初めて一緒に飛行機に乗り、愛媛大学学園祭に来た思い出の土地でもあります。

 先日たまたま手にした週刊誌の巻頭グラビアのコラムで、天野名誉館長が、正岡子規没後110年の今年、今の日本に必要なのは子規のユーモア精神なんじゃないかと書かれていました。

 34歳という短い生涯を終えた子規が、病に伏して書き残した「病牀六尺」「仰臥漫録」には暗いところがなく、突き抜けたユーモアが笑いを誘います。

 たった六尺の病床が彼の全宇宙。苦痛で動けず泣きもし叫びもしたい境遇で子規が書きつづったのは、自分を、ものごとを、客観的に見ること。これができて初めて前へ進める。辛すぎる状態から抜け出すのを助けてくれるユーモア。

 天野さんは書きます。「人生で大切なのは、いかに長く生きるかではなく、いかに楽しく生きるか」だと。

 宮城県南三陸町の避難所では、毎日、被災した人たちがつくった川柳や短歌が読み上げられていることをニュースで知りました。

 この川柳大会を発案した旭ケ丘地区区長の柴田正廣さんは「悲しみをいつまでももってたらまずい。笑ってもらえるような川柳もいいかな」と。

 被災当初は「水運び 筋肉つけて 腕自慢」「蓮舫に 負けぬ物資の 仕分け人」という具合に肉体的な辛さや切羽詰まった状況を笑いながらいなす句が生まれました。

 たくさんの句を寄せ続けている須藤春香さんは、津波でお母さんを失い、御主人と暮らしていた自宅も流され、五、七、五に思わず思いを込めました。

「大津波 みんな流して バカヤロー」

 1年後にはこんな句を。

「すっぴんで 外に出る日が 来るなんて」

 これを詠んだとき、みながクスッと笑ってくれたのが嬉しかったそうです。

 ユーモアの力がもっともっと2年目の被災地に浸透しますように。


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# by woody-goody | 2012-03-09 13:07 | 社会 | Trackback | Comments(0)
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